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芦屋物語  作者: 愛犬元気。
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第八話

次の日


二人は視聴覚室で隣同士で座りながら、自習となった時間を和気藹々と話していた。


「昨日ボヤ騒ぎがあったらしいな。」


皐月は何気なく昨日の話題を投げた。


「へー、知らなかった。」


「放課後に。空き教室でタバコ吸った奴のしわざじゃないかって。」


「ふーん。」


「昨日神田さんとはどうだったの?」



「…ああ。」



「解決できなかった?」


「解決した。」


「そう、ならいいんだけど。」


「はあ。」


「体調は?もう大丈夫?」


「もう治った。」


「なら良かった。」


皐月はそうニコッと笑った。


「皐月は結婚したい人いるか?」


「いないかな。」


「いつまで俺といるつもりだよ。」


「ずっとだよ。」


「ずっと?それは無理だろ。」


「無理では無いよ。いつまでもこうしていられるだろ。」


「腐るぞ。俺とずっといたら。お前だって家族作りたいだろ?将来。」


「考えてない。」


「不思議なやつ。」


「今の時代不思議では無いよ。世の中身勝手に行きたい人はたくさんいる。」


「けどよ、俺といる為に身勝手になるっておかしいだろ。メリットなんもねーし。」


「恋人より友達優先したい人もいる。それにお前が自分を卑下する程嫌なやつじゃ無い。」


「…。」


「卓は結婚したい?」


「想像つかねえな。俺が結婚とか。」


「確かにね。」


「…。」


「神田さんと結婚したいと思う?」


「思わねえよ!お前は許してくれないだろ?」


「許したらしたいの?」


「そんなことまで考えられない。」


「結婚となると、自分一人の問題ではなくなるからね。」


「…やめようぜ。この話。」


「嫌になってくるよね。」


そんな話をしていると、自由な自習時間はすぐに終わった。




「神田さん。」


「?」


視聴覚室から出ようとした彼女を捕まえたのは宇佐だった。


二人に気付かれずに彼女だけ視聴覚室に残すと、彼は神妙な顔で言った。


「あの芦屋君に近づかない方がいい。」


「急に何?」


「神田さんに何かしようとしてる。」


「…どうしてそう思うの?」


「あの山で人を殺してる。呪いの山で。」


「…それで?」


「神田さんも殺されるかも…。」


「何言ってんの?」


「本当なんだ!このビデオに彼が映ってる。」


と、一台のビデオカメラを再生してみせた。



「…。」


その頃


芦屋は筆箱を忘れたと、視聴覚室に戻って来た。



その扉を開けると、そこにいた2人は一斉に芦屋の顔を見た。



「あ、芦屋君!!」



「あ?」


2人を見た途端露骨に不機嫌になった芦屋は、イライラしながら筆箱を雑にとってすぐに部屋を出て行った。




ガチャン


「危なかった。」


「でも、これが芦屋君とは限らないわ。」


「そうかなぁ。似てる気がする。けど確かにブレブレなんだけどね。」



「警察に持って行くの?」


「…この人達の演出じゃないかとも思ったりして。」


「どうして私に?」


「いや、芦屋君神田さんになんかしようとしてるんじゃないかって思って。」


「大丈夫よ。自分の身くらい自分で守れるわ。」


「相手は力の強い男だよ。勝てないよ女の子だし。それに、もしこれが本当に芦屋君なら…。」


「…。」


「殺されるかも。」


「警察にはいかないで。」


「え?」


「大ごとになるの嫌いだから。だからいいの。心配しないで。」


「そう…。」


宇佐はビデオカメラを畳んだ。






神田が視聴覚室から戻り、教室に着席する。

スマホが動いたのを確認すると、メールが来ていた。そしてその中身を確認した。


「…。」


-さっきなんの話ししてた?-


神田はメールを簡単に打つと、すぐに送った。



-あなたには関係ない。-


彼女がそれを送ると、芦屋の背中が怒っているのかよくわかった。




-あいつのどこがいいんだ。-


-そういう事じゃない。-




「なんだよ…。」


芦屋はその返事にふるふると震えていた。



授業が始まっても芦屋の貧乏ゆすりは止まらなかった。



二人で何してたんんだ。

いつの間にかそういう関係だったのか?

神田がああいう態度なのはあいつが彼氏だったのか。


「…。」


と、授業中先ほどの事ばかり考えていた。






昼休みの売店。


「渡部君。」


「あ、神田さん。珍しいね。今日はお弁当じゃないんだ。」


神田は渡部の後ろに並んだ。


「宇佐川君のビデオの話知ってる?」


「え?」


「知らないのね。私にしか話してないのかしら。」


「なんの話?」


「あの山で拾ったビデオカメラに芦屋君そっくりの姿が映ってたって。」


「ビデオカメラ?それ本当に芦屋なの?」


「中身を見た限りでは、そう見えなくもないって感じね。彼芦屋君の事疑ってるわよ。」


「わざわざ教えてくれてありがとう。でも神田さん芦屋のこと嫌いだったんじゃないの?」


「嫌いよ。自己中心的すぎるし。」


「このまま黙ってたら最悪芦屋は逮捕されるかもしれないのに。その方が嬉しくないの?」


「私は別に。なんとも思ってもないわ。気まぐれよ。」



「そうなんだ。間違っても芦屋を好きになったりしないよね。」



「しないわ。でも、突然いなくなったら悲しいわ。クラスメイトとしてね。」



「そう…。」



2人はそれぞれ昼飯を買うと、一緒に歩き出した。



「あのビデオカメラ、もし本当だとしたら、芦屋君は本当に…。」


「神田さん。あの山なんだよ。」



「?」


「芦屋が監禁されていた場所。」


「え?」


「芦屋がどうして山の近くに引っ越してきたのかはしらないけど、トラウマの残る山にわざわざ行くかなって。」


「…。」


「宇佐にも注意しとくよ。このままだと危ない。」


「危ないって?」


「宇佐の身がね 。神田さんも気をつけて。」



「…。」


「あまり突っ込みすぎると大変な事になるから。」


声のトーンが怖い。

こんな低い声を出す彼を初めて見た。


神田は隣にいながら警戒心を覚えた。



「神田さん、今日一緒に食べる?」


「遠慮しておくわ。」


神田はそう言うと、1人足早に教室へ向かった。





「はあー。」



芦屋は皐月の前で大きなため息をついた。

さっきからせっかく買ってきた食料に手をつける様子がない。


「あいつ彼氏いたのか。」


「神田さんに?」


「…もういい。」


「誰?」


「カマ野郎。視聴覚室でさっき二人で会ってやがった。」


「ああ。さっきのか。」


「さっきの?」


「いや、なんでもない。」


「…あいつって、なんであんな肝座ってんだろうな。」


「宇佐?可愛い顔してるくせにね。」


「なんかムカつく。」


「劣等感感じてるの?」


「俺に無いもの全部持ってる。神田も趣味が悪い。」


「液体みたいに溶けてないで食べれば?」


「無理だ。俺にはもう。」


「…。」


芦屋の落ち込みようは異常だった。

まだ興味本位だと思っていたがこれはもう間違いなく普通の恋の病だ。


「わかったよ。卓。」


「え?」


「やれるとこまでやって見なよ。それで当たって砕ければいいよ。」


「え?許してくれるのか?」


「ああ。神田さんにアタックして見なよ。」


「…遅いけどな。」



「付き合ってないよあの二人。」


「本当か?」


「神田さんがさっきそう言ってた。」




「そうか…。」


芦屋は分かりやすく安堵のため息をついた。


「お前も恋とかするんだな。」


「恋…か。」


「意味わかる?」


「なんとなく。」


「もう食べたいとかは思わないのか?」


「半々。我慢してる。あいつの白い手とか、あの唇を噛みちぎりたくなる。」


「やっぱ辞めておいた方がいいんじゃない?」


「それはなしだ。」


芦屋は思った以上に真顔でそう答えた。



「けどあいつ、話しかけても素っ気ないんだよ。どうしたらいい?」


「なんかあげたら?プレゼント。」


「女って何が好きなんだ?」


「うーん、その人によるよ。神田さんはその中でもわからないなあ。趣味とか、食べ物とか何が好きなんだろうね。」


「そうか。聞けばいいんだな。」


「いらないって言いそう。」


「メールしてみる。」


芦屋はなんだか生き生きしているように見える。

皐月はその必死な芦屋を頬杖をついて眺めていた。



「…いや、やめた。直接聞く。」


芦屋はそう言ってスマホを閉じた。



「今聞きに行けば?」


「話しかけたら嫌われる。あいつはガラスみたいに繊細なんだよ。」


「ふふ。そうなんだ。芦屋。この薬飲んで。」


と、皐月はカプセルの入った小さなプラスチックを渡した。


「なんだこれ?いつもの安定剤の薬残ってるぞ。」


「自律神経を整える薬。まだ見るんだろ?黒いもや。」


「ああ…。いつ飲めばいいんだ?」


「寝る前飲んで。」



「おう。さんきゅー。」


芦屋はそれをポケットに突っ込んだ。


「じゃあな。」


「頑張ってね。神田さんと。」


「…。」


放課後、皐月はそう言って教室を出て行った。



相変わらず神田も教室を出るのが早い。



「…。」


教室にぽつぽつと人が残り、芦屋もしばらくそこに残る。

まだまだ時間はあるものの、一人で部屋に帰るのはやはり心許こころもとない。



この4時間がしんどい。

街をフラフラしてようか。



ふらっと立ち上がり教室から出ると、ロッカーに向かう。

そして靴を取り出し、上履きを終い、外に出ようとしたその時。




「芦屋君。」


「!」


その声にすぐさま反応し、振り返った。



「神田!」


「今帰るの?」


「おう。お前部活は?」


「…。」


神田は眉間にしわを寄せた後、自分の靴箱から靴を取り出した。


「辞めるわ。」


「辞める?」


「帰りましょう。」


神田はそう言って芦屋の腕を引っ張った。




「駅まで送る。」


「近くの喫茶店へ入りましょ。」


「…。」


芦屋は彼女から出ないような言葉に驚きながら指示に従うことにした。



無言で駅の方まで歩くと、有名な喫茶店が見えた。

そこに入店すると、二人は二階の奥の席へ向かう。



「芦屋君ブラックコーヒー飲めるのね。」


「いや、飲まない。」


「なんで頼んだのよ。」


「目に入ったから。」


「喫茶店にトマトジュースは置いてないわ。」


「…。」


芦屋は向かいに座る神田の飲み物を見る。

ホットのカフェラテ。

飲んだこともない。



「今日部活休みだったのか?」


「謹慎くらったの。」


「なんだそれ。」


「同級生のちょっとヤンチャな男の子がタバコ吸っててばれたのよ。あの芦屋君が起こしたボヤ騒ぎもその子がしたって事になって。もうしばらく弓道部は活動できないの。」



「俺のせいなのか?」


「そうじゃないわ。私が芦屋君に手を噛まれたあの時も五日くらい部停になったからだったの。強豪校でもないあの弓道部ももう終わりね。」


「だから元気ないのか。」


「私の唯一の楽しみだったから。それが無くなった。」


「…。」


「はあ。」


「これから一緒に帰れるな。」


「…そうね。」


そう神田はふふっと笑った。



「今楽しみが無くなったんなら俺が楽しませる。それはダメなのか。」


「そんな事よく恥ずかしげもなく言えるわね。」


「いいだろ。俺とこうやって話してるの楽しくないのかよ。」


「普通ね。」


「お前は何が好きなんだよ?食べ物は?好きなやつなんかあるだろ。」


「無いわ。一つもない。」


「何が一番テンション上がるんだよ。」


「弓道してた時。」


「欲しいものは?」


「無いわ。何もない。それに簡単に受け取ったりしないわ。」


「生きてて楽しいのかよ。」



「楽しくない。」


「…。」


「芦屋君は何を楽しみに生きてるの?」


「俺は…。」



「分からないわ。なんで生まれてきたのか。」


「いちいち考えてるのかよ。」


「考えるくらいしか日々やることがないの。私はみんなみたいに群れるのが好きな方じゃないし。誰かと一緒になりたいなんて思ったこともない。人に関してすごく冷たい。」


「俺も同じだ。」


「そうよね。私たち似てるわね。でも渡部君がいるじゃない。」


「だったらよ、俺が皐月の様になってやるよ。」


「…。」


「お前と一緒に普段からいてやるよ。そうしたらそんなつまんねーこと少しは考えなくなる。」


「結構よ。一人でいいの。」


「一人か。俺は一人が怖い。」


「…。」


「俺も皐月と出会うまでは一人だった。その時はお前みたいにそんなこと思ってた。」


「…。」


「何にも面白く無くて、全部モノクロに見えたな。」


「芦屋君と私じゃ全然違うわ。私はただの気まぐれだから。芦屋君はわたしよりももっと複雑でしょ。」


「そんな俺でも今は何とかやってんだ。そんなつまらんことばっかじゃねえよ。」


「生きてて楽しい?」


「皐月に会えてからそう感じるようになったかもな。」


「いいわね。そう思える人がいて。」


神田はぬるくなった口をつけていなかったカフェラテを一口飲んだ。



「俺といるの嫌か?」


「普通。でも、渡部君はあなたの事相当好きみたいね。私が入る隙は無いわ。」


「そんなことない。お前もこれからは一緒に俺達といればいいだろ!」


「許してくれるかしらね。彼が。」



「お前に、アタックしてこいって言われたんだ。皐月に。許可はもらった。」


「私、芦屋君よりも彼の方が怖いかも。」


「どこがだよ。今日だって薬くれたし…。」


「くすり?」


「俺が普通に人でいられるようにする薬。あいつの親がそういう仕事してんだ。」


「そうなの。その割にこんな学校に通ってるのね。」


「いい所受けて落ちたんだってよ。」


「ふーん…。」



二人はその後も雑談を続けた。



お茶一杯で数時間居座った二人は、完全に日が落ちてきた頃に店を出た。


二人はそのまま神田が乗る電車の改札前まで向かう。



「今日はありがとう。」



「なんもしてねえよ。」


「愚痴聞いてくれて。」



「別に。明日も一緒に帰るんだろ。」


「約束はしないわ。私の気分よ。」


神田はそう言うと、前へ進む。

ICカードを改札にかざすと、また振り返る。



「おやすみなさい。また明日。」


「ああ。おやすみ。」



神田はそう言うと階段を上って行き、姿が見えなくなった。





「…。」



大きくない小さな駅前で佇む芦屋。

神田の背中を目に焼き付けると、満足したようにその場を後にした。




「…。」


一人で帰る帰り道。

家に着くころには、街灯の光がまぶしく感じる程辺りは暗くなっていた。



バタン



家に帰り鞄を投げると、そのままベットの上にドサッと身を投げた。

天井を見上げる。

壁時計の秒針の音だけが部屋に聞こえていて、カーテンすら閉めていないベランダの窓からは三日月が見える。


「…。」


腕を引っ張られた時のあの気持ちが忘れられない。

彼女から帰りましょうと言ってくるなんて思ってもいなかった。


この一人の暗闇が今は怖くも何ともない。

月明かりと、その脳裏に焼き付いた思い出がかき消してくれるからだ。


「いいのかこのままで…。」


もしかしたら今人生一番楽しい時なのかもしれない。


こんな思いをしている自分が少し申し訳ないと思う。

安菜とか…両親とか…。



「もうやめろ。過ぎたことだ…。」


芦屋は慌ててテレビをつけた。


いい気持だったのにまた沈んじゃいけない。

もう終わったことをいつまでも…。



「薬…。」


バックから財布を出し、今日もらった薬を口に放り込んでからベットの近くに置いたペットボトルの水で流し込む。



夜は不思議だ。

昼間忘れていることを全て思い出してくれる。

夜は怖い。

あの時の絶望と同じ一人だから。



「…。」


芦屋は明るいバラエティー番組を何も考えず見ながら、そのまま寝ることにした。



何も深いことを考えずに寝てしまおう。

そうすれば変な夢も見ないで済む…。




「…。」








「今日はお友達で来た?」



いつかの夕暮れ時の公園。

黒髪ロングの少女は一人でブランコに乗る少年に話しかけた。



「…。」


少年は涙を浮かべながら首を横に振る。


その様子に少女は少年の手を取ってしゃがみこんだ。



「大丈夫。卓君は弱い子じゃないよ。ちょっとばかり勇気がないだけ。」


「みんな、僕の事嫌いなのかな…。」


「違うよ。きっと勘違いしてるだけ。だってこんなにいい子だもん。」


少女はそう言って立ち上がって卓の頭を優しくなでた。



「いい子いい子。私は卓君といてすっごく楽しいもの。」


「本当?」


「うん。とっても。だからね…。」


少女は卓の顔に顔を近づけた。


「目を瞑って。」


「う、うん…。」


「おまじないをしてあげる。卓君のお友達ができますよーにッて!」


「うん…。」


「お友達ができますよーに…。」



「…。」


「ふふ。ふふふふふふ。」


「安菜ちゃん…?」


少し不気味な笑い声に思わず目を開ける。


「地獄に行こう。卓。」



「!!!?」



そこには安菜ではない、あのフードの男がいつの間にか芦屋の顔を掴んでいた。



「いやだあああ!!!!離せーーーー!!!!!」


その途端卓は大泣きした。

自分でもびっくりするくらいの大音量で。


ブランコの先の地面に黒いブラックホールが見える。


そこにあの彼女が向ってる。



「ダメだよ!!!安菜ちゃん!!!!!行かないで!!!!」




彼女の足は止まることもなく、その穴の上に乗っかった。

彼女は一瞬で燃えて、火が付いた一片の紙のように一瞬で跡形もなくなった。



「うわあああああ!!!!嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!」


「さあ次はお前の番だ。安菜も迎えに来てほしいって言ってたんだぞ。」



強引に大人の手が小さな卓の手を引っ張る。

あっという間に穴の前に到着すると、男は芦屋の首根っこを掴んで地面に頬を無理やり擦り付ける。


「中を覗いてみろ。お前に殺された連中がいる。」



「!!」



その穴の中は闇しかなく、その真夜中のような空間に安菜ちゃんや、自分の両親そして数人の顔を忘れた人々がいた。



「お前に巻き込まれた可哀そうなやつらだ。お前は地獄に落ちて当然の人食いだ。」



「違う…。僕のせいじゃない…。違う!!!!」



「いつまで待たせんだよ。俺はもう待ちくたびれたぜ。この中に入って俺達と仲良くしようぜ。」


フードの男はそう笑っていた。


「…。」


その中の両親は泣いていた。

俺が狂って、散々困らせた両親。



可愛い弟が出来てから、俺と会話もしなくなった父と母。



「…。」


知らない人間たち。

俺が自分の目的のために消した人ら。



「安…菜…。」



最後まで不甲斐なかった俺をどう思っていたんだろうか。

小さな手が腕が震えていたのに、抱きしめることさえもしてあげられなかった。

そんな絶望の中で死んでいった彼女は俺を怨んではいないか。

あの公園に俺がいたから、俺のせいであの時も公園に来てしまった彼女は…。


「ごめん…。ごめんな…。」



こっちを見てくれもしない。暗い穴の中の安菜。

その背中はもう大きくなることは二度とない。


「見ろよ。あいつだって何か言いたそうだぜ?」


「!」



穴の中を覗くとそこにもう一人いた。



「皐月…。」



そこには笑顔で佇む皐月がいた。

その笑顔にホッとすると、彼はいきなり無表情になった。



「君となんで付き合わなきゃいけないの。」


「え?」


「こんな怪我したくもない。痛い思いもしたくない。」


「何言ってんだよ…。」


「俺がなんで君といるかわからない?」



「…。」



「ただ薬の効果を見たいだけだよ。もしこの薬がいい効果を示せは父さんが喜ぶからね。君のためじゃないよ。モルモット。それだけだよ。」


「モルモット…?」


「だから仲良いふりしてるだけなんだよ。なのに馬鹿みたいに懐きやがって気持ち悪い。」



「…。」


穴の中の皐月の顔はとても怖かった。

邪険なものを見るような、軽蔑のまなざしをこちらに向けている。



「残念だったなァー卓ぅ。お前には生きる資格なんかないんだよ。あの時お前が安菜の代わりにでもなっていたらこんな思いしなくて済んだのになァ。けどもう、いいだろ?楽しんだだろ?あとは一緒に地獄に行ってずーっと泣いていればいい。」


フードの男は卓を穴の中に無理に顔から突っ込もうとする。





「おいで。」



「おいで。」



「おいで。」


「おいで。」


「ねえ、おいで卓君。」


皆が手を広げた。

その手は伸びて顔を半分突っ込まれてる卓の体を掴み引きずり込んだ。







「うわあああああ!!!?」




ガバッ!



「はあ…はあ…。」



目覚めると朝だった。


汗だらけで真っ白な天井を見て、ようやく夢だと理解する。


「くそ…。」


こんな夢を見た日には学校なんかとてもいけやしない。


でも、一人でいてもどうにかなってしまいそうだ。



「…。」


薬の効果。全然なかったとも申し訳なくて言えない。


「はあ…。」








「おはよう。」


いつもの朝。皐月がいつもの笑顔でマンションの下で待っていた。



「…。」


「どうした?」


「別に…。」


「悪夢見たのか?調子悪そうだな。」


「いや…見てない。」


「薬効果なかったのか…。ごめんな。」


「謝るなよ。もともとダメなんだからよ。」


 「…。」


皐月が申し訳なさそうな顔で俺を見ている。

悪いのはこっちだ。もらっておきながら全然効いてない。



「今日は早退するか?」


「場合によっては。」


「なんなら今引き返せるけど。」


「いい。お前もどうせ休むとかいうんだろ。お前の出席日数減らしてたまるかよ。」


「問題ないよ。本当に大丈夫?」


「ああ…。」


二人は通学路を歩いていく。



「昨日はどうだったの?」


「神田とか?まあまあだったな。けどあいつしばらく弓道できないらしい。」


「そうなの?」


「部停とかで。」


「そうなんだ…。」


「神田も昼とか飯誘ってもいいのか?」


「彼女の了承とった?」


「いや…。一人がいいって…。」


「もう少し様子見たら?」


「…。」


「大丈夫か?」


皐月は思わず芦屋の肩を支えた。


「やっぱり戻るか?」



「久しぶりにすごい夢だったんだ。」


「…。」


「安菜はやっぱ俺の事怒ってんだ。何もしてやれなかったこと。すごく怒ってた。」


「夢の話を本気にするなよ。夢って自分の思い込みが暴走しただけだから。」


「…わかってる…。」


「戻ろう。」


芦屋はふらふらしながら皐月に支えられて、来た道を戻る。


「今お前が部屋に来たら傷つけそうだ。」


「大丈夫。受け止めるよ。」


二人は部屋に戻り、マンションにまた戻る。



「怒ったんだ。自惚れるなって。安菜が…。」


「そんなわけないって。」


「俺が幸せと感じれば感じる程、夢が悪夢に変わる。怒ってんだよ。自分だけ幸せになるなって…。なにもできなかったくせにって…。」


「…。」


「皐月も出てきたんだ。夢の中に。」


「俺が?」


「薬のために俺を利用してるって言ってた。」


「そんなわけないだろ!思い込みだって!」


「わかってる。けど、それでも俺は構わねえよ。寧ろそれでお前が大成するなら…。」


「負けちゃダメだ。その夢を見せてるのは自分自身なんだぞ。」


「…。」


「ごめん。偉そうな事言って。」


「…。」





芦屋は魂を抜かれたようにベットの壁に寄りかかっていた。



「安定剤の薬飲んだ?」


「さっき飲んだ。大丈夫午後から行く。」


「そっか。じゃあそれまでここでゆっくりしよう。」


「ああ…。」


芦屋はだるそうに一度頷いた。



「…。」


またいつの間にか眠気が襲ってくる。

あんなに寝たのに変だ。





「いい度胸だな卓。けど、お前はまだ完璧な人食いじゃねえ。」


暗い闇の中で、あの男の声が聞こえた。


その声がこの中では催眠術のように反響する。

さっきの夢とは大違いだ。



「見ろよ。目の前の友達を。あいつを襲え。喰い殺せ。そうしたら地獄から解放されるぜ。」


目の前にはうたた寝する皐月が。無防備に横たわって寝ている。


「解放?」


「生贄がいればいいんだ。あいつに人を食わせて人食いにしてもいいんじゃねーか?」


「ダメだ。皐月は…そんなことできるわけないだろ…。」


「ほら、やれよ。それとも俺が今お前を殺してやるか?」


「嫌だ…。もう苦しみたくない…!」


芦屋は頭を抱えた。


「襲え。殺せ。あいつの口にあいつの肉を食わせてやれよ。俺は誰かを引き込めるならお前を助けてやってもいいぜ?」


耳に囁く声がどんどん脳に浸透して行く。

やらなきゃいけない気がしてきた。


俺は、どうしてもこのフードの男に逆らえない。


早く解放されたい。地獄に落ちたくない。

でも友達を失いたくない。



「やれよ。いつもの通り。今度は喉元にかみついてやれよ!!」


「っ…。」


「やれ!!!!!!!」






「うわぁ!!!!?」


うたた寝していた皐月の腕に芦屋がいきなり噛み付いてきた。


「卓!!!大丈夫だから!!」


皐月は本能のままに噛み付いてくる肉食動物のような芦屋を受け止めた。


制服の上から噛まれた腕は、素肌じゃなくても十分痛みが伝わる。



「くっ…痛…。」


こういう時は待つしかない。

芦屋が自我を取り戻すまでは。



あの小屋の中で芦屋はフードの男に洗脳されていた。

誰にでも噛み付いて殺して食べるように。


そうじゃないと自分があの男に地獄に連れ去られると今でも信じてる。



芦屋の噛む力が弱くなった。その隙に芦屋の口から腕を剥がすと、そのまま床に押さえ込んだ。


「離せ!!!!!!!死にたくない!!俺はまだ…!!」


「…。」


こんな時は、ただ抱きしめてあげると落ち着く。

きっとあの小屋の中でそうやって彼女と助け合っていたんだろう。



「大丈夫。大丈夫だから…。」



「ぐっ…うう…。ごめん…。ごめん…。」


「…。」


安菜が見えるのか、次第に暴れる力もなくなる。


「落ち着いたか?」


「…。」


「…ごめんな…皐月…。」


「薬効いたのかな。落ち着きが早かったね。」


皐月は芦屋の背中を優しく撫でる。


まるで激しい除霊が終わったかのように、涙を流していた彼は正常に戻った。



「いいんだよ。お前が忠告したのに勝手に噛まれたのは俺なんだから。水持ってくるよ。」

  



「ああ…。」


芦屋は頭を抑え、しゅんとしていた。






「神田さん、昨日芦屋君と喫茶店でデートしてたね。」


「嘘よ!そんなの!だって芦屋君は渡部君とラブラブランデブーだもん!」


あの例の噂好きな女子二人は、移動教室先の図書室でヒソヒソと話していた。



「今日だって二人揃っていないんだよ?これってもうね?」


「ね?ってなによ。」


「えへへへへへへへ。」


「気持ち悪っ。でも神田さんと芦屋君似合うよ。もう付き合ってるよねあれは。」


「バイなのかも!それはそれで興奮する。」


「もう喋らないでくれる?」



「…。」


そんな話が近くの神田にも聞こえてきた。


「神田、お前あいつと付き合ってんの?」


すると、本を選んでいた彼女の隣にヤンチャそうな男が寄ってきた。


「付き合ってないわ。」


「でもあんなこと言ってるぜ。お前、人を好きにならないって言ったのに。」


「だからなってないわ。蓮本君、もう私に話しかけないでくれる?」


「恨んでるのか?弓道部のこと。」


「当たり前よ。それにもう辞めることにしたの。」


「はあ?」


耳にピアスをした蓮本はキレ気味に神田を睨む。


「俺お前が弓道やるから入ったんだぞ。なんで辞めるんだよ!!」


「あなたがそれを滅茶苦茶にしたんじゃない。たまにしか来ない癖にタバコ吸って部停ってふざけすぎだわ。」


「お前が俺を好きにならないからだろ!」


「なるわけないでしょ。もういい?」


「このクソアマ。」


「…。」


神田はジロリと相手を睨んだ


「あんなやつどこがいいんだよ。芦屋なんて暗くてなに考えてるのかわからんやつをよ。」


「…。」


「根暗同士仲良しってか?お前ら似てるから似合ってるぜ。」


「うるさいわね。」


「はあ?」


「あんたが芦屋君の何を知っているのよ。人生お気楽に生きてるあんたに何がわかるのよ。」


神田は凄まじい剣幕で蓮本を睨みつけた。


それに彼も少し怯える。


「な、なんだよ!!付き合ってねえのにムキになるんだよ!!やっぱそーなんだろ!付き合ってんだろお前ら!!な!!」



「いい加減にしなさい!!!」


バシッ!!



神田が相手の顔を平手で殴った。


蓮本はそれに激昂して、反射で神田の顔面を拳で殴ってしまった。



「キャーーーー!!!」



机に向かって倒れた神田。

殴られた瞬間を見た女子は悲鳴をあげた。


「ちょっと!!何してるの!!!!」


国語のおとなし目の先生がさすがに怒って立ち上がった。



「神田さん!!大丈夫!?」


宇佐が一番に駆け寄った。

倒れた神田を抱きかかえると、口と鼻から血を流していた。



「やべえ…。」


蓮本はそう言うと、図書室から逃げるように出て行った。


「蓮本君!!!待ちなさい!!!」


先生はそっちに向かった。



「神田さん大丈夫?」


「血が出てる可哀想…。」


「女を殴るなんて最低!!!」


女子が好き好きに話してくる。

こういう時の団結力は敵に回したくない。



「神田さん。保健室行こう。」


宇佐がすぐに彼女にハンカチを渡し、図書室から連れ出した。



バタン



生徒の雑踏が完全に消え、廊下の静寂の中歩く。



「痛い?大丈夫?」


「大丈夫。痛くないわ。」


「血が凄いよ。蓮本君と話してたの丸聞こえだったんだけどさ…。」


「…。」


「芦屋君のこと馬鹿にされて怒ったんだね。」




ガラ


保健室の扉を開ける。


今日は保険の先生が元々いない日だ。


宇佐は彼女を丸椅子に座らせた。


「痛そうだね。血が止まったら早退する?荷物取ってきてあげるよ。全部。」


「ありがとう。そうしてもらえる?」


「うん。でも神田さんが芦屋君の事で怒るなんて思わなかったよ。」


「…反射的にイラっとしたの。ムカついたの。あんな奴に芦屋君の苦しみはわからないわ。」


「やっぱり彼に何か深い事情があるんだね。」


「弓道奪われてもそこまでなんとも思わなかったのに、彼を馬鹿にされたら殴ってた。私が先に手を出したから…。」


「神田さんの中で変わったんだね。大事なものが。」


「大事…わからないわ。でも凄く悔しかった。」


「…。」


神田の声が少し泣きそうだった。

鼻をすすりながら、泣かないように理性を保っていた。


「滅茶苦茶ね。彼と関わってから。何もかも。」


「明日学校来てね。でも無理はしないでね。不登校にはならないでね。」


「もう大丈夫よ。一日休めば。あと彼に言っといて。許すからもう二度と私に口を聞かないでって。」


「分かった。荷物取ってくるよ。」


宇佐は笑いかけると、保健室を出て行った。


ガラッ



皐月は教室のドアを開けた。


「おはよう…。」


4時間目前の休み時間、渡部と芦屋が教室に入ると、クラス中の視線が集まった。



それに二人がキョトンとしている。


「お、おはよう。」


宇佐がニコッと笑った。



二人はその変な空気の中それぞれ席に移動する。



「どうしたの?」


その空気に思わず皐月が宇佐に聞く。



「いや、その、神田さんがね…。」


宇佐のそのセリフに芦屋はすかさず反応した。



彼女の席を見ると、荷物ごと無い。



「蓮本が神田さんを殴ったんだよ。」


誰かがそう言った。



「殴ったって?」


皐月も眉をしかめ、続きを聞きたがる。


「男女間のトラブルっていうか…。」


と、宇佐が言ったその時だった。



ガタ



「芦屋?」


芦屋はいきなり立ち上がり、みんなが見てる中宇佐の胸ぐらを掴んだ。


「ひっ!?」


トラウマの残る宇佐は、小さく悲鳴をあげた。


また教室に緊張が走る。




「神田はどこいったんだ?」



「さっき帰ったよ。」


宇佐が怯えながら答えた。


「その殴ったやつは?」


「わからない。どこかへ行っちゃった。」


「…。」


「芦屋。とりあえず宇佐から手を離してあげて。」


皐月はそう言って彼を宥める。



「今なら間に合うと思う…。」


「…。」


宇佐のその言葉に、ようやく芦屋は手を離した。


「芦屋!!!!」


皐月が止める間も無く、芦屋は教室から出て言った。


すると、又教室がざわめき始めた。


「かっこいい!やっぱり神田さんのこと好きなんだね!!!」



「少女漫画みたーい!!」



女子の歓声に包まれる教室だが、芦屋の背中を追えない皐月は、一人複雑な表情をしていた。





荷物も持たず外を出ると、駅の方面まで走る。


無我夢中で昼間の快晴の中を走ると、やがて駅に着いた。



「神田!!!!」



芦屋が辺りを気にすることなく叫んだ。


周りが振り返るが、神田はいない。


「まさか。」



芦屋はふと駅の近くのあの喫茶店に入った。


「いらっしゃいませー。」



若い女店員が可愛らしい笑顔で迎えた。

芦屋はその女店員にカウンターから身を乗り出して彼女を睨んだ。


「ここに黒髪を一本に縛った高校生の女来なかったか?」


「えっと…同じ高校のお客様なら先ほど二階に。」


「待ち合わせだ。」


芦屋はすぐに二階の階段を登って行く。



二階にはちらほら人がいた。

芦屋はそれらしき人物を探していると、一番奥の窓が見えるカウンター席に彼女の背中が見えた。



「神田。」


彼女の肩を掴むと、彼女がこちらを振り返った。


「…芦屋君…。」


「口大丈夫か?」


芦屋はそう言いながら彼女の口元を優しく撫でる。


「…。」


「腫れてるな。」


「あまりブニブニ触らないで。」


「そいつぶっ殺してやるよ。お前の手元にそいつの首持たせてやる。」


「それはしないで。彼には何も。」


「なんでだよ。」


「私が先に殴ったから。それにもう関わりたくない。あんな奴と。」



「何があったんだよ。」



「…。」


「あいつに殴られた理由言えよ。納得できねえ。俺は。」


「あなたの気持ちは知らないわ。当事者でもないのに。」


「そいつが何かして来たらどうすんだよ?」


「その時はその時。」


「せくはらか?」


「違うわ。」



「あいつとなんか関係あったのか?」


「ないわ。」


「カマ野郎が男女関係とか言ってたぞ。お前あいつとなんかあったんだろ。」


「あなたのことよ。」


「え?」


「…。」


「…どうした?」


「なんでもないわ。」


神田の顔を覗くと、涙が急に溢れ頰に一粒雫が流れた。


「え?あ…おい…。」


その様子に戸惑う芦屋。

神田はただボロボロと涙を流していた。

 


「頰が痛くて泣いてんだろ?我慢すんなよ。」


「痛いに決まってるじゃない。」


「腫れてるからな。」


「あなたといると感情が分からなくなる。」



「それはいい事なのか?」


「悪いことよ。」


「…。」


神田は少し落ち着きを取り戻して、窓の外をぼーっと見ている。


芦屋はその神田の悲しそうな横顔をただじーっと見つめていた。



「学校に広まったわ。」


「何が?」


「私達の事。」


「あのカマ野郎が喋ったのか?」


「違う。彼に殴られた原因があなたなの。」


「俺が何したんだよ。」


「彼があなたを馬鹿にしたから…。」


「あいつが?とことんクズだな。」


「私を好きだったみたいなの。彼は。」



「まじかよ。」


「まじよ。私がここに来た当初はウザかった。けど私が素っ気なくしていたら、いつの間にか絡まなくなってた。弓道部にも来なくなってたし。」


「そいつがタバコ野郎か?」


「そうよ。けどまだ好きだったとは思わなかった。」


「けど、お前がなんでキレたんだ?俺のことなんだろ。」


「知らないわ。感情的に動いただけ。」


「どういう感情なんだよ。」


「…はあ。」


「でもお前は俺の為にキレたんだよな。俺の為に殴られたってことだよな。」


「そんなつもりじゃ…。」


「ありがとな。」


「や!?」


芦屋はまた無意識に神田を抱きしめた。


目を丸くしていた彼女だったが今はそれに身を任せることにした。



「神田。」


「なによ。」


「いい匂いするな。」


「嗅がないでよ!」


バシッ


神田は思わず芦屋の腕を押し、離れた。



「不思議だよな。人に包まれると安心する。」



「…そうね。」


「…。」


「ありがとう。」


「なんだよ。」


「追いかけて来てくれて。」


「怒ったり優しくなったり忙しいなお前。」


「こう言う性格なの。もうしばらくここにいてもいい?」


「ああ。いくらでもいてやるよ。」


芦屋と神田は、喫茶店の窓から大きく広がる青空を見上げた。





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