第五話
「ここだよ。霊が出るところ。」
山の麓。
何人かの若者が車の扉を開け、その場に降り立った。
「ビデオok?」
「ああ。これでなんか撮れれば再生数もあがんじゃね。」
男2人がそう言いながらビデオの映りをチェックする。
「赤外線カメラってすげえな。」
「このために買ったんだぜ。今動画は肝試しが流行ってるしよ。このまま億万長者だぜ。」
わくわくしながら足元見えない山の入り口を歩く。
「待ってよー。」
すると、遅れて2人の間に入る若い女。
三人が集まると、そのカメラを自分たちに向けて挨拶を始めた。
「みなさんグッモーニン!こんにちはこんばんは!みうだよ!今日はなんとカメラ片手に、よっちゃんやっちゃんと某心霊スポットの山に来ています。」
「どーもやっちゃんです!只今明日を迎える三十分前。今日は九月の二十七日です。早速三人で探索したいと思います。行くぞ。」
二人はライトを持ち、目の前を照らす。
本気で怯える男達と、自分のリアクションをいかに可愛く出来るか命懸けてる女が山をどんどん進む。
「えー、確かここの心霊スポットはですね、昔事件があったんですよ。犯人の男が子供を誘拐したとかなんとか。それでその子が殺されて、霊が出るんだとか。確か女の子だったかなぁ。」
アバウトに真ん中のカメラ担当のやっちゃんが喋る。
「小屋があるはずなんですよ。そこが殺人現場らしいですね。そこに女の子の霊が彷徨ってるとか。」
「他にもうめき声が聞こえたとか、ここで違う事件で殺された人が追いかけてくるとかね。みう怖い。」
「…。」
無口なよっちゃんは一人真剣に小屋を探す。
「えー、今の所特になにも無いですねー。」
「きゃ!!」
みうが短い悲鳴をあげた。怯えながらやっちゃんの顔を覗いた。
「今なんか声聞こえなかった?」
「え?」
と戸惑う彼に、みうがカメラの見えない所で彼の腰あたりをつねる。
「あ、ああ!なんか聞こえたよな!!」
「だよね!なんかおじさんのうめくような声…みんなも聞こえた?」
と、余裕に耳を傾けるポーズをした。
「はあ、なんも無いね。」
その直後、一度カメラを切って、素になった三人は撮れ高のない心霊スポットにどう盛り上げられるかを考えていた。
「はあー。心霊スポットっていいながら暗いだけね。義弘、あそこにスマホ置いて男のうめく声とか出して来てよ。」
みうは先ほどのリアクションが嘘のように退屈していた。
「やらせかよ。」
義弘ことよっちゃんは、呆れていた。
「みんなやってるよ。今の時代心霊スポット行ってさぁ?なんか起こらなきゃリピーターもつかないよ。これじゃあただの山登りじゃん。」
「…。」
「みうの言う通りだな。人影くらいはビデオに入れたいよな。」
「どっちか服脱いで枝にそれっぽくかけて来なさいよ。そうすれば再生数500は上がるんじゃない?」
みうがそう笑った時だった。
ガサッ
「!?」
遠くの茂みから草が動く音がした。
その音に三人の中で緊張感が走る。
「え、何?」
「カメラ回して。」
みうの指示でやっちゃんがカメラを回した。
三人ビビりながら、そこをじっと見つめる。
「な、なんだ。野良犬でもいたのかな。」
「…。」
ガサガサッ!
「ひいっ!?」
カメラ担当のやっちゃんが悲鳴を上げた。
「野良犬だよな?そうだよな。」
「やっちゃん。絶対カメラ離さないでね。」
「本当に小屋まで行くのか?」
「行くしかないでしょ!再生数のため!億万長者!!」
みうが恐怖心を打ち消すように早歩きで前進した。
「みう!!」
バタッ
「!?」
目の前すら見えない闇の中でみうが倒れる音がした。
急いでよっちゃんがライトを目の前を照らすが、彼女がいない。
「みう!?おいみう!?」
しかし返事は帰ってこなかった。
「おいやべえよ。みう!どうしたんだよ!!!」
やっちゃんは、ビデオカメラを思い出したようにまた構えた。
赤外線カメラでみうの行方を追う。
「悪ふざけだよな…。」
「…。」
よっちゃんも静かにつばを飲み込んで暗闇に構えた。
「みう!!どこだ!?」
「勘弁してくれよ。」
よっちゃんがため息をついた。
運転ができる動画の編集ができる彼は、いつも大体駆り出されてついて来ている。
無口な彼は意外と動画内で人気が出てしまっていて、最近はほぼ無理やり二人に連れていかれることが多く、
今不満が爆発しそうであった。
「どうすんだよ義弘!!これマジじゃねえか?け、警察行こうぜ!!」
「ちょっと待って。慌てるなよ。もう少し捜してみよう。」
「俺もうこれ以上行きたくねえよ。」
「俺を強引に連れて来てそんなことお前が言えるセリフか?一人で捜せってのか?」
「だから警察…。」
「この山の立ち入り禁止の区域に入ったこと。学校に知られたらどうすんだよ?」
「…それもそうだな…。」
「行くしかねえだろ。みうを見つけて何事もなかったかのように帰ろうぜ。」
「ああ…。」
カメラの目的は楽しい肝試しから、みうの身元捜しに変わった。
赤外線とライト片手にいなくなったみうを追う。
だが行けども行けども、みうの姿はない。
二人は心細く捜索すること一時間。
スマホのバッテリーが三分の一になった頃、目の前の頭より高い位置の山小屋の存在に気付いた。
「あれは…。」
「どうした?」
「カメラに小屋が映ってるぞ。例の小屋じゃねえか?」
やっちゃんは怖がるどころか少しテンションが上がったように答えた。
「もしかしたらここにいるんじゃねえか?はぐれてあの小屋の中にいるとか。」
「行ってみるか。」
二人は霊よりも、みうが見つからない恐怖から解放されたくて足早に向かう。
「みう!!」
やっちゃんが朽ち果てた扉を開けた。
「いねえ…。くそっ!!!」
「…。」
「はあ。とりあえず戻ろうぜ…。」
よっちゃんが小屋から出ようとした時だった。
ガチャン
「!?」
すぐ後ろでビデオカメラが落ちる音と、人が倒れる音がした。
目を見開き、第六感で確実に何かの気配を感じる。
すぐ後ろにいる。きっとヤスは、そいつにやられたんだろう。
「うわあああ!!!」
よっちゃんは今まで出したことないような声を出して、ライト片手にそのまま全力疾走で逃げ出した。
「…。」
小屋の中が静かになると、その何かの気配の正体は落ちたビデオカメラを拾った。
「…。」
赤く染まった刃物を片手に再生ボタンを押す。
その内容を見て鼻で笑うと、そこら辺の茂みの中に捨てた。
「こいつは…食えないな。」
殴った男を見て落胆する誰か。
そのまま小屋の奥に移動すると、バラバラになった血生臭いなにかにかじりついた。
「おはよう芦屋。」
「…。」
月曜の朝。
皐月は芦屋のマンションの前に立っていた。
彼が出てきて挨拶をしても、何も言わず眠い目をこすっているだけだった。
「最近また寒くなって来たよな。風が冷たい。」
「…。」
「起きてるか?」
「ああ…。」
芦屋のテンションの低さに会話が盛り上がらず、黙々と歩き学校に到着した。
教室の扉を開けると、教室内がざわざわしていた。
「ん?どうしたの?」
早速皐月がその群衆に問いかけた。
「あ、聞いてよ渡部君。昨日あの樹海で首つり自殺の遺体が見つかったんだって。」
「あの樹海って大嶽山?」
「そうそう!あそこ自殺スポットでも有名だから不思議でもないんだけどさ、その自殺した人がこの学校の人なんだって。」
「ええ?」
「2-3クラスの川田ヤスってやつ。首つって死んでたらしい。」
「…。」
皐月は言葉を失っていた。
「驚くよね。俺も何回か姿見たことあったし…。近所の人は祟られただの罰が当たったとか、呪いだとか言って大変だよ。」
「あそこ、昔からそういう所だからね…。」
渡部の元気が無くなった。
その隣で感情もなくボーっとしている芦屋は、静かに群衆の中の宇佐を睨んでいた。
向こうも、ちらちらとこちらを見てくる。
「そういや、近所の女子高生も一人行方不明らしいな。」
誰かがそう言うと、皆がまたそれぞれ詮索し始めた。
「くだらない。」
芦屋はそう呟いて自分の席に戻った。
「なんかすごい事が起こったな。」
「どうでもいい。」
「あそこそんな危ないところだったんだ。知らなかった。」
「…お前ここの出身じゃなかったか?」
「いや、実は県外の人間だったんだ。この学校に通うために引っ越してきたんだ。」
「こんな学校に?お前頭よさそうなのに。つーか、頭いいだろ。こんな底辺高校に何で通ってんだ。」
「普通に偏差値と倍率高いところ受けて落ちたんだよ。ここしかなくて。」
「本当か?」
「うん。ここ三回目で受かったんだ。」
「ふーん…。俺でも受かるのに。俺の頭のレベルと一緒に見られて恥ずかしくないのか?」
「少しね。」
皐月が苦笑いをした。
「あいつ、俺の事疑ってる。」
急に真顔になった芦屋はそう呟いた。
「え?」
「カマ野郎。なんかあいつ、俺が人殺しだと思ってる。」
「人殺しって?」
「あいつに言われたんだよ。俺があの山で人殺してるってわけわからんことを。」
「どこからそんな話になったんだ。」
「知るか。」
「…卓、お前あの山登ったことあるか?」
「ねえよ。」
「…。」
皐月の顔が神妙になっていた。
その様子に芦屋も眉をしかめる。
「まさか、あいつのいう事信じる気か?」
「違う。そういうわけじゃない。」
皐月もまた神妙な顔でそう答えた。
「?」
「…。」
この騒ぎが静かになったのは、授業の始まるチャイムが鳴り終わった時だった。
先生が入ってきて、金曜日に起きた悲惨な出来事を話し始めた。
警察は自殺と断定し、土日の間に通夜が行われたそうだ。
先生はさらにこの山で起こったことを話し出した。
それによれば昔から何かと事件が多く、凶悪事件が何回か起こった場所で地元でも誰も近寄らない山だという。
この自殺も、地元の警察でさえも呪いや祟りなどを信じてる人も多くて、夜に遊び半分で入ると命を奪われるとさえ言い伝えられている。
それでも入ったものは、自業自得の愚か者と陰口を言われるだけだ。
それくらいいわくつきの山なんだと、生徒を脅すように忠告した。
地元の人間が過半数のこの学校では、まず面白半分で行くやつは他県から来た奴しかいない。
実際、その男子生徒も元は近年までは他県出身者だったとか。
3時限目。雨が降ってきたため男女混合でドッヂボールをやる流れになった。
それを聞いた瞬間、芦屋はまた机の引き出しに体操着を隠した。
「保健室?」
「ああ。偏頭痛が。」
「そんなもんないだろ。あまりサボると先生キレるぞ。」
「ふん。知るか。俺は頭が痛いんだよ。」
そう言って教室を出て行った。
「…ん?」
皐月が前の様に彼の引き出しを覗く。
「なんだ?」
「渡部君行こうよ!」
「わ!」
あの大きなリボンのツインテールの女子に引っ張られそのまま体育館へ向かった。
「どうしたの?神田さん。」
その二人を追いかけようとした黒髪ショートのあの子が、彼女の異変に気付いた。
「…別に。」
「着替えないの?」
「…ええ。」
制服姿で着替えない彼女は何か腑に落ちないような顔で首を傾げた。
「体操着無いの?」
「家に忘れたみたい。私の事休みだって言ってくれる?」
「あ、うん。任せて。」
笑顔で教室からいなくなった彼女。
神田は誰もいなくなった教室で再びバタバタ忙しそうに机の周りを探していた。
「無い。」
ガラガラ
神田はまだもやもやしながら保健室に向かう。
もう授業が始まって十分は過ぎている。
「家に忘れてきたかしら。」
おかしい。今日絶対に入れてきたはず。
でも、体操着がない。
「誰か間違えたのかしら。」
保健室の戸に手をかけ、扉を開けた。
「きゃ!?」
「あら、神田さんどうしたの?」
「…いいえ。」
神田の顔がひきつった。
目の前には若い女の保健の先生と向かいに座る芦屋がいる。
「もしかして体調悪いの?」
「はい。」
「そう。ベットで寝てる?」
「そうします。」
神田はそう言ってベットの方へ向かった。
「芦屋君。これで何度目?熱もないのにここに来て。」
「…。」
「本当に偏頭痛なんでしょうね。」
「さっきからそう言ってます。」
「流石に体育の先生に言いつけるわよ。」
「痛い。頭が痛い。」
芦屋は棒読み気味に頭を押さえた。
「私に会いに来てるわけじゃないよね?」
「…戻ります。」
「え?」
芦屋は徐に立ち上がり、何故か神田の寝てるベットのカーテンを開けた。
「先生、実はこいつもサボりなんです。」
「そうなの?」
「何言ってんのよ!」
神田がガバッと勢いよく体を起こした。
「戻ろうぜ神田。あと先生。このことは黙っててもらえますか。」
「ええ?」
「俺たちがここに来たこと自体。」
「ははーん。あなた達そういう関係?」
「そんなわけないじゃないですか!!」
ついに神田はベットから降りて靴下のまま床に立ち上がった。
「私がいないと思って油断したんでしょ。この保健室を逢引きに使うなんてやらしいわね。しかも、こんな接点もなさそうな二人がさ。」
「やめてください。本当にそういう事じゃないです。芦屋君本当にいい加減にして。」
「そうだなあ。このまま通報するよりなんか面白そうだから許してあげる。でももうこの保健室には病気以外で来ないでね。」
「感謝します。」
「じゃあねー。」
「ちょっと!」
神田も上履きを履いて、いたたまれなくなり保健室を出た。
「もうなんなの…。」
「屋上の方へ行こうぜ。それなら誰にも当たらねえ。」
神田の手を引き、誰もいないルートを通り三階まで歩く。
不服そうな神田は、安全地帯に着くまで大人しく手を握られていた。
「ここなら大丈夫だ。」
着いたのは屋上の扉前の机がたくさん積まれた場所だった。
芦屋はその机の上に座った。
「私に何の怨みがあるの?」
「は?」
「さっきの酷すぎるわ。私まで巻き込むことないじゃない。そんなに私が気に入らないの?」
「違う。」
「違う?違うならあんな事しないわ!!もしかして、私の体操着盗ったの芦屋君?」
「盗ったんじゃない。」
「その言い方、やっぱり何かしたんでしょ。何が気に食わないのか言って。私が悪いのなら謝ってあげる。けど陰湿なことするのやめて!」
「俺はそんなつもりじゃねえ。ただお前と話したいだけだ。」
「自分勝手すぎるのよ!!!もうトラブル起こすのやめて!!!」
神田が珍しく大きな声を出してしまった。
「ん?誰かいるのか?」
と、二階から先生の声が聞こえた。
「やばい。神田。」
芦屋はとっさに屋上の扉の南京錠を外した。
その屋上の扉の隙間から神田を押し込むと、自分もその隙間に入って隠れた。
足音は確実に三階へと向かってくる。
「…最悪…。」
雨に濡れた神田がそう呟いた。
しばらく待っていると、
先生の足音は三階から二階に消えた。
「…。」
「はあ。」
「もう何なの…。」
神田は泣きそうな顔で屋上の屋根のある下で縮こまる。
雨は屋上のコンクリートを跳ねて自分たちにかかる。
上履きもスカートも濡れてしまっている。
「…泣いてるのか?」
「もういいわ。」
「?」
「…。」
二人大人しく体育座りで屋上の屋根の下。
神田も吹っ切れたようにドアにもたれかかってため息をついた。
「お前と話したいだけだ。」
「…。」
「体操着隠せばお前とまた保健室で話せると思った。悪いとは思ったけど、皐月に怒られるからな。」
「…。」
「お前を泣かすとは思ってなかった。やりすぎた…。」
「いつもこうなの?」
「いつも?」
「誰かと話したいとき、こんなことするの?」
「皐月とお前以外に話したいって思ったことない。皐月にはしたことない。」
「…。」
「神田は何でこの学校選んだんだ?お前頭悪いのか?」
「…。」
「怒ったか?」
「すべてに反抗したの。親と友達。周りの環境に。自由に生きたいと思ったからこの学校を選んだの。」
「どういうことだ?」
「いろいろあったの前の高校で。私一年の後半から来た転入生なの。きっと知らなかったでしょ?」
「知らなかったな。クラス違うし。」
「親の教育にも疲れたから、いろいろ全部のしかかってこうなったの。窓際で外見てるのが私にとって幸せなのよ。」
「キモイって言うからトラブル起こすんだろ。」
「そうね。だからあなたに恨まれたのよね。」
「違うって言ってんだろ。俺はお前と話したいだけなんだよ。」
「嫌われるわ逆に。そんなアプローチじゃ。」
「なら普段から話しかけてもいいか?」
「今のままがいいわ。窓を見てる方が好きなの。」
「…。」
「それに渡部君に怒られるんじゃない?」
「お前が許可してくれれば話しかけるくらいいいだろ。」
「芦屋君加減を知らないでしょ。」
「ダメか?…そうだ。帰り一緒に帰ろうぜ。皐月いつも部活だから。」
「…。」
「そうしたらもうこんな事しない。約束する。」
「私部活やってるの。」
「弓道だよな。なら毎回待ってやるよ。」
「本気で言ってるの?午後八時までとかざらよ?」
「…金曜以外なら。それでいいなら俺はお前に普段話しかけない。」
「私を食べたりしない?」
「今のところは。」
「その言い方だと怖い。」
「食ったりしねえよ。コントロールはできてるからな。学校で酷くああなったのあれが初めてだ。」
「…。」
神田は少し跳ねた雨に濡れながら鼻で笑う。
「…わかったわ。でも、周りにその事言われたくない。終わったら校門で会いましょう。」
「連絡交換しようぜ。」
神田がその言葉に黙って頷いた。
「どうして私と話したいの?」
「知らねえ。」
「つまらないと思うわ。私の話。」
「俺が話す。」
「例えば?」
「俺、お前の弓道してる姿見たんだ。」
「いつ?」
「先週の金曜日。」
「それで?」
「お前じゃないみたいだった。なんつーか、ビームが出そうなくらい強そうだった。」
「それどういうことよ。」
神田が思わずはふふっと笑った。
「とにかく、お前がかっこよかった。」
「ふーん…。」
「体操着返すからな。」
「当たり前でしょ。いつどこに隠したの?」
「お前が朝教室に来てすぐトイレ行ったとき。俺の引き出しに突っ込んだ。」
「やる事が子供ね。」
神田がまたクスッと笑った。
「もうそろそろじゃない?帰るわよ。いい?放課後帰るまでは私に一切話しかけないで。」
「ああ。わかった。絶対連絡する。」
「私のアドレス後でロッカーの靴の中に入れとくから。それでいいでしょ?」
「ああ。約束な。」
二人は屋上から室内に戻った後、何事もなかったかのように距離を置いて歩き出した。