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芦屋物語  作者: 愛犬元気。
15/17

第十五話

その残りの時間、保健室に一緒にいたが皐月に変化は何もなかった。




「くそ…。」


確かにあの小瓶から取り出した薬だ。

あいつに仕込みなどできないはず。でも、何もないなんてことがあるのか?


完全にやられた。



それに


「芦屋が学校に来ないってどういう事だ。」


俺たちの事警戒して、これ以上探られないようにしたのか。








「ええ?芦屋君、もう学校来なくなっちゃうの?」


その日の放課後、宇佐川の働く喫茶店に蓮本と神田が来ていた。


人の少ない午後4時前、宇佐川はちょくちょく二人の席に来ては今日あった話を聞いている。



「あいつがそう直接言ったんだ。それにあの精神薬も飲ませたんだ。お前の小瓶からとったあの薬だぞ。けど、あいつは躊躇なく目の前で飲みやがった。一時間たっても何にもなかったんだぞ。」


「…。」


その話に神田も顔の前で手を組んで眉をしかめた。



「神田。あいつもう学校来なくなるって言ってっけどもういいのか?思い残すことまだあるんじゃねえの?」


「…私のせいかも。」


「え?」


「神田さん?」


二人は神田の顔を覗く。

見たことないくらい落胆する彼女は、組んだ手に顔をふせた。



「私が芦屋君に彼から自立できるかもしれないって言ったの。その次の日にこれよ。きっと、それを言ったから、渡部君に何かされたんじゃないかって。」


「何かって…あいつそんな過激なやつか?」


「最近怖く感じるって言ってたわ。渡部君の事。手を出すかは知らないけど。」


「渡部君、そんな人じゃないよ。僕は彼の優しさを知ってるし、困った人を必ず助けるし、人望熱いし、そんな人じゃないよ…。」


宇佐は持っていた銀色のおぼんをぎゅっと抱きしめた。



「中学一緒だったんだろ?何か有益な情報ねえの?」


「無いよ。本当に優しい人なんだよ。クラスの人気者だった。目立つような人じゃなかったけど、僕や僕の周りにいるような人たちからは絶大な支持があったから。」



「裏の顔を隠すための一環なのかもな。」


「そんなわけ…。」




「宇佐ー!!!」



「あ、はい!!」


宇佐川はそのまま店長に呼ばれて奥へ消えた。



「あいつって相当頭のいい人間なんじゃねえかな。」


「そうね。今までその素性がばれなかったんだもの。」


「芦屋にメールしたらどうだ?」


「彼のアドレス自体変わってるわ。」


「マジか。」


「出来てもしない。これ以上渡部君を刺激したらまずいんじゃないかって思うわ。」


「俺たちのやってること、空振りじゃねえよな。」


「さあ。」


「なんでだ。薬飲んでなんもなかったんだ。」



「…。」


「山行ったらなんかわかるのか。」


「今日がラストチャンスなんじゃない。」


「ラストチャンス?」


「私たちも、今日で何もなかったら詮索するのは終わり。来週からは個々普通にまた学校生活を送るの。」


「なんでだよ、ここまで来たのに。」


「私たちのやってることはあくまで憶測にしか過ぎないからよ。渡部君が白なら、はた迷惑にも程がある。」


「…証拠って奴か。今日でつかんでやろうじゃねえか。」



「芦屋君が来るとは限らないわ。」


「来る。俺たちを消したがってるからな。もしかしたらってことだ。」


「いいの?蓮本君。興味本位で殺されても。」


「お前を一人で行かせるつもりなんてない。お前が殺されないように、俺がどんだけいい男かって事を分からせてやる!!」


「虫で怯えてるのに。」



「ついでに克服してやる。」



「…アンナって言うらしいわ。」


「なにが?」


「芦屋君のそばにいた女の子。誘拐事件の。」


「お前、最初から知ってたのか?」


「聞いたもの。本人から直接。」


「なんで黙ってたんだよ。これからって時に。」


「信用していない人には言えないじゃない。そんな事。でも、それ以外分からないし、私個人で調べても何も出てこなかった。」


「し、信用…してるのか俺に。」


「守ってくれる人を信用しないとダメでしょ。」


「そうだな。そりゃそうだ。…その話詳しく聞けないか?」


「新聞に書いてあるままよ。芦屋君とそのアンナちゃんって子。それ以外知らない。」


「芦屋って元々どこ出身だ?」


「もう聞けないわそんな事。知るには遅すぎたみたい。」


「…。」



「お待たせ。」



エプロンを外した宇佐が戻ってきて、二人のいるテーブルの空いている椅子に座った。



「休憩10分貰えた。なんなら今日ここで二十二時までいる?店長に聞いたらOK!だって。ついでに夕飯も作ってくれるってさ!」


「マジかよ。どうする神田?」


「私は構わないわ。」


「じゃあそうしよう。でも、店長にはあの山へ行くって言わないでね。あの後結構お怒られたから。」


と、宇佐が可愛らしく唇に人差し指をつけた。



「宇佐川君本当に大丈夫?無理していかなくてもいいのよ。」



「事件の話を聞いて、もしあれが芦屋君だったら逆に助けてあげたくなった。それに、芦屋君だとわかったら僕の心のトラウマも消える気がする。」





「またそんな話してるのか。」



「て、店長!」



宇佐の席の後ろにあのダンディーな店長がいた。

銀色のおぼんに乗せたケーキを三人の前に置いた。


「あの時お前を山に連れてって酷く後悔した。それで、あんなことになったんだろう?」


「今回は違います。友達を助けに行くんです。」



「友達?」


「そうです。今回は行かなきゃいけないんです。皆で救いに行くんです。」


「けどな、宇佐はここの看板でもあるんだ。あまり休まれても困るし、宇佐目当てで来るマダム層が落ち込むんだよ。」


「大丈夫です!必ず戻ってきます!!来週から五連勤します!再来週も!」



「本当に?…なら戻ってきたらちゃんと連絡するんだよ。店長とかじゃなくて、一人の人間として心配しているんだ。」


と、あきれてため息をついていた。


「はい。必ず戻ってきて日曜日もちゃんと出ますので。」



「頼むよ。どんな事情だが知らないけど君たちも気を付けてね。このケーキが最後のスイーツにならないように。これは俺からのサービス。」


と、ニコッと笑った。













「ごめんね。本当に。」



皐月は謝りながら芦屋の眼のガーゼを新しいのに代えていた。


そのガーゼにはまだ黒い血がべっとりついていて、剥がすのにも大変だ。



「いってえ…。」



「目は見える?」


「いや、光を感じない。」


「そっか。やっぱり病院行く?」


「いい。これは俺の罪だから。」


「…。」


「皐月。今日山に行くって本当か?」



「うん。」



「お前に手を煩わせたくない。狩るってそういう事だろ?」


「いつも何持っていくの?」


と、芦屋のいるベットの下に手を伸ばすと、誰にも言ってなかった凶器セットを取り出した。



「ここにあるのずっと知ってたのか?」


「バレバレだよ。」



ガサガサと中に手を入れる。



錆びたノコギリや、鉈、サバイバルナイフ、中華包丁がタオルにまかれている。

どれも見てわかるように、中古だ。



他にもスタンガンや催涙スプレーなど、いろんな道具が入っていた。



「すごいね。これ。」


「いろいろ試行錯誤したからな。けど、やっぱりお前が行く必要なんかない。俺と同じになっちまうぞ。」


 「もう手遅れだよ。俺はもともとこっち側の人間だよ。」


「え?どういう意味だ?」


「さ、夜に備えてご飯でも食べよう。今度は本当においしいの作るから。」


と、皐月はノコギリを持って笑った。



 





夜二十二時



「また送ることになるとはね…。」


店長はそう言って運転席で煙草をふかした。



「いいじゃないっすか。宇佐川が五連勤でしばらく頑張るって言ってんすから。」


と、後部座席に遠慮なく座っている蓮本。その隣には姿勢のいい神田がいる。



「その契約守れる?もし宇佐が戻ってこなかったらどうする?」


「なら俺が働いてやるよおっさん。こいつと。」


と、神田の肩を叩いた。



「勝手に決めないでよ。」


「宇佐が戻ってきても歓迎するぞ。若い子が入ると暇を持て余したおっさんおばさんは喜ぶからな。」



「介護かよ。」


「ははは。目の保養にはなってるよ。特に宇佐が入ってきてからは少しリッチなマダム層に人気が出て、宇佐目的で来る人もいる。」


「ならホストクラブで働く。倍稼げるだろ。」


「あなたみたいな無神経に稼げるかしらね。」


神田はそう鼻で笑った。




しばらく談笑していたものの、山が近くに見えてくると社内の空気は一変した。


そこは光は一切無く、闇が一面に広がっていて来るものを全部吸い込んでしまいそうだ。



「夜来ると違うわね。」


「だな。」


初めて麓まで近づいた神田と蓮本は、その暗さと静けさに驚いた。


それと同時に足がこの先に行くことを本能で拒否している。



「ありがとうございます。ここまでで大丈夫です。」



立ち入り禁止ギリギリに三人は車から降りる。


「うわあ…。」


蓮本の口から思わずそんな声が出た。



「今なら引き返すことも可能だぞ。」


店長はまだ車を出さず、運転席の窓から三人を見下ろした。



「いや、ありがとうございました。店長も気をつけて帰ってください。」


宇佐は丁寧に頭を下げた。神田も蓮本もそれにつられて頭を下げた。




「ああ。ちなみに何時頃戻ってくるつもりだ?」


「…早朝までには。」


「早朝?そんなにかかるのか救出大作戦は。まあいい。今日早朝までに連絡なかったら警察呼ぶからな。分かったな宇佐。」



「はい。」


と、宇佐も充電満タンのスマホを見せた。



「三人無事で帰ってくるんだぞ。何時でもいいから、迎えに来てやるから連絡しろよ。」



「はい。ありがとうございました。」


「「ありがとうございました。」」


宇佐がそう言うと、二人もつられて頭を下げた。




「行っちまったな…。」


白いワンボックスカーの方向指示のランプが見えなくなると、蓮本は大きなため息をついた。



「なら今から追いかけて乗せてって言えば?」


神田はなお冷静にそう手元のライトを点けた。


「お前を置いてそんなことできるかってんだ。」


カチ


蓮本も急きょ買ってきた懐中電灯を点ける。



「ついた!大丈夫だな。スマホと言う名のカメラとビデオもあるし、一応ある金で果物ナイフも買ったし…。あいつらを捕まえるためのロープ、催涙スプレー…。」



「そんなにお金あったの?」


宇佐が彼のごちゃごちゃした装備を見る。


「全財産だってえの。けど、俺は金よりも探検の方がワクワクする。」


「馬鹿なの?」


「神田だってなんだよ。ライトしか買わねえとか。殺してくださいと一緒だぞ。」


「早く行きましょう。それで、宇佐川君方向は?」


「確か、こっちだったかな。」


「神田は真ん中な。」


唯一道を知っている宇佐が前で、蓮本は一番後ろに落ち着いた。


「木にスプレーで矢印が書いてあるところがあるんだ。それを辿っていくと小屋があって、そこで危ない人に襲われた。」



「じゃあ、そこにいる可能性が高いんだな。」



「うん。でもあの時は先客がいたから。今日もそこにいるとは限らないよ。」



「…うわなんか飛んだ!」


一番後ろの蓮本はさっきからじたばたと一人動いていた。

というのも、羽のついた虫がさっきから歩くたび跳ねるのである。



「克服するんでしょ。」


神田は呆れながらそう言った。


「虫を寄せ付けないスプレー買えなかったんだよ。」




「あ…これだ。」



歩いて数十分。

宇佐川が木に懐中電灯を向けた。


すると、赤いスプレーで小さな矢印が落書きされていた。



「誰がこんな事するんだよ。くそ怖ェ。」


「小屋も相当落書きだらけだったから、そういう人たちが落書きしていくんじゃないかな。あとに来た人を怖がらせようとして。ここって結構人気の心霊スポットらしいから人が結構来るらしいよ。週末とか。」


「そいつらが芦屋の格好の餌になってるわけか。」


蓮本が辺りを見渡す。ライトが無いと足元すら分からない。




「ここだ。」



宇佐は頭の中の地図と照らし合わせながら矢印をライトで一つ一つ確かめながら進んでいく。





「神田。もし芦屋がここで人殺してたとしても、それでもいいって思えるのか?」

 


「変わらないわ。別に。」



「もし、あいつが好きだって言ってきたら、傾くのかよ。」


「私が彼にいつ好きだって言うのよ。」


「違うならいいんだけどな…。お前、最悪あいつを殺しても泣いたりすんなよ。最悪の場合だけど。」



「分かってるわ。」





「あ、あれだ。」



さらに歩くこと四十五分。


ようやく目的の小屋が見えてきた。



「あ、あれか…。」



蓮本は膝に手を当てて肩から息をしている。

神田も少し疲れた様子ながら、ライトで小屋を照らした。




「おい!!!!!お前らいるんだろ!!!出てこい!!!」


と、蓮本の突然の大声に二人が一瞬ビクついた。




「蓮本君。僕たちの存在ばらしてもいいの?」


「あいつらを前に隠れたって無駄な気がする。」


「確かにそうかもね…。」



「やるよ。一本。」


と、宇佐にナイフを渡した。



「僕は傷つけたりしないよ。」



「馬鹿か。お前が傷つけられる側なんだからもっとけ。」



宇佐はそれを恐る恐る握った。



「神田はここで待っててもいいぞ。」


「一人の方が嫌。」



「可愛い事言ってくれるじゃねえか。」


「…。」


そのセリフに神田が戦闘態勢で興奮している彼の背中を睨みつけた。



「じゃあ、行くよ。」



宇佐がつばを飲み込んだ。



外から見てもその小屋はあのまま落書きだらけだった。


今日は幸い先客はいなそうだ。




「すげえ落書き。もう真っ赤だな。」


「うん。ここまでやるなんてすごいよね。」


神田を守りつつ、二人はどんどん前進していく。

静寂と、月明かりが目の前の小さな小屋を一層引き立たせる。


「ここであの事件が起きたんだね…。」


宇佐は小屋の前で手を合わせた。



三人は例の事件を思い出していた。

落書きだらけの木造の小屋は、だいぶ朽ち果てている。



「花の一つでも持ってくりゃあ良かったか?芦屋。」


蓮本が小屋にそう尋ねるが、返事は帰ってこない。



「隠れてんのかあいつ。」



宇佐と蓮本が先頭に、組織の拠点に突入する軍隊のように朽ちている扉の前でナイフを構えていた。


 


「行くぞ…。」


ガッ!!!



蓮本の蹴りが木のドアを大げさに開けた。



「…あれ?」


部屋の中には誰もいない。


必死でライト片手に照らしても人の姿はなかった。



「宇佐川!この一部屋だけだよな!」


「う、うん!そうだと思う!!でもこの間と同じ…。」


「なに?」


小屋の真ん中で背中合わせになる二人、その間もガチガチに震えている。壁や天井や窓、床をライトを焦って照らすもどこにもいなかった。



バン!!!



「なんだ!?」



すると、木のドアが思いっきり閉まった。

その扉の先には神田がいたはずだ。



「神田!!」


蓮本が必死に呼びかけるも、神田の返事はなかった。



「罠か!!」


「うあっ?!」



ドサッ



宇佐が倒れた。

その倒れた彼をライトで照らすと、腹から血を出してうずくまっていた。




「っ…。」



「大丈夫か宇佐川!!」



「そこ…。」



と、宇佐川が指さす所を見るとこの小屋の一番奥の壁が動いていた。



よく見ると、それは壁ではなくハリボテだった。



「すごいね初めてだよ。ここの秘密を知ったのは。」


そのハリボテを刃物がザクザクに粉砕していく。


発泡スチロールから現れたのは、真っ黒の服を着た渡部皐月だった。




「お前!!!やっぱりそうか!」



「渡部君どうして…。」


二人がいつもと違う同級生の姿に唖然とする。

皐月は倒れてる宇佐を冷ややかな目で見ながら言った。


「どうしてあの薬の服用辞めちゃったの?あのままだったら狂ってたのに。」



「!!」


その言葉に宇佐は血を吐いてショックを受けた。


「友達…でしょ…?」



「友達だよ。殺してもいい友達。」


ライトで照らす彼の顔は笑っている。

それが恐怖をさらに駆り立てた。


「けどお前あの薬飲んでも何ともなかったじゃねえか!!!」


「なんともなかったわけじゃない。それにあの薬は俺にとっては良薬だ。」


「やっぱりただの精神薬じゃねえんだな!」


「幻覚剤。あの薬は人に嫌なものをみせることが多いけど、俺には違った。」


「何が見えたんだよ…。」


「姉さん。」




「キャアアアア!!」




すると、扉の方から神田の悲鳴が聞こえた。


「神田!!」


「今後ろを向いたら切りかかるよ。」


「!」


「芦屋には神田さんを殺してもらおうと思って。」


「けど、あいつ神田が好きなんだろ?そんなことするはずねえ!」



「今の芦屋は芦屋じゃない。ここに来る芦屋はただの殺人鬼だから。」


「どうせ薬漬けにしてんだろ。お前って本当悪い奴だな。あいつの心のトラウマを利用してこんなことさせてんだろ!そんな人を操って楽しいかよ!悪趣味すぎるだろ!」


「当事者でもないお前が知ったような口聞くな!!!」


と、鈍く光る中華包丁を振った。



「っ!?」


蓮本はそれを懐中電灯で受け止めた。


ガスッ!


ガシャン!!



中華包丁で懐中電灯が弾かれ、吹っ飛んだ。



「うわ!」


ガッ!!!



「!?」


蓮本の背中が蹴っ飛ばされた。



前からそのまま倒れると、皐月は彼の顔面に足を乗せてきた。



「うぐ…。」


真っ暗で何も見えない。かろうじて見えるのは吹っ飛んだ懐中電灯が照らす皐月の足と、目の前の宇佐の苦しい表情だ。


これでは迂闊に攻撃すらできない。



「暗視スコープを買ったんだ。このためだけに。なかなかの値段だったけど。」



「やめて…渡部君…。」


宇佐の手が皐月のズボンの裾を掴んだ。


弱い声と荒い息が彼のズボンにかかる。


「まだ生きてたの?」


「蓮本君を殺さないで…。」


「じゃあ先に殺してあげる。」


と、中華包丁を振りかざした。



「宇佐!!」


「!」


跳ね返ったライトが蓮本の指示を照らす。


それを見た宇佐が皐月の足を後ろに思いっきり引っ張った。


すると、蓮本も皐月のその反対の足を同時に後ろに持って行くと皐月はその力に負けて前に倒れた。


カラン



中華包丁は懐中電灯の近くに吹っ飛んだ。


「この野郎!!!!」



蓮本はその隙に彼に馬乗りになり、マウントポジションを取った。



「いい加減にしろ!!この悪趣味野郎!!お前に俺らの人生狂わされてたまるかよ!!!」



ガッ!!!



と、鉄拳を一発顔面に食らわした。



「蓮本君…神田さんを…。」



  

「!!」


宇佐のか細い声に、よくやく思い出したようだ。



「待ってろ…こいつをぐるぐる巻きにしたら助けに行くからな。宇佐もうちょっと頑張れるか?」


「うん…。そこまで傷は深くはないみたい…。」



と、暗闇から聞こえた。




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