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無価値な『   』の人生






 『   』、32歳、独身、無職。

 俺は、この三要素から誰でもわかるほどに、無価値だ

 かの有名な偉人の名言にこんな言葉がある。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」。

 よく平等を表す言葉として用いられることが多いと思う。

 しかしこの言葉には足りないものがあるのだ。

 この言葉の後には、生まれに関係なく人の地位を形造るのは学問と努力という意味合の言葉が続いてる。

 

 少し乱暴な読解だと思わないこともないが間違っていないと思っている。

 この言葉を引用した理由、それは最後に一言物申したかったからだ。

 誰もが潜在的に、そして現実でも折り合いをつけているもの。



 「平等なんかねぇよ!努力しても地位なんか向上するわけねぇだろ!」



 何とでも言ってくれ。子供でも知っているようなことはわかっているんだ。

 子供でも理解できるソレを拗らせてしまった経緯を話そう。


 小学校の頃、同年代が泥だらけで走り回っているなか俺は1つのアニメにハマった、ハマってしまったのだ……。

 内容はありきたりなもので平凡な少年が一人の天才に追いつこうと切磋琢磨するストーリー、俺は少年の姿に憧れて真似をし始めた



 しかし現実はアニメのようにいかない。

 


 努力をした。元々下地は悪くなく、すぐにテストで満点を取れるようになった。体育で

は同学年誰よりも速かった。羨望と嫉妬の目はあったが一線を引かれ、友達はいないかった。



 努力をした。中学に入ってからも成績は常に上位を維持し続けた。

 この頃から大した行動すらしていないクラスメイト達が俺に対して


 『さすが、天才は違う』


 と、自身の怠惰の正当化をし始めた。

 中学校を卒業する頃には努力をしない、周りと自らの格を下げて合わせる奴らに嫌悪感を抱いていた。



 努力をした。高校生になってからは個性のない平凡な集団の仲間入りしたくなさにより一層勉強に力を入れた。

 卒業が近づくとどうでもいい理由で会社に入ったり、大学に進んだりする連中が沢山いた。

 連中に侮蔑の眼差しを送りながら、その成績から一流企業へ就職確定が決まっており、優越感に浸っていた。



 こうして純粋な憧れは、醜い優越感へと代わり、代償として人と合わせることができない能力があるだけのコミュ障が出来上がった。

 会社には俺よりも能力が低くても成績が上のやつがいたし、親が金持ちなだけの能力のないやつがコネ入社してくる奴もいた。


 そうして俺は、入社数年で努力をやめた。


 上にヘコヘコ頭を下げ、一番なりたくなかった平凡に成り下がった。

 

 努力は報われない、頑張ったものへの平等な結果など存在しない。

 努力をやめた俺は能力のない唯のコミュ障。社内ヒエラルキーが最下位まで落ちて更に数年後、人件費削減を理由にあっさりリストラされた。


 リストラされたその日の帰り道、路上でやけ酒し、理不尽を叫んで、そして俺の目の前に大型トラックが突っ込んできた。



 「つまらない人生だった…。もっと努力だけじゃなく……、色んな人と……」






 走馬灯を見ながら、俺、『   』の無価値な人生は幕を閉じた。

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