ヒトとの接触
目が覚めると、自宅の自分の部屋の天井などではなく藁葺きの作りの天井であった。
目を動かして体を見てみると、包帯が首と上半身に巻き付けてあった。
「ー痛っ」と。上半身を起こそうとしたとき、反射的に身をよじった。
「あ、生きてたんだね。」
喋りながら、倒れる前に見た子供の民族衣装と同じ模様の入った服に身を包んだ女が近づいてくる。腰まで長い栗毛で引き締まった体格であった。
その手には盃のようなものが握られていた。飲ませるつもりなのか、悠人の口に近づけ無理矢理飲ませた。
口のなかで火花が散ったような衝撃を受けた。
「ゴホっゴホゲホ!?」異物を吐き出そうと体が反射的に咳き込んでいた。そして、癒えてない傷があるにも関わらず動いたため体の方にも痛みが走った。
「何しやがる、てめぇ!」
「落ち着きなよ、ただの毒だから。」
「どこが落ち着いていられる、だ。薬かと思って飲んじまったじゃねぇか!」
「ただ間違えちゃっただけじゃない、そうカッカしないでよ。誰にだってミスはあるじゃん。」
「そのミスを邂逅一回目にしてんじゃねぇ。わざどだな!?俺の中のあんたの株は一気に下落だよ!うくっ、なんか体がしびれてきたぞ、おい!」
「まあ、なんかあったら治るようにおまじない唱えてあげっからさ。」
「普通に薬を寄越せや!」
とんでもない女だった。毒を盛られることになるとは思ってもいなかった。
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけどさ」
「何が、あががが、が、あがががが。」
「あちゃー。口まで痺れが来ちゃったか、ダメかなこれ、私の方が先に痺れを切らしておまじない唱えるのかな?あっ今のわざとじゃないよ。」
「何してるの!恩人さんに向かって。」と怒鳴りながら彼らに近づく子供がいた。その子供の身長は栗毛の女の腰くらいまでしかなかった。髪の色は黒でショートであった。
その子供は悠人の痺れて閉じなくなった口に自分で持ってきた盃の中身を飲ます。
ゴク、ゴク、と喉をならしながら少しずつ飲んでいった。
顔の方の痺れは収まって喋れるようになったが、足腰だけは痺れたままだった。
「もう少ししたら、全身に薬が行き届いて動けるようになりますから。」
「ああ、ありがとな。えーと…」
「ラスカ=アフィニティっていう名前です。あの時は助けてくださってありがとうございます。」
「いや、何もしてないし。ただ暴れたかっただけだ。」
「いやー見事なあばれっぷりだったね。子供がただをこねてるようだったね。」
「ちょっ!?カルーアさんっ!?」
「かはは、てめぇにはさっきも喧嘩を売られたな。今からオトシマエつけてやる。」
「うふふ、今から戦ってくれる?そんな体で。」
両者がの間で火花が散っているように見えた。
一触即発しそうな雰囲気に辺りが包まれる。
「止めてください、二人とも! 大人気ないですよ。カルーアさん。で、恩人さんの名前は?」
「斑鳩悠人だ。」
「イカルガ=ユウトさんですか、あまり聞かない名前ですね。」
「ふーん、イカルガ=ユウトねぇ…」
二人とも名前の響きに不思議がっていた。悠人も逆の立場だったら同じことをしていたであろう。
「で、ここはどこなんだ?」
「ここはツキノ村という集落です。街からかなり外れた場所にあるのでご存じないかもしれませんね。」
「へぇ、そんな場所なのか。」
聞いたことがない村の名前を聞いて、彼の口角は上がりつつあった。からだの痺れが無くなりつつあるが傷の痛みは残った体が笑いを堪えて必死になっていた。
現状を楽しんでいる、そんな表情だった。
「ユウトさん、痺れは収まりましたか?」とラスカが言った。
「ああ、だいぶ動けるようになってきたぜ。」
「では、この集落周辺を案内します。」
そう彼女は言ってユウトを寝台から連れ出した。
更新遅れてすみませんでした。
定期的に書けるようにネタを考えときます。