母国からの追放者2
煙が上っていた方向へと進む。
ひたすら森の奥まで進んでいく。
地面に落ちている小枝や葉が踏まれて不気味な音を奏でていく。
昨晩に比べて森の中は明るいが、視界が悪いことには変わりがなかった。
途中で、包丁を取りだし、目の前の木々を切りつけて道を開こうとするがなかなかうまくいかなかった。
なにかに導かれるようにひたすら真っ直ぐ進んでいた。
歩いている途中、遠くで悲鳴のような音が聞こえた。
急いでそちらに向かう。初めは早歩きだったのが、気づいたら走っていた。
「た・す・け・て~~~~」
近づくにつれてだんだんはっきりとしてくる悲鳴。
声のする方向に走っていた。目的地が煙の上がってた方向でなくなったのはここで誰かに出会えば何かがどうにかなると思ったからであった。
走った先にいたのは赤と緑を基調とした服に身を包んだ少女が篭を抱えながら走っていた。彼女は襲われそうになっていた。
襲いかかろうとしているのは人でもなければましてや動物ですらなかった。
骨、骨、骨、どこを見ても骨しかない化け物で、虎のような図体に加え獰猛そうな爪と牙を備えていた。前足と後ろ足が地面を蹴る度にガシャガシャと骨同士が擦れる音がしていた。骨しかないのに腹を空かせたように獲物である彼女の後ろをものすごい勢いで疾走していた。
「うおおおおおおおおおおお!」
と叫びながらそんな骨の化け物に横から突進する。
その叫び声に反応したのか化け物は彼女ではなく悠人に目をつけ、こちらに向かってきた。距離を詰める前に包丁を構え、化け物に迫る。
しかし、化け物は一気に加速し飛びかかってきた。化け物の爪が悠人に襲う。ザクッと皮膚が切られる音がした。
悠人は痛みをこらえながら包丁を振るい化け物の首に突き刺した。
だが、そんなものはまるでなんでもないように化け物は襲い続けた。
一旦、骨だらけの化け物と距離をとろうとするが、化け物の猛追は止まらなかった。バックステップで下がっていたとき、彼は地面にまで延びている木々の根に気づかず、足をとられ転んでしまう。
直ぐに立ち上がろうとするが、化け物が悠人に覆い被さった。
悠人の首に牙を突き立てようと顔を近づけていった。
「うおぉ!?」焦りながら、化け物の顔に殴りつける。
ガン、ガン、と音をたてているが、自分の手の方が先にリタイアしそうであった。
「グルルルゥゥゥァァ!」
悠人の首に牙を突き立てた。赤く、熱いものが流れ落ちていく感覚がした。自分の血であった。悠人の体は牙を突き立てられたまま持ち上げられた。
「プラーミャ・ヘルバーナー!」
透き通った、よく聞こえる声がした。
瞬間、化け物は青白い炎に包まれたのが見えた。化け物は悠人を口から離し、見悶えていた。
誰かが駆け寄ってくる音が聞こえたが、悠人の意識はそこで途絶えた。