第9話『アホ王子に栄光あれ』
今回、勇者編第一章の最終話です。
次回ダリィが出るのは、魔王編第一章を挟んだ後、勇者編第二章になります。
注:あらすじ変更しました。
また、次回は簡単な夢見の説明になります。
「じゃあー……とりあえずこれやってください」
俺は、即席で作った算数と文字のテストを王子に渡す。ミルとココは次回から俺の授業に編入だ。
「あ? こんなもんやれるかよ」
「あっそー……いいんだぁ」
俺は反抗する王子に対し、障壁を一枚張る。
「わ、わかったよ……」
王子はそれだけで、静かにテストを解き始めた。あの監獄はどうやら相当な苦痛だったらしい。
初授業の出来としてはー……まずまずかな。
「……ん? これ、なんて読むんだ?」
「あー、わかんないのは飛ばしていいですから」
「わかった」
王子はおとなしく俺の指示にうなづくと、テストをまた解き始める。
いやー……しかし……うん。すごい集中力だなー……邪魔したら悪いよなー……。
何もすることがないってのは、ぶっちゃけ暇だ。
昨日あんなにうるさかった王子が、こんなに静かだとはな……。
◇◆◇◆◇
「おい、終わったぜ?」
「……ん? ああ、すみません、寝てたみたいです」
「おいおい、大丈夫か家庭教師」
どうやら、居眠りしていたらしい。
無意識に自分の周りにプリズン張ってるし。
俺はプリズンを解除すると、王子の差し出した答案用紙を手に取り、答えを確認する。
「んで? 結果はどうなんだ?」
王子がソワソワしながら、俺に聞いてくる。そんなに自信あったのか。
非常に言いづらいが……人生の先輩(現在6歳+前世18歳=王子8歳より年上)として、ハッキリ言ってやろう。
「悪いですが、王子の頭脳は並以下です。算数も文字も、中途半端なところで止まっていて、世間では使い物になりません。これから王子のダメな所を、みっちり鍛えますから、覚悟していてください」
「は……はい」
「例えば、ここの足し算の問題、繰り上げができてません。他の問題ではできてますから、単純なミスでしょう。こういう小さなミスは、なるべく無くしてください」
「わ……わかったよ……」
「ならいいんですが。……剣術の時間になりますね。稽古場に急ぎましょうか」
俺はそう言って、王子に急ぐように促すと、王子は木刀を持って勢いよく部屋を出る。
さて……俺も行くか。
「テレポート」
魔法だけどな☆
◇◆◇◆◇
「あー……クッソー。いつの間に……」
俺に抜かされて、王子は異様に悔しがっている。なんかごめんな☆
「ふむ……直ぐに始める、準備しろ」
「は、はい」
「あはは、2人ともお疲れ様」
「……ガキ」
ココちゃんが労いの言葉をかけてくれるが、ミルは相変わらずのツンツンな態度だ。
2人とも冒険者! って感じの服装で、今にもダンジョンに挑みそうだ。
ココは機動力を活かした軽装で、重要な部分を守るように必要最小限の金属が縫い付けられている。
逆にミルは……魔法使いだなー。
剣術……というよりは、戦闘指南だと考えた方がいいかもしれない。
ツンデレ魔法使いとムードメーカーの剣士、絵になるなぁ。
まあ、そんなことはさておき、俺たちは最初の授業をすることになった。
「……まずは、模擬戦をしてもらう。一対一形式で、勝負の勝ち負けは俺が判断する。
じゃあ……最初はミルとココだ。2人とも、稽古場の立ち位置に着いてくれ」
ヴォールがそう言うと、2人は静かに稽古場に書いてある立ち位置に立ち、ヴォールはそれを見て「始めっ!!」と叫ぶ。
「容赦しないよ、ミル!!」
「ココこそ、油断しないで」
ココは短く会話を終えると、短剣を持って突撃してくる。
ミルは氷砲弾でココの動きを制限すると、さらに燃え上がる炎の輪を作る魔法、炎戒を使い、ミルの周囲を塞ぐ。
「もう終わりよ、ココ。天冥魔法〈白夜〉」
ミルがそう唱えると、激しい業火球がココに向かって飛んでいった。
「そこまで!!」
ヴォールが魔法を抑制し、ココ対ミルの模擬戦は終了した。
「ハァ〜……まさかここまで本気でやるとは……」
ココがため息を吐きながらそう言うと、ミルはフン、とそっぽを向いてしまう。
「次は……王子とダリィだな。じゃあ、さっきと同じように立ち位置に着いてくれ。……では、始めっ!」
「ハアッ」
王子は剣を横に振りながら俺に飛び込んでくるが、俺はそれを体をそらすだけで避け、2撃目を障壁で防ぐ。
俺はそのまま氷の剣を出現させると、王子の3撃目の縦切りを氷の剣で受ける。
その状態から氷の手裏剣をもう片方の手で作り出し、王子に投げつける。王子が手裏剣を交わす間に俺は王子の剣を弾き飛ばし、魔法障壁で囲む。
「またこれかよ!!」
「勝負ありだ!」
王子が嘆く(ツッコむ?)と同時にヴォールが試合終了を宣言する。
「そうだな……ダリィ、俺と模擬戦だ」
「え?」
「着いて来い」
俺たちは呆気にとられるまま、言われた通りに、城の近くの草原に移動した。
◇◆◇◆◇
「……で、なんで勝負ですか?」
「……理由が必要か?」
「いや、ないならいいですけど……」
何だろう、この微妙な空気。
ってか観客!!
くすくす笑ってんじゃねぇ!!
「……行くぞ」
「ええ」
俺とヴォールとの間に、無言の空気が流れる。
ヴォールが一歩踏み出したその瞬間。
太い声が、空気を震わせる。
「ゴァァァァァァァ!!!!」
「なんだと!? こんな時に、なぜ古代龍神が!?」
ヴォールが驚くのもつかの間、ケツァルコアトルスの鋭く、太い爪が俺に向かって攻撃を仕掛ける。
あのローブ、持って来ればよかった……
そんなことを考えつつも、障壁を俺とケツァルコアトルスの足の間に出現させる……が、障壁はいとも簡単に崩れ去り、足は三本の指でガッシリと俺の胴を掴む。
……え? 連れ去られるパターン?
「ぐっ」
「ゴァァァ」
ヴォールが高く跳躍し、ケツァルコアトルスの足に斬りかかるが、ヴォールはケツァルコアトルス軽く蹴られ、地面に叩きつけられる。
ココが短剣を投げたり、ミルが氷砲弾をケツァルコアトルスに向けて撃つが、ケツァルコアトルスはそれを障壁魔法で防ぐ。
王子は……腰を抜かしてる。アホだろ、王子様。
まぁ……俺も頑張るから、王子も栄光を祈っているよ…….
俺は、この状況に諦めを感じつつ、されるがままに連れ去られるのだった。




