第15話『神様2』
俺たちは、冒険者ギルドから隣接する冒険者用の宿屋にやってきた。
「あら、おにーちゃんたち、新入りさんかね」
「ええ、まあ」
「そうかいそうかい。じゃ、初回サービスで……銀貨1枚だよ」
俺はカウンターに座るお婆ちゃんに銀貨1枚を支払う。
「よしよし、じゃあ、102号室と103号室だからね」
「はい。ありがとうございます」
「いやいや、こっちも商売だからねぇ」
俺はカウンターに置かれた鍵を受け取り、102号室に向かう。ちなみに、ココとミルは103号室だ。
◇◆◇◆◇
「うおっ……」
俺は思わず、声を出して驚いてしまった。
そこには……着替え中でご機嫌の、10代後半の少女がいた。
「え? キャア!!」
「……ご、ごめんなさい」
俺は急いで部屋から出て、部屋の番号を確かめる。
102号室、うん。間違いはないハズだ。
隣の部屋からミルとココが出てきて、俺を訝しげな目で見る。
「何があったの?」
「な、中に女の子がいた……」
「「えっ」」
俺の言葉を疑ってか、2人はそーっと部屋の扉を開ける。
俺も後ろから背伸びして中をみると、そこには服で体を隠しながら、涙目でこっちをキッと睨みつける少女の姿があった。
「……なんなのよ、ヘンタイ」
ああ、この辛列な言葉すらもご褒美に聞こえてしまうのは、確かに俺が変態だからだろ
艶やかな黒髪を後ろで纏め、10人中9人は美人と言うであろう、そんな美少女が涙目でそこそこの胸を隠している……あれ? この子……どっかで会ったかな?
「何ジロジロ見てんのよ」
「いや、ね。今夜の俺の寝る場所、どうしようかなって思いまして」
「とりあえず出てって!!!!」
俺たちは枕を投げつけられ、思わず部屋の扉を閉める。
「はあ……」
「はあ……」
「はあ……」
「「「メンドクセ……」」」
俺たち3人の心の嘆きが、二酸化炭素となって排出された。
「……で、これからどうする?」
「とりあえず、私たちの部屋でこれからの予定を話そうか」
ココがそう切り上げ、俺たちは103号室に入った。
◇◆◇◆◇
「んで、ここで一泊過ごして、どうするの?」
「ああ、これから北の国……アシュラ帝国に向かう。アシュラ帝国は人間至上主義の国だから、辛い思いをするかもしれないから2人はこなくてもいいけど……どうする?」
「いや、行くよ。ダリィにはついて行くって、決めたもん」
ココの問いに答えた俺の言葉に、ココはきっぱりと断言してくれた。なんだか嬉しいな。
「そうか、ありがとう。じゃあ、とりあえずアシュラ帝国に行くとして、そっちで戦争の依頼を受ける。ここでは、俺が勇者だってことを明かしたいんだけど、どう思う?」
「勇者だって言ったら、先ず間違いなくイエスト王国がアシュラ帝国を潰してでもダリィを勧誘にくるから、勇者であることは隠しながら……アシュラ帝国軍の中で実力を示せばいいんじゃない?」
俺の相談を、ココにミルが耳打ちをして答える。
もう少し心を開いてほしいが……今はまあいいか。
あれ……? 血求の鏡があるよな? じゃあ、隠したって意味なくね?
「いや、多分俺のことはバレてるから、俺が勇者として帝国軍に加わる。冒険者ギルドカードは身分証明書になるから、一応持っておこう」
俺がそう言った所で、突然俺の手の甲が眩い光を放った。
「うわっ!?」
突然のことで少し驚くが、俺の手の甲の光はだんだん落ち着いていった。
「な、なんなんだ急に……?」
俺たちが驚いていると、俺たちは突然何処かの路地裏に転移した。
◇◆◇◆◇
「や、やっと見つけた……」
目の前にいるのは、3人の少女。
疲れ切った様子の、翠色の髪をした、巫女服を纏った美人……というよりは、可愛い少女が、俺に名乗り……他の2人の紹介をしてくれた。
「我々は、あなたをお待ちしておりました。真勇者、ダリア・アイ・ロズワルド様。私は陽の神アマテラス。こちらは月の神ツクヨミ」
アマテラスに紹介され、黒髪の美人な少女が「……どうも」と短く答えた。なんか無口属性の人が増えた気がする……。
「そしてこちらは「災厄の神ヤマタノオロチだ! よろしくな!」……割り込まないでください」
アマテラスが紹介する前に元気良く名乗り出た、碧い髪の身体中に古傷がある……こちらも可愛い少女が名乗る。
「さて、色々あなたに渡さないといけませんね」
アマテラスはそう言って、何処からか短剣を取り出した。
「これは、貴方が勇者であることの証明になる短剣です。さらに、こちらを」
短剣の次に取り出したのは……光の塊だった。
「これは、様々な贈り物と呼ばれる、先天性スキルの塊です。夢見の能力で異世界のガルーダを倒した時にも、受け取ったでしょう? これは、選択制ではないので安心してください。それから……」
アマテラスはさらに、ギフトをミルとココにも贈る。
「今渡したのは、お二方にぴったりであろう役職の高レベルギフトです」
「あ、ホントだ。私は……斥候ですか。職業が斥候で、状況把握と、短剣術が神級ですね」
「……魔法使い。……全基本魔法と魔力回復が神級」
まあ、前衛として前で戦うことの多いココにはその2つはぴったりだろう。
逆に、後方援護がメインのミルは魔法使いに特化した感じだ。
この流れでいくと、俺は遊撃担当になるのだろうか。
まあ、確かにぴったりかもしれないな。
「治療術士がいないとは、これまた珍しい。使える人はいないんですか?」
アマテラスの言葉に、俺たちは顔を見合わせる。
「私は無理」
「私はそもそも、魔法の適正ないし……」
「じゃあ、俺だけか」
俺たちは会話を終え、俺は小さく挙手する。
「ダリア様ですか。……ああ、それなら、貴方が今日会ったあの人を勧誘してみてください」
「あの人?」
「えっと、あの人ですよあの人……」
俺が聞き返すと、アマテラスは答えにつまり、うーん、と考える素振りを見せる。
アマテラス、しっかりしてるように見えて意外と抜けてるのかもしれない。
「確か……マリー!」
パンもケーキもないです。ってか、もしかしてあいつのこと言ってんのか?
「いやいや、アリスだろ」
ヤマタノオロチが名前を出すが、それ作者だからな?
「マ○サじゃなかったっけ」
アマテラス、あの人はマ○パ撃たないです。
「いやいや、マ○オだろ」
キノコででっかくなんないです。ってか、ヤマタノオロチは半分ふざけてないか?
「ナリアだっけ……?」
アマテラス、それウチのお父様のメイドな?
「キャリア?」
なんで仕事に逸れるんだよ。
ってか、そろそろ言ってもいいかな?
「マミアか?」
「「それだ!」」
俺の解答に、アマテラスとヤマタノオロチは大声を上げる。
ってか、やっぱりそうだったか。
薄々感づいてはいたんだよな。
マミアっていうのは、昔仲良くなった女の子(第3話参照)だ。
あの時、マミアにあげたペンダントを近づけた時のように、俺の手の甲が緑色に薄っすらと光っていた。
まあ、俺の手の甲が光ったのはアマテラスが呼び出したからかもしれなかったから、半分勘だったけどな。
「マミアは、聖癒のギフトを持っていたはずです。あとは、吸収、付与魔法が王級ですね」
それはいいんだが……どうやってあの娘をパーティに引き込むかなー……。




