小話『受付嬢の1日』
今回かなり短いですが……まあ、許してください。
エルガ王国の首都、エルガス。
そこは、魔大陸を除いた世界で4番目に大きな国でありながら、世界最大の国を繋ぐ交易路の国の首都として、時には人で、時には物で溢れかえる。
エルガスの冒険者ギルドは、世界の中で4番目に大きいと言われる。
1番大きな物は冒険者ギルド本部のある世界で最も大きな北の国、イエスト王国にある。
イエスト王国は異常な勇者信仰者で溢れると言われる、恐ろしい国だ。
ちょくちょく真勇者を呼び出し、あるいはその巨大な戦力で他国を威圧し、勇者集めて信仰の対象として祀りながら、日々の国力の増強に励んでいるという。
2番目に大きな冒険者ギルドがあるのは、旧本部の置かれていたアシュラ帝国だ。
エルガ王国の南に隣接するこの国は、過去、最も栄えた国として、同盟を取り仕切りながら世界中の技術を盗み、成長しているらしい。
けど、その実は人間至上主義の蛮国として、他国から忌み嫌われている。
アシュラ帝国も全ての技術を盗めるわけじゃないし、イエスト王国のコンクリートやアスファルトはイエスト王国ともう一カ国以外では製作方法がわかる国がいない。
自動車の技術は世界中に伝わっているが、レベルの高い馬の方が速い。
まあ、自動車にもそれなりの利点があるんだけど、それはイエスト王国以外の国では理解されてない。
3番目に大きな冒険者ギルドは、エルガ王国から見て西にあるアラ神国だ。
勇者信仰をしつつ、アラ神国の創設者アラを祀る、不思議な国だ。
複数の信仰があり、資源もとにかく豊富。
二十年前に人民の大増加があり、仕事と人民、資源にあふれる、今現在ネオスで最も幸せな国と言われている。
そのおかげか、勇者の滞在歴もイエスト王国に次いで2番目に多い。
独特の風習があり、他国からの移住者も多く、そのおかげでイエスト王国を除いて唯一コンクリートの製造法を知っているらしい。
アラ神国は、アラとムハという2人が協力して創り上げた国らしいけど、ムハという人はほとんど表舞台に立たない。
そして4番目は、このエルガ王国だ。
他国にもたくさんの冒険者ギルドがあるので、4という数字はそこまで悪くない。
私はそんな、他国から見ると中々いいエルガ王国の冒険者ギルドで、今日もシフト制で当番になった一日を過ごすのだろう。
そんな、いつも通りの1日になるはずだった。
「おぅおぅにーちゃん、可愛い娘連れてんじゃねーの?」
ああ、またか。
連日冒険者ギルドに入り浸っては、新参者から金を巻き上げるC級冒険者が、今回も新しい冒険者に絡んでいる。
私が急いで止めに入ろうとするが、その必要はなかった。
「掃除終わり!」
なんと、新しい子がC級冒険者をたった一人で倒したのだ。
その後、新しい冒険者の子が受付に来たところで、背後にいた有名人も視界に入る。
『S級冒険者、ヴォール・グロウレンジア』
通称、剣壁のヴォール。現在は解散しているS級冒険者パーティ『龍印の鼓動』にて、魔法を封印する魔眼とその盾、剣裁き、剛戦王の先天性スキルを活かしたタンクとサブアタッカーを務めている。
なるほど、彼の紹介だから強いのか。私は若干驚きながらも、冒険者ギルド支部長を呼ぶ。
支部長は元冒険者で、龍印の鼓動と何度か共同で迷宮攻略もしていたハズだ。
積もる話もあるだろうと聞き耳を立てていたが、案外すぐ終わってしまった。
『俺は行くから』という言葉と共に、木製の扉を開けて出て行ってしまった。
私は若干がっかりしつつ、登録用の書類の記入を進めていく。
「では、10分後にこちらにお越しください」
私がそう言うと、冒険者の子が去っていった。
だが……それだけでは、今日は終わらなかった。
「おねーちゃん、この依頼を受けられるかい?」
「ええ……えぇえ!?」
別の冒険者に差し出されたのは、赤紙の依頼用紙。S級以上の冒険者限定の、極悪依頼だ。
「こちら、S級以上の方限定の依頼となりますが……」
「ああ、ホレ」
その冒険者に渡されたのは、確かにS級以上の冒険者の資格だった。
私がチラリとその冒険者の顔を見る。
その人は、過去に一回だけ見かけた、SS級冒険者。
種族は超長耳族と呼ばれる、槍を持った魔法戦士。
過去に、真勇者として名を馳せ、今やどんな冒険者に関する本にも必ずと言っていいほど出てくるヴォール以上の有名人。
突然現れた赤紙の冒険者に、喧騒の激しい冒険者ギルドもシーンと静まり返る……いや、彼のオーラがそうさせているのかもしれない。
オーディンと呼ばれる真勇者。
彼ならば、赤紙の依頼内容もうなづける。
『神忌王・ロキの討伐』
これが、単純な依頼の内容。
そして、世界そのものを揺れ動かす大事件に発展する、予兆の概要だ。




