第10話『俺は鳥の王国の王者になってしまいました』
「う、ウワアアアア!!!!」
俺は、鳥……というか、古代龍神に連れ去られること6時間弱。
もはや、エルガス城のあるエルガ国のエの字も見えない。
山をいくつ越えたか……速すぎて数えられないくらいの速さで、夜まで飛んだのだ。
おそらくエルガ王国に、数時間かけて飛んできた道を、しかも徒歩ですぐには帰ることはできないだろう。
いや、そんなことはどうだっていいんだ。
ケツァルコアトルスの巣の上に落とされた俺は、ケツァルコアトルスのつつきを転がってかわし、体勢を立て直す。
「くっ、くそっ!」
俺がレーヴァテインを構えると、ケツァルコアトルスは剣を見て……頭を垂らした。
「え?」
「ぐ、ぐぅあああああ」
ケツァルコアトルスが俺に何かを喋り掛けると、それが翻訳されて俺の脳内に伝わってくる。
『我々はお前を待っていた、真勇者』
「……真勇者?」
『ああ。唯の勇者は、この世界に巣食うゴミとなる。しかし、過去の盟約によって、我々は真勇者、真魔王にのみ、力を貸すことを定められている』
「……真勇者、真魔王……」
俺がボソッと呟くと、ケツァルコアトルスは人間……いや、人型の獣人(翼有り幼女)に変身する。
「ああ、この姿はやはり窮屈だ。我が名は、ケツァルコアトルスの長、モモ」
も、モモ……? まさか、名付け親は文鳥でも飼っていたのか……?
っていうか、モモって、幼女で話し方……まさかロリバb……ゲフンゲフン。
「貴様、今妾を愚弄したであろう」
「し、してねぇしてねぇ。それより、真勇者ってなんなんだ?」
「そこから説明せねばならぬか? むう、仕方ないのう。真勇者とは即ち、イザナギの血を強く受け継ぐものじゃ。汝らの世界でいう……そうじゃな、『純血』、『本家』、『直系』とか言った言葉に当てはまるかのう」
「普通の勇者とは、何が違うんだ?」
「普通の勇者は、イザナギの血を持つがそこまで濃くない者じゃ。分家、と言えばよいかの。皇の血をそこまで継いでない分、戦闘力や心、頭脳など、真勇者には大きく劣るのう」
なるほどな……要は、俺が勝ち組ってことか。いや、でも一概には言えないよなぁ……。
「そうじゃ、何かあった時にこれを渡しておこう」
そう言って、モモが俺に渡したのは、紫色の瘴気を放つ宝玉だった。
この感じ……ヒュドラの核か。しかも、保存状態がかなりいい。これを使えばヒュドラの力を持てるようだな。
「くれぐれも、安易な考えで使うでないぞ? その宝玉は、使用者の心と体を支配する過去のゴミが創りだした遺物じゃ」
「お、おう……」
モモがさっきから勇者を『ゴミ』だとか色々言ってるが、過去に何かあったのだろうか?
「そんなことどうだって良かろう。所で……これから妾達、古代龍神が過去の盟約に従い、妾たちの王として真勇者の心と体、あとは頭脳を育てることになる。明日からハードになるから、今宵は寝ておけ」
「ん……ああ。お言葉に甘えさせてもらうよ」
俺はアイテムボックスから寝袋を取り出し、比較的安全そうな洞窟を見つけてそこに就寝することにした。
◇◆◇◆◇
「ん……ふぁ……あー……眠っ……」
俺は、目覚めるも、寝袋の中でモゾモゾと動き、再び眠る。
「フレア・ボール」
「……熱っ! あつっつ、熱い! ナニ人が寝てる所に炎を放つの!? バカなの!?死ぬの!?」
「何、妾はこれしきでは死なんわ」
「俺が死ぬの! 炎って、人間を簡単に殺せるんだよ!? わかってる!?」
「あー、もう、わかったから落ち着け。飯ができておる、食うとよい」
最悪の目覚めの中、モモは俺にスパムを2つのパンで挟んだものを差し出す。
あ、普通に美味い。……俺は食いながら、昨日の会話を思い出す。
……寝ぼけてたが、俺が王としてって言わなかったか!?
「何じゃ、随分と今更な質問じゃのう」
「……ってかさ、モモって人の心を読める能力でもあんの?」
「何、その程度は神やそれに準ずる者には標準装備じゃ」
標準装備って何だよ! 人の心が読めるのが普通って、聞いたことないわ!
「何、そう怒るでない。妾達だって、人の心を好きで読んでいるわけではないからのう。それよりお主には色々と聞きたいが……お主、夢見の能力をよく制御できるのう」
「ん? あ、ありがとう?」
「その夢見の記憶……人が死んだ記憶、何万年も生きる記憶もあるじゃろう?」
……やめろ、それ以上言うな。
「その記憶はある程度抜けているようじゃが、それでも何兆年……いや、何千兆年の記憶がある? その膨大な記憶をたった一つの脳で制御できるその技量は流石じゃが……」
やめてくれ! もう、喋るな!
「お主、何ができる? 何を感じられる? 答えて見せよ」
夢見の能力を得ると、ステータスと記憶の他に、もう一つ得る物がある。それは、膨大な記憶の副産物……
「……俺には、人の魂が見える」
「……やはりか……」
モモはそう呟くと、剣を創り出して、俺に手渡す。
「それは、黒き混沌の魂を視界から外す剣。まあ、フィルターの役割を持つ剣じゃ。その剣は魂を切る。その剣……『三千世界』を使いこなしたのは、この世界でただ一人、生死の魔法を操る魔導師ゼロ……過去の真魔王と言われておる。その剣と真勇者、真魔王には、とある使命が課されている。即ち……この星を救うことじゃ」
俺はそう言われながら、三千世界を手に取る。
ズッシリと重く……それでいて、手に馴染んでくる。
三千世界の攻撃力は、レーヴァテインよりも上だ。
なるほど、世界最強の剣か。
「……まあ、重い話はここまでにして、特訓を開始するぞ! そうじゃな、特訓をしている間は敬語じゃ!」
「ああ! ……じゃなかった、ハイ! ……ところで、モモって人間形態でも強いのか?」
「試してみるか?」
俺はモモの翼の攻撃をバク宙でかわし、レーヴァテインで翼を攻撃する。
「その程度!」
モモはそう言って、翼の骨で受けると、強烈な蹴りを俺にお見舞いしてくる。
「ウッ!」
「まだまだじゃ!」
モモはそう言って、氷の弾をいくつかモモの周囲に出現させると、俺に向けて飛ばしてくる。
ガガンッ、ジュッ! っという氷の弾がレーヴァテインに当たる音、レーヴァテインの炎で氷の弾が蒸発する音が聞こえ、湯気によって、モモの場所が見えなくなる。
「風撃魔法『失われた暴風雨・突風剣』」
モモがそう唱えると、広範囲に広がる風が一つに纏まり、湯気を吹き飛ばして俺を貫く。
その強力な風の流れは、俺の肩を貫いて……肩もろとも消し飛ぶ。
「うぐあっ!!」
モモは冷たい金属を俺の首元に当てる。
「これで、貴様と妾との力の差がわかったかの?」
「……ああ。悪かったよ」
「これくらい、よく言われるから構わん。まあ、今日の特訓はこれで終わりじゃの」
「……そうなのか?」
「ああ。村の方を案内してやろう」
「いいのか?」
「もちろん! 真勇者じゃからな!」
モモのニッという笑顔を見て、俺は洞窟を後にした。




