第9話『戦争はいかに頭脳を活かせるか』
魔王編は次話でラストです。
俺は、ライフゴッドに今さっき聞いた話を伝える。
「そっか……アマテラスとヨミに会ったんだ」
ライフゴッドは少しだけ嬉しそうにポツリと呟く。うーん……表情が読めないな……。
俺はライフゴッドと少し話をした後、忙しそうに働くハルム君を引き止め、今魔王城にいる戦争での指揮官を応接間に集めてもらう。
「悪かったな」
「いえいえ、それでは」
ハルム君が行ったのを確認し、俺は十数人いる指揮官の中心の机に、地図を置く。
「……よし、じゃあ皆、作戦を発表するから、よく聞いて。まず、ここ……アシュラ帝国が攻めてくるであろうエラウスのさらに西の平原を戦場として、最大限食い止める。残滅できるならそれでもいいけど、くれぐれも無理はしないこと。それで、アシュラ帝国内にちょっとした仕掛けを施したから、そっちに精鋭部隊を送る。ここで、アシュラ帝国は……滅ぼす」
元々は防衛戦の予定だったので、指揮官たちは俺の言葉に眼を見張る。
「大丈夫、仕掛けがあるって言ったでしょ? 西の平原には魔法使いを多めに配置して、アシュラ帝国を攻める軍には剣士などの近接戦闘できる兵が主体でいく。アシュラ帝国を攻める軍には……カフル、君が最高指揮官として動いてくれるかな?」
「ハッ!」
俺の問いに、カフルという若い吸血鬼の指揮官は大きな返事をする。
「あとは、ギルラとヨグ、君たちはカフルの下として、指示をだして」
「ヘイッ!」「定年間近じゃが……魔王様の指示とあらば」
ギルラという見た目40歳くらいのタイの魚人と、年をとった痴魔(雄)のヨグが、俺に応える。
「防衛軍には、私が直々に指揮をとらせてもらう。おそらく、残りの勇者も魔王討伐に乗り出すだろうし」
俺の言葉に、指揮官達はザワザワと騒がしくなる。
「勇者だけは私が仕留めるが、君たちは気にせずに軍隊を倒してくれ」
……まあ、一方的な制圧戦になるだろうけど。
◇◆◇◆◇
俺は下準備のために、エラウスにきて、さらにあの酒場に立ち寄った。
「お前さん、また来たのか」
「ああ、ちょっと事件があって。そうそう、ここら辺はその内戦場に近くなるから、早めに退避したほうがいいと思う」
「おいちょっと待て、戦場ってどういうことだ」
「アシュラ帝国が攻めてくるのは知ってるだろ? 地理的に考えて、ここをおそらく通るんだよ。一応エラウスは巻き込まないつもりではいるが、一応避難しとくのが無難だろうな」
「なるほどな……」
店主はそう言うと、少し考えていたようだったが、少しして顔を上げた。
「ところで、注文はどうするんだ?」
「ああ、前回と同じで」
俺は少しして出された赤ワインと激ウマステーキを頬張り、店主に前回と同じ値段を払って店を後にする。
「……よし、やるか」
俺はエラウスから少し離れた所(西側)に移動し、ロストアースを地下深くまで発射し、剣士などが近寄れないくらいの距離と長さの、巨大な谷を作る。
これで、魔法使いが主体となる防衛軍がかなり有利になるはずだ。
人間側に転移魔法の使い手がいたら無理だが、魔法使いがいなければなんともできなくなる、そんな状況が作れればそれでいい。
俺なら広範囲の魔法妨害が使えるからな。
……っと、考えていた所で人間の軍隊が……馬に乗って現れる。
路地裏からじゃわからなかったが、アシュラ帝国、文明レベルはやはり中世くらいなのかな?
ま、今はどうだっていいだろう。
ちょっとゆっくりしすぎたか……と後悔しつつ、俺は転移魔法でオールへと戻った。
◇◆◇◆◇
「よし、皆、気合い入れていくぞ!」
「「「オォォォォォ!」」」
魔王城で全兵に今回の作戦と状況を伝え、転移魔法でエラウスの西の平原に転移させ、号令をかけて兵士の士気を上げる。
ちなみに、魔王軍の中には戦場の状況を聞いて、見て、「なんだこれ……」って言ってたな。次回からはちゃんと全兵に連絡してからにするか。
どうやら敵方に転移魔法持ちはいないようで、まだ攻め込まれてはいない。
「隊列を早急に組み、魔法の準備!」
魔法使いたちが実力によって均等に配置され、俺の魔力は減るが、発動した巨大な須佐男障壁に敵の魔法から守られながら火炎魔法や、加速魔法のかかった矢が放たれる。
向こうも障壁魔法や弓矢で対抗しようとするが、こちらの魔法は高威力なので数秒で障壁が消えてしまう。
障壁魔法は消費魔力が多い魔法の一つなので、連発はできないだろう。
そんなこんなで一方的な制圧戦になっていた所で、よく敵兵の士気が下がらないなと思っていると、一つのパーティが魔王国に乗り込んできて、一気に魔法使いたちが倒される。
それを止めようと、小隊長、中隊長クラスの魔法剣士が向かうが、俺はそれを号令をかけて止める。
「隊列を乱すな! 私が行く!」
それだけ言うと、俺は須佐男障壁の時間制限を一時間にして、一度魔力を切り離す。
あ、やべェな、魔力切れ(魔法の発動によって魔力が足りなくなること)起こしそう。
俺は立ちくらみを無理やり抑え、残りわずかな魔力をアイテムで急速補給する。
「デュランダル! ルト! いくぞ!」
俺の言葉にルトとデュランダルは反応し、ルトが闇魔法でパーティの中心メンバー以外を拘束し、デュランダルは俺の手の中に収まる。
「くっ! バインド!? バインド耐性高めてんのに、どんだけ高位のバインドだよ!」
「グラゥ!!」
ルトはさらにメンバー達を威嚇し……脱力の魔法をかける。
「くっ……動けない……」
抗おうとするパーティメンバーを無視して、中心メンバーであろう男は俺に詰め寄る。
俺も毅然とした態度で男を待ち……口を開く。
「貴様、真勇者か?」
「……ああ」
真勇者は短く返すと、俺に何処からか取り出した剣で斬りかかる。
「それは……」
『おい、あれは神具だ! マジでヤバモン! 俺だと折れちまうぜ!』
俺はデュランダルにそう言われ、咄嗟に上体を後ろに反らして回避する。
「流石、魔王ですか。我、イザナギの力、天地の裂け目にて、行使せん」
真勇者は短く詠唱すると、俺に刀を振り下ろす。
あれ? さっきは大剣だったような……って、そんなのはどうだっていいんだよ!
「障壁を張ったのもあなたですね」
「そうだが?」
俺はそれをステップでかわし、開いた隙にデュランダルで横に斬りつけ……何コレ、影か!?
影がデュランダルに触れると、デュランダルはどんどん朽ちていく。
『おい! ちょっとコレガチでヤバいんだが!? コレ、魂吸竜と鋼鉄竜の性質を同時に持ってる!』
「なら!」
俺はそのままデュランダルを押し込んで影を斬ると、デュランダルは再生し、影はダラン、と動かなくなる。
「……やりますね。俺の渾身のガードだったんですが」
「知るか!」
俺はそのままデュランダルを空間魔法でアイテムボックスに格納し、神格化のスキルで俺の腕に黄泉の冷たさと厄災を纏わせ……思いっきり殴る。
「ぐっ!?」
厄の力をそのまま受けた真勇者は、その場に膝をつく。
体の一部が凍りつき、そのまま動けなくなった勇者を、ツクヨミとアマテラスの元に、転移魔法で送り届けた。




