第6話『夢に生きすぎた魔王』
今回、前半は鬱っぽくない鬱展開、後半は政治始まります。
俺は気づけば、そいつを魔大陸一の危険な森に捨てていた。
「……アシュラ帝国を敵に回す気か!? 放せ! 悪魔モドキが!」
事の発端は1分前、俺がのんきにエラウスの町の付近を散歩していた時だった。
「ほう? その悪魔モドキに負けた貴様は何モドキだろうな?」
偶然……そう、偶然だ。
四人の……敢えて形容するなら勇者のハーレムパーティが、首が半分切れ、腕の切り落とされた魔族に対し、火のついた棒で殴ったり、蹴りつけたりとヒドい仕打ちをしていた。
「何をしている?」と声をかけた時にはもう遅く、その魔族は胸の心臓を貫かれ、死んでいた。
魔族は、胸にあるコアと呼ばれる臓器を破壊されると、魔力が足りなくなって死んでしまう。
「別に? 悪魔退治……だけど? あ、君も僕の仲間になる? それとも死ぬ?」
このパーティのリーダーであろう唯一の男が、俺に剣を突きつけながら聞いた。
俺は剣を魔法で折って、男の首を掴んでいたってわけだ。
「……放せよ、悪魔モドキが」
「……モドキかどうか、試してみるか?」
「撃て!」
俺が男の首を掴んだまま話していると、男は叫び、それを合図に他のメンバー達が俺に銃で撃ってくる。
受けた銃弾……十六発。ダメージ、ゼロか。くだらない。
俺は男を放り投げ、女共の首を折っていく。
「「キャアァ!」」
「メルファ! シエル!」
……なんだあの奥の女、俺を撃ってないな……?
「貴様……! 貴様、よくも俺の仲間に!」
仲間か……あれが? ただのいいなりの脳無しじゃなくて?
「仲間……ねぇ。そうには見えなかったが……」
「それ以上喋るなァ!!」
男はそう言うと、大剣……いや、あれは……聖剣エクスカリバー!?
なんでこの程度の雑魚が持ってんの!?
いや……魂剣は自分の意思で主を選ぶけど、無理矢理繋がれているとかか?
「聖剣か、貴様には似合わん。聖剣も貴様に使われるのは苦しかろう。我が解放してやる」
俺は男の0ダメージ攻撃を無視して、詠唱を開始する。契約を解除する魔法だけは無詠唱で行えないんだよなぁ……
「我、天に反する者、冥月の理を読み解き、地脈の力を解放し、かの剣に抗う力与えん。
特殊魔法『契約解除』」
俺が詠唱を終わらせると、男によって俺に斬りつけられていた剣が、突如動きを止め、光となって消えて行った。
「何が……何が起こってるんだ!? くそ……くそくそくそくそ! 貴様、何をしたァ!」
「……貴様こそ、聖剣に何をしていたのかは知らないが、あの程度の契約でいい気になるな」
俺は殴ってくる男の拳を掌拳で受け止め、蹴りを入れる。
そこからはもう、一方的な作業だった。
最後に転移魔法を使おうとした時は呆れたがな。
結局男は白竜と呼ばれるドラゴンの住処である、巨大な森の真ん中に、あの奥にいた奴以外の女共の屍体と共に放り込んでやったが。
途中で男が「アシュラ帝国が許さないぞ」とか言ってたが、その時は関係ない。アルドット魔界国全勢力をもって、アシュラ帝国と全面戦争だ。
……そういや、なんでこんな虐殺事件起こしたんだっけ……ああ、あああ! あの男だ! ど、どうしよ……
◇◆◇◆◇
「……」
結局、ダメだった。
魔族は、コア以外の臓器なら魔力でなんとかなるが、コアだけはどうにもならない。
「……私なら、その人、助けられる」
突然奥にいた女が、俺に喋りかけた。
「その代わり、私は死んじゃうけど……」
……は? 何を言っているんだ?
「……何を言っているのかよくわからないって顔してる……。私は魂の輪廻を司る神、生命神」
……ライフゴッド? そりゃまた大層な名前がついたな。
「私の権限を駆使すれば……人を無限に生み出すこともできる」
……なるほど、その能力の一つが生命蘇生か。ただ、どの権限を行使するにしても、代償が必要なわけか。だが……命の交換ってのは、あまりにも重すぎるな。
「人のために死のうとするな。これが、この男の運命だ。あんな経験をした後では、その後の人生など……生き地獄だ」
ああ、ダメだ。思い出すな、あんな醜悪な時間など、全て消えてしまえ。
あの事を知っている人間なんて、この世界にはもう誰もいないんだ。
「……山田 通」
突然呼ばれたその名前に、俺はビクッと肩を揺らす。
「奴は強奪の能力を所持する、アシュラ帝国の勇者。その能力で聖剣との契約を強奪していた……」
くそ……まさかこの神……「あのこと」を知っているのか……?
「それ以上のことは、よく知らない……。でも、君……真魔王も注意しておいた方がいい……。アシュラ帝国はイエスト王国、アラ神国と同盟を結んでる。イエスト王国には真勇者もいる……」
真勇者……俺と対になり、世界をまるごと変える為に俺と共に歩む勇者だったが……世界を変えるってのは今の権力者達にとって邪魔なわけか。だからこそ俺を勇者とぶつけて、勇者と俺の共倒れを狙って伝承を知らせず、無駄な戦いを行わせるわけだ。
「 ……今は一回城に帰った方がいい。ついて行っても……いい……?」
「ああ、是非そうしてくれ。……とりあえず、この男は供養しておこう」
俺は、エラウスの街に戻り、聖職者に男を渡した。
「了解いたしました、この体の主も冥獄にて喜んでいることでしょう」
「じゃあ……な。救えなくて悪かった」
「いえいえ、とんでもない。この体の主の知り合いには、私から伝えておきましょう」
「そうか、助かる」
俺たちはそう言って、教会を後にする。
「転移・アルドット王国中央部、『魔城オール』」
俺は転移魔法を唱え、対象に俺と女を選択する。
その途端、光が俺たちを包み、魔城オールへと移動した。
◇◆◇◆◇
「おかえりなさいませ、魔王様。心配しましたよ?」
ハルム君が一番に俺たちを迎え入れてくれた。
「そちらは?」
「私か? ……神だ」
「説明、雑っ! 生命神だ。成り行きで城におくことになったから、部屋の手配を頼む。 ……ああ、それから、早急に『魔王政府外交部』を設立し、外交官を用意してくれ。」
「外交部……ですか?」
「ああ、これより我が国は開国し、オルポー王国と貿易を行いたいと思う。」
「なぜ急に?」
「手遅れだから……だな。鎖国していると、色々足りなくなってくるんだ。今度大規模な土壌整備を行うが、今はそれはまだいいだろう。とりあえず今は、オルポー王国に手紙を出す。
内容は『魔王国の開国』と、『貿易を行いたい』という二つで、人の移動は基本的には無し。代表の立会いの下、商品を交換する。
金銭関連は万国共通だから問題ないよな?」
「ええ、金剛金貨を最高額に、全て金銭の価値は万国共通のハズです」
「よし、今言ったことを早急に手配してくれ。大変だろうが、期待しているよ」
俺はハルム君に指示を出し、ハルム君がいなくなったのを確認すると、生命神を客間に案内して、転移魔法を唱える。
理由はさっきもポロッと言ったが、土壌整備だ。
「転移・エラウス」
俺を白い光が包み、俺はエラウスに転移した。




