第3話『ドラゴンファーム』
間話の方に、ステータスについて書き加えたので是非確認お願いします。
「魔獣が現れました!」
「嘘だろ!? これで何回目の襲撃だ!!」
俺たちの眼下で、また一つの冒険者パーティーが鎧犀獣『リノ』の突進の餌食にあっている。
「なあ、あれでいくつめの被害だ?」
「さぁな……細かい数は数えてない。大体100は越えたんじゃないか?」
俺たちは今、アリュシアに向けて移動中だ。
男を釈放して、アリスを追い出した後、ハルム君の恐るべき手際によってすぐに俺にアリュシアに向かう日時が伝えられた。
アリュシアへの移動が開始される前までは、ハルム君に上手くいかないことを色々教わったり、 魔法の特訓をしたり、戦闘訓練したり……俺は戦闘狂か! っていうレベルで戦いの訓練ばっかりしてたな。
まあ、なんやかんやで当日になり、ハルム君に渡された服を着て、空を飛ぶ魔獣『首領・プテラ』に乗って移動中だ。
名前? 気にしたら負けだ!
ああ、そうだ、今回の旅はアリュシアの族長サンも一緒に来ることになった。
まあ、当然といえば当然か。
「魔王様、アリュシアの町が見えてきました」
「お? ……あれか。なんか、リノがいっぱいいるんだけど?」
「おそらく、アリュシアは現在リノが支配しているのでしょう」
それでか、ここら辺で魔物が増えたっていう報告が多かったのは。
さっきもリノと戦っている冒険者がいたし……リノは中型のBランク魔獣だし、普段はおとなしいからあんま問題視されてなかったんだな。
「おい、アリュシア近辺にリノが増え始めたのって、いつからだ?」
「そうだな……二ヶ月前くらいだ」
……そろそろ、リノ王の誕生の時期だな。
「ハルム、戦闘準備しといてね?」
「了解です」
俺は次元魔法で別次元に保管してある装備一式を取り出し、装備する。
リノ王は、リノがそのままでかくなったような姿だ。
アリュシアの町のど真ん中で餌をゆったりと食べる様は、まさに王って感じだ。
「ハルム、リノ王の真上でプテラから降ろして」
「わかりました、いきますよ?」
プテラがリノ王の真上で滞空すると、俺は思いっきり飛び降り……リノ王に大剣を突き刺す。
「グアアアアアオオオオオオオオオ」
リノ王が悲鳴をあげるが、俺は気にせずそのまま刺さった剣を片手で掴み、『人形技術・巨拳』で片手を岩の大きな拳に変え、剣を放すと同時にリノ王を殴り飛ばす。
「グゥゥゥウオオオオオオオオオ」
リノ王は少し吠え、やがて硬直したかと思うと、リノ王の背中がパカリと割れ、中から巨大な翼と堅い鱗、そして盾のような頭と鼻から伸びる鋭いツノを持つ、Sランクに指定されている黄金色の鎧犀竜『リノヴァース』が羽化した。
「魔剣『テュランダル』!! 契約するぞ! 体の所有権を一時的に貴様に託す! その代わり、この体をお前の意思で傷つけることは一切許さない! その際、真魔王、及び貴様の主の権限で貴様の力を全て我が物とする!」
『……リョウカイシタ』
俺がリノ王の抜け殻から剣を抜くと、剣の魔力が俺を侵食してくる。
やがて、俺の魂は剣の中に入り、剣に封じられた魔王の魂は、俺の体を支配した。
「おい! 羊! これは何が起こっているんだ!」
まったく、あの族長、今回はよく喋る。
……まあ、ハルム君が解説してくれるだろう。
「これは……『身体代行』です」
「身体代行?」
「ええ、この世に数少ない、魂を持つと言われる『魂十二装』。それらの中に封じられた魔王、あるいは聖王と様々な条件のもとに『契約』することで魂を入れ替え、その魂の持ち主に自分の体で戦わせるモノです。
身体代行のメリットは2つ。
一つは痛みを感じずに戦い続けること。もう一つは、魂が持っていた技術をそのまま体に反映させられることです。
逆に、デメリットは身体代行が終わった後の相当な体への負担です。
身体代行の時間中に受けなかったあらゆるダメージ、回復を身体代行が終わった直後にまとめて受けるので、体にかかる負担も異常値になります。……が、デュランダルはあのエクスカリバーと並ぶ魔剣、魂の戦闘力も他とは比になりません」
うん。さっすがハルム君、これで戸惑っている族長サンも大丈夫だろう。
『ハハハハ! 流石、真魔王の体ダ!』
デュランダルは快感そうにそう叫ぶと、突進してくるリノヴァースのツノを一瞬で切り落とす。
……俺、剣の中に入ってるが……なんか、変な感じだな。
グラグラしたり、視界がおかしくなったりは……してない。
『コレダケノ力ヲ、ドウシテアイツハ活カセナイのカ!』
うん。完全に俺の技術不足です。ごめんなさい
そんなこと言っている間にも、デュランダルは素手でリノヴァースの盾を貫く。
『ハッ! サヨナラダ!!鬼竜剣[閃]』
デュランダルは一太刀でリノヴァースの首を斬り落とすと、リノヴァースは前のめりに倒れる。
どうやったらここまでいけるかな……
『終ワリダ!』
「ああ、ありがとう、悪かったな」
『ソウダ、帰ッタラ特訓スルゾ!』
「わかったよ……ん?」
『何カ有ッタカ?』
「これは……」
『子供コボルト、だな! リノヴァースの住み着いた場所で生き残ったのか……』
「おい、カタカナじゃなくていいのか?」
『疲れたから、もういい。それよりこいつ、見所あるな!』
「おいおい……まあ、お前がそう言うなら素質があるんだろうけど……」
この世界のコボルトは、二本足で歩く魔物ではなく、完全に犬だ。
だが、性格は獰猛、群れになればほとんどの食物を食い尽くし、冒険者にとって追い剥ぎで知られる、冒険者が群れで会いたくない魔物系統ランキング(冒険者ギルド調べ)トップテン入りを果たしている、恐ろしい魔物だ。
そんなコボルト系統の弱点は、単体での戦闘力の低さだ。
素早さと攻撃力はあるが、それでも中の上程度。
反射神経が良い戦士なら、ノーダメージで5、6匹の群れを軽く蹴散らせるだろう。
コボルト単体での攻撃力は、致命傷には及ばない。
しかし、群れとなると、どうだろうか。
1匹の威力は低いが、並の冒険者なら2、3回攻撃を受けると、次の攻撃で致命傷になる。
そんな、群れが強いコボルトだが、蜂や蟻のように、非常に社会性に富み、雄の王を主体として、狩り部隊、子育てと、群れ全体の中で役割が決まっていることが多い。
そんなコボルトの、しかも子供が単体でいることは、ほとんど有り得ない。
コボルトが群れから追放される、原因は2つ。
新たな群れの形成と、身体の欠陥だ。
おそらくこの子は、後者か、群れがリノ軍団によって壊滅させられたか、ハグレだろう。
俺がコボルトを抱き上げると、コボルトはウルウルした目で、俺を見つめる。
「か、カワイイ……」
しかし、動物の可愛さというのは、人を癒す。アニマルセラピーというのも、現代日本には存在していた。この子を見ていると……身勝手だが、この子の事情は関係ない、と感じる様になった。
『オウオウ、こいつ、雌だな! 人化の素質もあるし……』
「まあ、飼ってみるか」
『名前、どうするんだ?』
「そうだな……コボルトだから、ルトってのはどうだ?」
『安直! ……だが、いい名前だと思うぜ!』
「んじゃ、決定。ルト、来るか?」
「ワン!!」
こうして、俺はコボルトの子供、ルトを飼うことにな……
「ダメです!!」
「は? なんで?」
プテラに連れて行くと、ハルム君にソッコーで怒られた。
「コボルトっていうのは、ケルベロスに神格化することもある魔物なんです! 簡単に飼わせるわけには……」
ハルム君が説教をしている、その時だった。
「ギャァァァァァゥゥゥォォォォオオオオオ」
先ほどのリノヴァースとはまた違う、二体目のドラゴン……鎌のような特殊な手を持つ、『デスサイズドラゴン』が俺たちの目の前に落ちてくる。
天空には、デスサイズドラゴンと争っていたのであろう、三体目のドラゴン、天双頭龍『ヘルヘヴン』がゆっくり下降してくる。
「ここは竜牧場か!?」
俺が叫ぶのもつかのま、デスサイズドラゴンが両手の鎌を俺に振り下ろし、俺はそれをデュランダルで防ぐと、高い金属音が鳴り響き、俺は無理やりデスサイズドラゴンの鎌を押し返す。
「『魔剣技・混沌ノ剣』」
俺はすかさず一瞬の隙をつき、スキルでデスサイズドラゴンの胴体を真っ二つにする。
『ヒュー、やるじゃねえか!』
「ありがと! 次はヘルヘヴンだ!」
俺がヘルヘヴンの後を追うが……ヘルヘヴンは口から様々なブレスを吐いて攻撃してくるタイプの魔物だった。
体の鱗などは、そこまで頑丈じゃない……ハズだ。
……ここから押しつぶせるかな?
「中級土魔法『岩砲弾』」
使うのは岩砲弾だが、サイズはヘルヘヴンの3倍、それを真上から高速で落下させる。
なにかに当たれば爆発する仕組みにもなってある。
「グギャァァァアアアア!!」
「あっぶね!」
ヘルヘヴンが岩砲弾に押しつぶされ、さらに岩砲弾は巨大な爆発を起こす。
「おい!! ここがアリュシアだってこと忘れんなよ!!」
族長が抗議するように怒りながらこっちに来る。
うん、これは考えなしにやった俺が悪い。
まあ、家の中とかにも確認した限りでは誰もいなかったし、大丈夫だろう。
……しっかし、すげぇ威力だなぁ……
……はい。もう誤魔化しません。現実見ます。
俺の傍に座るコボルトだったものがクゥーンと甘えた声を出す。地面には、黒く焼け焦げたクレーターがここからでも確認できた。
そして、コボルトも変化を起こしている。
コボルト系統の中で、コボルトが特殊な条件の中、クリアすると起こる現象……それは進化。
「コボルトは一回り大きくなり、体もがっしりとしている」
「魔王様、コボルトを育てちゃったんですね……?」
俺は、背後から聞こえるおぞましい声に顔を引きつらせながら
「ごめんなさい」
と言うので精一杯だった。




