第2話『若き魔族の長』
今回、茶番入ります。
「ふぁあーーぁぁ。疲れたー」
「お疲れ様です、魔王様。」
俺がベッドにぐったりと倒れ込んでいると、羊さんが労いの言葉をかけてくれる。
「そういえばさ、あの男って、どうなった?」
「あの男……と申しますと、最初の襲撃犯ですか?」
「うん」
「現在、地下牢獄にて投獄されているはずですが……?」
地下牢獄だな。色んな場所から集まった、謁見の人ラッシュの空き時間中に場所は確認しておいた。
「んじゃ、ちょっと会ってくる」
俺がそう言うと、羊さんは引き止めるわけでもなく、苦笑いをして
「お供しましょう」
と言ってついてきてくれた。
やっぱ羊さん、すごい良い人だよなぁ。
俺に同性愛の趣味はないし、もちろん恋愛対象外だが。
「魔王様、一つ注意事項が」
「んー? なに?」
「地下牢獄では私とあの男以外の投獄者には、決して話しかけないでください」
「ほうほう」
「特に、最奥にて拘束している魔人『ネクロマンサー』は極めて危険な男です」
死者を操る悪魔ねぇ……確かに危険そうだよな。
話しかけるのも危ないってことは、何か死者以外にも操れるのかもしれない。
「了解」
「着きましたね」
俺と羊さんは、石でできた大きな扉の前に立っていた。
「入りましょう」
羊さんがそう言って、扉に手を当てる……すると、扉はバラバラのブロックになり、石の階段を形成する。
「精霊魔法〈光妖精〉」
真っ暗で何も見えない階段を、羊さんが魔法で明るく照らす。
「おー、明るいねぇ」
「アハハ……やっぱり、魔王様」
「ん?」
「貴方は、どちら様です?」
その瞬間、楽しかった雰囲気が、一瞬で殺気に変わった。
羊さんと俺との間には、ピリピリとした空気が流れる。
その空気を壊さない声量で、羊さんは話を始めた。
「私たち、魔王に仕えるラヴァ一族と歴代の魔王にのみ、代々受け継がれる話があります。それは……『魔王が永き眠りから目覚める刻、魔王の魂は此の世に再臨す。しかし、此の世に勇者が生まれし刻、異界より新たな二人の王、生まれん。その王の一人、一度剣を奮えば、全ての者、薙ぎ払われん。その王の一人、一度物を想えば、全ての知、司らん』……あなたは、どっちです?」
この詩は……覚えがあるな。確か、俺の故郷で村の子供たちに爺さん婆さんが読み聞かせてたっけ。
確か……問答になってて、聞かれたら答えなきゃいけなかったんだ。
あの爺さん達がここまでキレイにそのまま残してたのは……驚いたけど。
「奇遇だな。俺もその詩、昔故郷で聞かされたよ。『我、異界より参らん、真の勇者に呼応する者なり。勇者が生まれし刻、悠久の眠りより目覚め、知力の全てを熾天に捧げん。我、真の王となり、真の勇者と共に歩まん』」
多分、これで合っているはず。確信はないけど……
「流石、あなたが真の王でしたか。であれば、問題ないですね」
……何が?
「申し訳ありません、我が主君『ララ・ミリュシュ』改め、『ララ・ミリュシュ・サタン』様。我が名は熾天の位を受け継ぎし魔族、『アルドット・ラヴァ・ハルム』と申します。以後、お見知り置きを」
「あ、うん。わかった。ところでさ、さっきの怖い雰囲気ってどうしたの?」
「あれですか? あれは取り決められた物の一つです。相手の魔王を確認する時、雰囲気や状況をなるべく静かにすべしと、議会で取り決めが行われました。そうですね……この力をあなたに差し上げます」
羊さん改め、ハルムくんが手に光の塊を出現させながらそう言うと、その光は俺の周囲を回るように回転して……弾け飛んだ。
「今のは、人の記憶を精霊に託す精霊魔法の一種です。記憶精霊と呼ばれる物で、これは主に魔法使いの記憶の引き継ぎなどに使われる魔法です。あ、術者に影響はないのでご安心を」
なるほど……なんかすごいな。
ハルムくんがなんでも出来すぎて……自分が情けない。
「魔王様、情けないとか考えないでください」
「え、なに? 頭の中読めんの!?」
「それがラヴァ一族の特殊技能ですから」
oh……妙に恐ろしいスキルでてきたな。
「では魔王様、先を急ぎましょう」
「ああ、もちろん」
俺たちは、ハルムくんに聞かれる前のような状況で再び歩みを進めた。
◇◆◇◆◇
「おい、起きろ」
「ああ? 何の用だよ」
「ちょっと聞きたいことがある。前置きはなしで行くが……お前、何処の村の出身だ」
「……アリュシアだ」
「なるほど……前回の魔導事故の被害を受けた村か」
「ああ……わかったら帰ってくれ」
どんだけコイツ、人のことが嫌いなんだ!?
……まあ、いいけどさ。
ステータス閲覧のスキルで確認したら、コイツ、アリュシアに住む魔族の族長だし。
「ハルム、すぐにアリュシアの難民の援助を。それから、アリュシアの再建、コイツは釈放でいい」
「かしこまりました。すぐに手配を」
「え……」
「これで満足か? アリュシアのカラフ族、族長『カラフ・レッド・アリュシア』」
ふー……とりあえず、南部の発展はアリュシアを基点にやっていくか。
昔から南部と中央部を結ぶ交易の町として知られている場所だし、反対する者には割と簡単に説得できる……と思う。
南部の方は魔力が不安定で荒れているって話だったが、俺の魔法でどうにかできるだろう。
それに、記憶だけじゃわからないことも多い。
「よし、それじゃあ俺は行くから」
俺はハルムたちにそう伝えると、転移魔法で自室へと戻った。
◇◆◇◆◇
「いやぁ……素晴らしい判断だったね」
「誰だ!!」
俺が自室に戻ると、そこには1人の女がいた。
魔族……ではないな。
だが、人間でもない。
「そんなにピリピリしないでよ、ボクの名前はアリス。不思議の国へと誘う役目を担う、神の1人」
不思議の国? なんだそりゃ
「悪いんだけど、君にはダンジョンを作ってほしい……ダンジョンマスターの権限を君に譲りたい」
は? ダンジョン?
「とりあえず、ついてきてよ」
「嫌だ」
「……え?」
俺が拒否すると、アリスは冷や汗を流す。
「だって不審者にはついていくなってははおやに教わったもん」
「いやそれ神様じゃないよね!? どう見たってお母さんだよね!?」
「母親で最高神だっているだろ」
「まさかのヘラ様!? いやそれ嘘つきまくりでしょ!?」
「嘘じゃなぁいよ」
「メー○ー出すんじゃねぇよ!! ピ○サー出すな! ファンタジーの超大手にはかなわないから!!
ってか、そのネタわかりづらいよ!!」
「おいこの人大丈夫か」
「お前がな!? と……とりあえず、一緒に、来て、もらおう」
「息切れてるぞ、大丈夫?」
「お前のせいだよ!!」
「運動不足だろ、自業自得ってやつだ」
「なんでだ!! この会話何行続けるつもり!?」
「どうも、ありがとうございやしたー」
「漫才じゃねぇし!! 終わんねぇから!!」
……。すごかったな……うん。
俺の思考が入る隙がなかった。
なんて……なんて怒涛のツッコミラッシュだ…….。
「なに『恐れ入った』って顔してんの!? 感動してる暇ないの!!」
「魔王様ー、大丈夫ですかー?」
「チッ! また来るから、それまでに考えとけ!!」
よし、作戦成功。
……アリスには気の毒だけどなw




