プロローグーー魔王目覚めましたーー
今回は別主人公!
ただしちょっと短い!
こういうタイプの転生モノ、難しい!
刻は夕暮れ、秋晴れの快晴に、心地よい風が吹いた。
俺の愛する人と共に、流れる川を眺められる土手を歩いている、その時だった。
「ドケッ!!」
「ドンッ」という衝撃と共に、2人で歩く俺たちの間を、黒いヘルメットの男が割り込み、駆け抜ける。
「誰か、その男を捕まえて〜〜!!」
後ろで偉そうな婦人が、その男を指差しながら叫ぶ。
俺はそれを聞き、同時に高そうな鞄を持つ、黒ヘルの男を追いかける。
「待てっ!!」
「ちょ、ちょっと!!」
俺を呼び止めようとする、俺の彼女……ユイを無視して、俺はヘルメットの男に飛びかかりーーヘルメットを上から地面に押さえつける。
「捕まえたっ!!」
「はなせっ!!」
しかし、男はジタバタと暴れ、やがて俺は振りほどかれ、そのまま土手を転がっていく。
「ウワァァァァァ!!」
指を地面に引っ掛けてブレーキをかけようとする……が、スゴイスピードで俺は土手を転がり落ち、河川敷の石で痛みを感じつつ、突然深くなった川に沈んでしまう。
「オボッ……」
この川、こんなに深いわけが……とにかく、まずは……水面に……
俺は下へと急速に流れる水に押さえつけられ、そのまま気を失ってしまった。
◇◆◇◆◇
「おい! 魔王様の誕生だ!!」
「警備を強化しろ!!」
「……なんか、騒がしいな……なんだこれ、狭っ!!」
俺は、若干明るい、この小さな部屋……いや、箱を、壁の薄っすらとした灯を頼りに触る。
「なんだここ……新種の治療マシーンか!?」
よく見ると俺の半身は液体に浸かっていて、胸や体に若干違和感があるが……明りが薄っすらで見えない。
俺はとりあえず、この箱から出るための出口を探す。
「……出口出口ーっと。……見当たらないなぁ」
どうしよう……仕方ない、この箱ぶっ壊せるかな?
俺は仕方なく、片腕に力を込め、思いっきり拳を振り抜く。
「眩し……」
バキッという爽快な音と共に壁が割れ、明るい光が差し込んできた。
「魔王様が、お目覚めだぁァァァ!!!」
「ゥオオオオオ!!!!!」
……うん。どうなってんの?
周りを見回すと、俺の側には異様なサイズの卵(残骸)と、蛇などの動物や虫の、体の一部を持つ人間|(?)……所謂、魔族。
更には、明らかに大きさや体のつくりがおかしい……言い方は悪いけど、イカれた動物……魔物。
……うん。俺、異世界に転移したのか?
あまりの驚きと疑問で、俺の頭ではたくさんの?マークが踊り狂っている。
例えば……どの魔族も明らかに女がいないこと。
魔獣はその限りでは無いけど、魔族達は柔らかな、弾力のある胸が全くない。
どれも黒く、ムキムキの胸……胸筋ばかり。
羊のツノを持つ線の細い、執事みたいな奴もいるけど……タキシードを着ている。男装麗人……ないね。
とりあえず、羊さんに話を聞いてみよう。
「あの……これは?」
「魔王様、とんだご冗談を。全員、貴方の夫や、子孫でございます」
いやいや、冗談はアンタでしょう。
夫なんて言われても、俺には同性愛の趣味はないし、子供なんて作れるワケが……
今更だけど、俺、気付いたよ。
俺……女になってる。
しかも、ナイスボディな体。
巨乳に、クビレ、尻……うん。
男にとって、理想の体だ。
あ、服はちゃんと着てるぜ☆
まあ、それはおいといて、このムキムキ男共はが取り巻く状況は、逆ハーレムなのか……。
まあ、この体の主は魔王様らしいし、世間的には問題はなかったのかもしれない。
あくまで『世間的には』だけど。
ってゆーか、これからどうすればいいの?
「魔王様、本日はお疲れでしょう。お休みください」
「……うん。そうするよ」
「こちらへどうぞ」
考えてても仕方ない!! とりあえず、今日は寝よう!
◇◆◇◆◇
「魔王様、お客様がご来訪されました」
「ん……ありがと」
俺は、眠い体を無理矢理叩き起こして、羊さんについていく。
しっかし、あのベッド、すっごいモフモフだったなぁ……
あの包み込む感じとか、癖になりそう。
いやいや、今はお客様の方が優先だ。
「ところで、誰が来たの?」
「今日来訪されましたのは……南の貴族でございます」
「貴族?」
「ええ、おそらく魔王様が復活された、祝いの遣いでしょう」
なるほど……王様が復権したり、こういう祝い事があったりしたら、貴族なんかも動くのか……情報はやいなぁ……
「魔王様、こちらを」
「ん」
羊さんが俺に、冠と黒いマントを着用させると、大きな扉を開ける。
「ララ=ミリュシュ女王のお出まし。アルドッドの者共、敬礼!!」
羊さんがよく響く声でそう言うと、王座らしきものの近くに立っている鎧で装備を固めた衛兵たちも、統制された動きで
ある者は地面に槍を立て
ある者は剣を自分の前に、剣先が天を向くように持ち、
またある者は大盾を横に構え
それ以外はここ……アル・ドッド魔界国軍専用の軽装を着た兵士は、敬礼をする。
っていうかこの体と国って、そんな名前だったのか。
魔界に国があることは驚きだが……
「ララ王、王座に」
「……うむ」
ここは、空気を読んで素直に動こう。
じゃないと、後で羊さんにチクチク言われそう。
「客人よ、入るが良い!!」
羊さんがそう言うと、これまた大きな扉がギギーィィと音を立てて開く。
それだけだ……いや、違う!?
扉の奥から、凄まじい速さで若い男の魔族が走り込み、俺に殴りかかろうと真っ直ぐ……俺しか眼中にないといった感じで突進する。
「その程度!!」
「グッ……」
しかしそれは、王座付近で盾を構えた兵士に止められ、そのまま別の兵士に捕らえられる。
「お前らのせいだ……!! お前らのせいで村が……!!」
「ララ様、こいつどうしましょう」
「ふむ……」
俺が少し考えるそぶりを見せると、若い男はギロリと俺を睨む。
「牢に入れておけ」
この人には、後で少し話を聞かないといけないなぁ……。




