表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

エンジェルリング

掲載日:2026/07/27

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 茶柱が立った経験、つぶらやくんにはあるだろうか?

 茶の茎が様々な関門を通り抜けたうえで、湯のみにたどり着かないと起こらない。茎そのものも入っている確率は高くない。低確率のかたまりで、なおかつその柱が立つような姿は家などの支えに使われている、大切な部位を連想させる。

 現在だと技術が進歩しているのもあって、茎が入っていない確率はますます高くなっているだろう。むしろ、茎が入っていたら雑な仕事をしているなと思われて、印象が悪くなるかもしれない。

 縁起がいいとされるものも、時代や環境によって悪い印象をあたえうる。いやはや、世の中は難しいことが多い。

 私たちも、地元だと幸運のジンクスと一時期思われていたものがあるんだ。それにまつわる話、ちょっと聞いてみないか?


 エンジェルリング、というものをつぶらやくんは知っているかい?

 粉を使っていれたコーヒー。そのカップの底へ残るコーヒーの粉の輪のことだ。

 これが私たちの間だと、幸運の印とされる。きれいな輪っかができあがるのを見たとき、その日はハッピーでいられる。そのおまじないのようなものとしてね。

 ちょうどコーヒーをブラックで飲むことが、当時の私たちにとっては通過儀礼のようなものであったことも、背中を後押しする。

 つぶらやくんにいわせれば、中二病の一種といったところか? 大人の真似をしたがって、やたら背伸びしたがる思春期の傾向さ。

 それだけ子供たちが真似をしたいと思う大人たちがいるのはいいことだ。願わくば、そういった素敵な大人たちがこれからも増えて、居続けてくれるといいのだけどね。


 ま、それはおいといて、エンジェルリングに出会えるかどうかは私たちの大きな関心事だったんだよ。

 朝になったら、まず粉コーヒーを入れて、それを飲み干す。カップの底に粉がきれいな輪になっているかどうかを見届ける。そこから一日が始まるといった感じでね。


 ――なに? トルコ式コーヒーで似たような占いをすることはあったが、そんなエンジェルリングのようなことにはあまりならない?


 まあ、私も年を経てくると、そのあたりは妙に感じていたよ。

 あのころの私たちは、エンジェルリングに気をとられていたけれど、もっと不思議なことが身近へ来ていることを、察していなかったんじゃないかなんてね。


 そのような不思議なことが起こったのが、まさに私が14歳のときだった。

 1年前から続けていたコーヒー飲み。その中でエンジェルリングに出くわさなかったときは、数えるほどしかなかったんだ。

 そしてエンジェルリングに出くわさない日は、大なり小なり身の回りでトラブルが起きる。ゆえに私は、この占いに対してそれなりの信頼感を抱いていたんだ。

 で、その日はカップの底にきれいなペンタグラムが現れたものだから、首をかしげてしまったんだよ。

 一度結果が出たならば、コーヒーを飲み直して占いをやり直すマネは許されない。恣意的なものが入ったとたんに、それは世の流れから切り離されて、本来の意味を失ってしまうためだ。

 妙なこともあるなあ、と思っていると、席を立つや尿意に襲われてね。カフェインの作用にしては急なんじゃないか? と感じながらもトイレで用を済ませて、学校へ向かったんだ。

 みんなにエンジェルリングの代わりに、ペンタグラムが現れたことについて、学校でいろいろと話を振ってみたよ。でも反応が妙なんだよね。

 知らないなら、「しらな~い」とでも返して、それっきりでもおかしくないだろ? でもそのときはみんなが、どこかしらけたような、見下すような目線を一様に返してきたのが不思議だったし、不快でもあった。

 そのわけをどうにか聞き出そうとしても、いずれも適当にはぐらかされてしまい、腑に落ちないまま下校することに。


 そして私は玄関をくぐるや、不意に眠気に襲われてその場に崩れ落ちてしまい……気づくと病院のベッドで目を覚ましていた。

 気を失っていたのは間違いない。けれども、家族によると気絶した私を見つけたのは玄関ではない。それどころか学校帰りの夕方ごろでもない。

 トイレだ。あのコーヒーを飲んだ直後のトイレから、私はいつまで経っても出てこず、心配した家族がドアをこじ開けたところ、気を失っている私を見つけたのだそうだ。

 発見直後の私は息もろくにしていなかったらしく、命にかかわるところだったとか。

 それからエンジェルリングにまつわる占いは、やるのを控えてしまったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ