表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/72

第71話 偽聖女編⑮

ミネルバを逆転移させた数日後。アタシたちは王都にある王城に出向き、ミネルバの顛末を現国王たちに報告した。とは言っても、アタシは付き添いくらいのおまけで、報告の全てはリディアが取り仕切っているわ。


「聖女リディア・アッシュクロフト。現在に至るまでの非礼、お詫び申し上げます。」

「結構。これからの行いに期待しています、ライオネル・ローゼシア。」


謁見の間で、リディアに対して現国王と王族、大臣たちが頭を下げている。静粛な場のはずなのに、どこか軽く感じてしまうのはアタシがリディア側の人間だからかしら。


「今から数千年前、ローゼシア王国建国時は私と当時の国王でこの国を支えていました。しかし、いつしかこの国はローゼシア王族のみが掌握し、私もそれに従い続けました。」

「はい。存じております。」

「今回の件、責務を投げ出した私にも非はあるでしょう。私は改めて聖神殿に戻り、聖女リディア・アッシュクロフトとして貴方と共にこの国を、世界を導いていければと思います。ライオネル・ローゼシア、異論はありますか?」

「いえ、ありません。聖女リディア・アッシュクロフト、貴女様の御心のままに。」



こうして、リディアとローゼシア王国は和解をし、リディアは再びアタシたちを導く聖女として君臨することになったわ。


伝承の中だけの存在だと思われていた聖女リディアのことは各メディアで大々的に広報され、その後1週間に渡ってリディアを称えるお祭りが開かれた。その際にリディアはいくつもの魔法玉を打ち上げ、人々に神託を与えて再び聖女としてこの国の象徴として君臨することになったわ。


________。


「こっちのお菓子も捨てがたい、あっちのお菓子は今日食べておく。コスメは全部持っていくから分けて梱包する。」


聖女リディア再誕のお祭りが終わってしばらくして、リディアはセントサザール領のレッドフォード邸に戻って荷造りをしている。聖女リディアとして復職することと、聖女リディアの代わりとなる魔法具の製作に着手するため、正式に王都に戻ることになったの。


…と、そこまでは良いんだけど。この子ってば、さっきから断捨離も荷造りも進んでいないのよ。お菓子の入っている箱を丸ごと持っていくとか、レッドフォード邸の書斎の本がいくつか欲しいと言っておいて何も決めていないとか、ケイティに仕立ててもらった服が懐かしいとか言って1人でファッションショーを始めたり。

この子、試験前に部屋の掃除したくなるタイプね。もしくは、掃除中に本を読み始めて止まらなくなるタイプ。


「アディ、このリップ一回も使ったことなかったけど、結構良い…!」

「んもう!そんなことしている場合じゃないでしょ!早く支度しなさい!」


アタシはリディアからリップを取り上げ、目の前にある箱に収納していく。リディアが『えーん』と泣き言を言うけど、無視して箱に荷物を詰め込んでいく。


「ちぇー。やります、荷造りしますー。本、雑誌、お菓子、お菓子、ご神体、雑誌…」

「ご神体は丁重に扱いなさい!!」


アタシは急いでリディアの手からご神体の金剛石を取り上げる。今している荷造りの手を止めさせて、ご神体を先に対処させる。


「…アディは。」

「ん?」

「アディは寂しくないの?私がいなくなるの。」


リディアが床に座り、ご神体を撫でながらアタシの方を見る。猫を抱きかかえて撫でるように金剛石を撫でているリディアの状況が気になるけど、アタシは気を散らすようにし答える。


「…そうね。寂しいと言えば寂しいわよ。アンタと過ごした日々は、ドタバタしながらも楽しかったからね。」

「本当?後悔していない?」

「してないわよ。そもそも、アンタを匿うか処刑されるかどちらかを選べとアタシに迫ったのはアンタでしょ。」


リディアはバツが悪そうに『えへへ』と小さく笑った。アンタと出会った初日、忘れてあげるものですか。


「アディ。」

「ん?どうしたの?」

「…最後に、一度だけぎゅってして。」

「…何よ、甘えたさんね。」


アタシはリディアの身長に合わせてしゃがみ、リディアを抱き締めた。大人が子供に向けてやる、親愛のハグよ。


「えへへ、アディ温かい。」

「あら、今日は体温が高いのかもしれないわね。」


アタシはリディアの背中に回した手を離し、リディアから離れようとした。…のだけど、リディアがぐっとアタシの頬に顔を近づけたかと思うと、小さく目の下にキスをしてきたわ。アタシは不意打ちのキスに驚き、リディアに視線を向ける。


「んべ。アディのファンデーションまずい。」


キスした拍子にアタシの顔のファンデーションを口に入れてしまったのか、リディアは顔をしかめてペッペッとしている。


「ませたことするからよ。大人になってから出直しなさい。」

「…はあい。」


________。


あれから数時間、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返し、聖神殿に持っていく荷物がまとまったわ。


リディアの出発は明日の朝。王城から迎えの移動車が来るらしく、このレッドフォード邸でリディアとはお別れになるの。



「…リディア。」

「ん?何?もう荷物はまとめたよ。」

「これ、渡しておくわ。」

「………あああ!!」


アタシは紙袋から”それ”を、リディアが欲しがっていたユニコーン型のモンスタっちを取り出し、リディアに渡した。アタシからのはなむけよ。


「可愛い!ユニコーン型のモンスタっちだ!わあ、キラキラ!アディありがとう!」

「ちゃんと聖女として頑張るのよ?魔法具、10年以内に完成させなさい。」

「うん!頑張る!これ、大切にするね!わあああ…!」


リディアは喜びでアタシの言葉が聞こえていないようだけど、まあ良いでしょう。


「アディ。」

「ん?」

「さようならは言わないよ。またね。」

「ええ、また会いましょう。」


だからその時まで、さようなら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ