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第70話 偽聖女編⑭

それから2日が経過し、リディアは朝から晩まで謎の舞を踊り続けることで、世界の調律をし終えたわ。世界中で報告されていた自然災害は徐々に治まり、今後はいつもの日常が戻っていくとのこと。



そしてアタシとリディアは、王都に向けて移動車を走らせていた。もちろん目的は偽聖女ミネルバの行方。リディアの力によってミネルバの居場所は既に突き止めてあるから、後はそのに向かうだけよ。変な抵抗をしないでくれると助かるんだけどね。


「ミネルバは王都にいる、間違いないのね?」

「うん。土地勘まではないみたいで、遠くには行けていない様子。王都の端にある田舎地域手前にある小道の廃屋に潜伏しているみたい。」


リディアはアタシの用意した地図を見ながら、ミネルバの位置の詳細を確かめている。時々心眼を使ってミネルバの位置を確認しつつ、アタシたちは目的の廃屋に近づいていく。


「…アディ。この騒動が終わったら、しばらくお別れだね。」

「そうね。聖女としての活動に魔法具の製作、頑張りなさいよ。」

「うん。」


アタシは多くを語らず、簡潔にリディアを励ます。あれこれ言葉を並べるのは今じゃないと思っているからね。


リディアは今後の自分の方向性が決まったおかげか、すっきりとした表情をしている気がするわ。アタシも、背筋を伸ばしてシャキッとしなきゃいけないわね。


________。


「………誰か来た?」


(物音がする。追手?)


(…でも、罠をいくつか仕掛けておいたはず。簡単にはここに来られない…はず…。)




バキッ


ヒュウウン…


パチンッ


パキパキパキ…


「こんな低俗な罠で身を守ろうなど笑止千万。聖女リディアである私には効きません。」


(なんでこの子はこんなに上から目線なのかしら。)


アタシとリディアは目的の廃屋に着き、ミネルバがいるらしい2階の奥の部屋を目指している。いくつか魔法の罠が仕掛けてはあるものの、最上級魔導士であるリディアには赤ちゃん向けのブロック遊びと同じ感覚らしいわ。

リディアは設置してある全ての罠を壊すように解除し、あえて音を立てながら2階に向かっている。

曰く、獲物を音で追いつめるのと同じ感覚なんだとか。仮に2階の窓から逃げても、家の周りに仕掛けたアタシたちの魔法の罠に引っかかっておしまいよ。




「…この部屋から気配がしますね。ミネルバでしょう。」


そう言いながら、リディアはそっと扉に手をかける。その後ろでアタシは物理防御魔法と魔法防御魔法を二重にかけつつ援護をする。リディアの魔法に一部耐性があるって聞いているから、気を付けないといけないわね。


リディアが掌に魔法の波動を込めて打ち出そうとしたその時、扉が勢いよく開きミネルバが飛び出してきた。


「うわああああああ!!」

「ぶっ!」

「リディア!」


ミネルバによって開け放たれた扉に顔をぶつけ、リディアは唸り声をあげた。アタシとリディアの不意を突き、ミネルバは廊下を走り階段へ向かう。


だけど…


「きゃああああああ!!」


ガラガラガラガラ!


パキン!パキン!パキン!


ヒュウウウウ…


ぱしっ ぱしっ しゅるるるる…


「…よし、罠にかかったね。多分大丈夫、あれは聖女リディアの魔法じゃないから抜け出せない。」

「そういうものなの?アタシにはいまいち違いが分からないんだけど。」

「ミネルバにあるのは私、聖女リディアの魔法に対する耐性。あれはごく普通の初級、中級魔法。ミネルバは普通の魔法には耐性がないと踏んでいたの。結果として正解だったね。」


そう言いながら、リディアは駆け足で廊下の先にある階段を目指す。アタシも後に続いてそっと階段を覗いてみたら、階段の下で魔法で出来た縄や鎖や網に絡まって伸びているミネルバの姿を捉えた。あれこれ適当に魔法を試して解除しようとしているみたいだけど、何一つ解除できていないみたい。


アタシとリディアは階段を駆け下り、恐る恐るミネルバに近づく。ミネルバはアタシたちに物理で抵抗しようと試みているけど、魔法に絡まった体ではどうしようもないようね。


「この、この…!くうう…!」

「ふむふむ…なるほど、転移特典なるものがあるんだ。だから翻訳魔法が常にかかっているような状態だったんだ。聖女リディアの力が付与されたのは転移時の時空のねじれによるもの…へえ、ふーん、こっちも対応しないとまた第二のミネルバが出てくると困るなあ…。」


暴れるミネルバを抑えながら、リディアはミネルバの”何か”を解析している。特典って何かしら。後でリディアに聞きましょう。


「ミネルバ・ローズブレイド、貴女はこの世界にはいてはいけません。貴女の行いの影響で、今回の世界崩落騒動を起こすことにもなりました。」

「はいはい、すみませんね。どうぞ元の世界に戻してください。」


ミネルバは反省を口にはするものの、表情は不貞腐れている。チラッとアタシの方に視線を寄こしたけど、アタシには興味ないのかそのまま視線を外す。


「元の世界で貴女が貴女らしく幸せに暮らせることを祈っています。ミネルバ・ローズブレイドに、聖女リディアの祝福がありますように。」


リディアの掛け声と共に、ミネルバの周りに魔法陣が描かれていく。ミネルバは魔法陣が取り巻く魔法の渦に飲み込まれ、一瞬で姿が見えなくなった。徐々に魔法は収束し、リディアの手の内に収まっていく。魔法で出来た光の粒がパチンと弾け、ミネルバも魔法陣も綺麗に消えた。


「…これで終わったよ。」

「ええ、そうね。でも、アタシたちにはこれからでしょ?」

「ふふふ。そうだね、アディ。」


アタシとリディアは、さっきまでミネルバが転がっていた床を2人で見つめる。

静寂の中、偽聖女騒動は終わりを告げた。

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