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第2話 お菓子は程々にしなさい。

前回のあらすじ!


アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵は屋敷の前でボロ雑巾みたいな幼女を拾ったわ。

なんとその子は自分はこの国の聖女リディア・アッシュクロフト様で、城から逃げ出したから匿えって言うの。

彼女の言っていることを疑ったものの、聖女様が持っているとされる過去を見通す力で過去を暴露され、尊厳を破壊されたアタシ。

聖女様を匿うか、匿わずに聖女誘拐犯として告発されて処刑されるかの2択を選べと言われて、前者を選んだわ。


こうして、アタシと幼女…聖女様のよく分からない日常が始まったの。




____あれから数日。


アドルディ・レッドフォード伯爵の毎日は忙しい。

でも、だからと言って自分時間の過ごし方は手を抜かないの。


きちんと摂取カロリーを守りつつ美味しいものを食べるし、適度な運動もするし、8時間睡眠を心がけているわ。


今は休憩時間。たくさんの書類仕事で疲れちゃって、目と背中を休めている最中なの。

ここ?ここはアタシの仕事部屋。


ガサガサ…クシャッ…カコン…


「このチョコレート菓子、美味しい。コーンパフの中にチョコレートがよく染み込んでいる。もしゃもしゃ。」


そう、きちんと摂取カロリーを守りつつ……


カタカタカタ…ビリッ…ポリポリ…


「こっちのスティック菓子はバターの風味が強くて好き。少しだけ振りかかっている塩が絶妙。うまうま。」


摂取カロリーを………


バリッ…カサカサ…パリパリ…


「コンソメ特有の風味と塩味、これこそポテトチップスの真髄ね。指までおいしい。あむあむ。」

「何個お菓子の袋開けてるのよ!!!1日1個までにしなさい!!」

「アディ、あなたの会社のお菓子、初めて食べたけど美味しいね。」

「ありがとう!!それはそれ、これはこれ!!」


本当はアタシだって好きなものたくさん食べたいわよ!!

チョコレートにクッキーにポテトチップス、それを冷たいお紅茶と一緒に胃の中に流し込みたいわよ!!


でもダメなの、そんなことしたらアタシの築き上げた美ボディが崩れちゃう。

赤ちゃんすら嫉妬する卵肌、雪すら黒く見える透き通った美白肌、毎日の運動によって鍛えられた筋肉、程よい肉付きの長い脚、すべてが台無しになってしまうの!!


あと、ほら、あれよ、胃が、あまり重いものや濃いものが食べられないというか。

誰だ今年齢の話したやつ。しばくぞ。


「聖女様って楽じゃないの。神聖視されてるとか何とかで、毎日毎日うすーい味の野菜スープにドロドロでほとんど水のお粥、ぱさぱさのパン。それが3食。」


う、うーん。確かにそれは大変かも…?

聖女様って言われているから、国王クラスの生活をしていると思っていたけど、想像と現実って結構違うものなのね?

質素で堅実で丁寧な暮らし?


「食べるものがあるだけありがたいと思えと言われるかもしれないけど、私は嫌だった。お城の外にいる子供達が食べてる飴が食べたかった。個包装にされているチョコレートが食べてみたかった。」

「急にシリアスな話にするんじゃないわよ…。」


怒り辛くなっちゃった…。

……いやいやいや。


「暴食していい理由にはならないわよ。」

「………チッ。」

「舌打ちしない!品がないでしょ!」


んま~~~もうこの子ったら、自分の周りに魔法陣のごとくお菓子の袋の輪を作っちゃって!

これとこれは個包装だから大袋の口を閉じて棚にしまう!

これは未開封だからこのまましまう!

散乱しているお菓子は袋が見つからないから適当な袋に入れてしまう!

そこのメイド!濡れたタオルを持ってきなさい!急いで!



「お口の周り、チョコレートまみれじゃない!しょうがないわね!」

「んむむむむー!!ゴシゴシするの嫌ー!!」

「文句言わないの!チョコレートカラーのリップが綺麗ですね!」

「似合うでしょ?だからこのままでいいのー!」

「はいはいイエベ秋イエベ秋!」


…あれ?もしかして今のアタシ、おかん…?


「というかアンタ、初日と口調違わない?」

「聖女らしく振舞ったほうがいいかなって、尊大で神聖な聖女様を演じてみたの。」

「ああ、だからキャラも口調も迷走していたのね…」


リディアの顔に濡れたタオルを強めに押し付けると、みるみるうちにチョコレートは拭かれてなくなっていった。

代わりに少し唇の周りが赤くなっている。一応後で保湿リップ塗ってあげなきゃ。


「ねえもう良いでしょ?口周りのチョコレートおちた!」


アタシの拘束を振りほどき、リディアは残っているお菓子の袋をかき集めて部屋から出ていった。遠くから「お待ちくださいリディア様ー!!」という使用人の声が聞こえてくるわ。あとは任せたわよ。


「休んでいたはずなのに、さらに疲れた…」


仕事机とは正反対の位置に置いてある応接用の長椅子に思わずダイブする。

物理的に頭を抱えながら、アタシは思考を放棄した。

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