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第16話 リディアの夜更かし

第1話はこちらです→https://syosetu.com/usernoveldatamanage/top/ncode/2773390/noveldataid/26180134/

Side:リディア


私はレッドフォード社の玩具支部から帰宅して、晩御飯を食べて、お風呂に入って、あとは寝るだけだった。


アディは晩御飯の後に少し仕事が入ったからって部屋に戻っていったから、お風呂はまだみたい。今はもう仕事から解放されたみたいだけど、服は帰ってきたときの仕事着のまま。私が彼のプライベートルームに行った時には、ワインをグラスに開けていた。


そして今、目の前の大男に馬鹿にされている。



「いや可愛いって!自信持ちなさいって!メイクし始めの頃なんてみんな失敗するものだから!あっはっはっは!」

「もう!!笑いすぎ!!馬鹿!!」


アディは何に笑っているのかというと、象徴画のようになってしまった私の顔についてだった。


数時間前。アディと部下のマックスが退室して手持無沙汰になっていた私は、レッドフォード社服飾支部のシンシアにもらった子供向けリップを試してみようと試行錯誤していた。


結果は失敗。部屋には唇が分厚くなった私が残され、戻ってきたアディがどうなったのかは言うまでもない。

アディはずっと『可愛い』とか『誰でも初めはそうなる』とか言ってるけど、笑いが抑えきれていない。ふんっ!


「アタシも昔うるちゅるリップ塗ったら会社の子に『脂っこいもの食べてきたんですか?』とか言われちゃったことあるから!あっはっはっは!」


アディは上機嫌に笑いながら、グラスのワインを一気に飲み干す。

アディはお酒に強くてほとんど酔わないはずだから、これは酔っているんじゃなくて素で笑っている。ムカついて、アディのおつまみをむしり取るように掴み、口に入れる。


「いや本当に。可愛いと思っているわよ。」


「…。」


「…?」


一言だけ小さく言って、アディはグラスワインを注ぎ始める。

何だろう今の、胸の奥がそわそわした。悪寒?


「笑って悪かったわよ。美意識に興味を持つことに男も女もないのよ。今度一緒にメイク用品買いに行きましょうね。」

「…うん。」

「モンスタっち買ってあげるんだから気を直してちょうだい。」

「それはそれ、これはこれ!」


(気のせいかな。)


私は胸に覚えた謎の感覚に対する答えを見つけられなかった。




「リディア、今日一日どうだった?」


久しぶりにリディアと呼ばれた気がして、少し考えてしまった。今日はほとんどの人にレティシアと呼ばれる一日だったから、少し新鮮味を感じたのかもしれない。


「楽しかった、けど、同じくらい疲れた。」

「あはは、初めての環境と初めての経験の連続だったものね!」


とても楽しかったのは事実。でも、それと同じくらい疲労感と気疲れにより疲弊しているのも事実。自覚はしていなかったけど、初対面の人と楽しく長時間話したり行動することで、私は幸福な疲労感を感じるタイプらしい。3000年生きてきて、初めて知ったことかもしれない。


「私、アディの会社のこと詳しくは知らなかったの。」

「まあ、アタシも話したことなかったし、当然といえば当然ね。」

「だからね、今回知れてよかった。アディの会社のことも、アディのことも。」


アディと話していると、目がしぱしぱしてきた。体と頭にも重さを感じて、長椅子に横になる。

時計を見てみると、日付が変わっていた。いつもならもう寝ている時間だから、そりゃ眠くて当たり前だと実感する。


「リディア?」

「………。」


アディが私を呼んでいる気がする。

だけど、彼の声に私が答えることはなかった。私の意識は、暗い海の底に落ちた石のように沈んでいった。






Side:アドルディ


(…あーらら、寝落ちしちゃったみたい。)


アタシのお酒のおつまみを狙って部屋に来ていたリディアだったけど、相当疲れていたみたいね。1度口にしただけで後は何もしないで寝ちゃった。


(それにしても、今日は助かったわ。)


我ながら良いアイデアを思いついたと満足感に浸る。

リディアにモニターを任せて正解だった。アタシという知り合いがいるせいか、忖度しないで素直に意見をぶつけてくれた。おかげで改善点も見えてきた。


…いや、アタシがいなくてもあの子は素直に何でも口に出しそうね。



___今回知れてよかった。アディの会社のことも、アディのことも。



リディアが寝落ちする間際に発した言葉が、頭の中にこだまする。

そういえばアタシ、名前以外に自分のこと話したことなかったかも。

わざわざ話すことでもないし、ましてやこんな小さい子に自分語りをするなんて、なんか体裁悪く感じちゃうし。


聞かれたら答えることもあったわよ。メイクが好きだとか、お酒が好きだとか、毎日しているトレーニングの内容だとか。でも、プライベートな話は全くしていない気がする。


「今度聞いてきたら教えてあげるわよ。アドルディ・レッドフォードという人物について。」


寝息を立てているリディアに向かって言ってみる。もちろん返事はない。

大して面白い話はできないけど、アンタが知りたいと思うなら教えてあげましょうね。





「_てか。リディア、アンタ歯ぁ磨いてなくない?最後におつまみ食べていたわよね!?こら!起きなさい!歯磨きしてから寝なさい!」

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