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19話 ミア「朝の手応え」

難産続いててすっかり更新ペース遅くなってしまって申し訳ありません

「祭りの開始時刻というのは特に決まってはいませんが、露店の開店時間を全店舗一律で朝の8時からにしたいと思います」

「ふむ……反対するわけではありませんが、理由を聞かせてもらっても?」


 これを言ったのは、すっかり質問役が板についたルシアンさん。


「はい、まず時間を統一する意味ですが、管理がしやすくなるという点に加え、職人街総出で動いているとお客さんたちに伝える意図があります」

「統一感のようなもの、を演出したいということですね」


 彼の理解に頷く。この大量の露店はただの偶然ではなく、計画的に準備されたものだと感じ取ってもらう。


「今年の職人街は違うんだと、みんなに知らしめるんです」


 ──ということをみんなに提案したのが数日前のこと。


 予定通り、私たちのお店は8時から一斉にオープンした。


 活気あふれる呼び声や観光客のざわめきが、すっかり執務室と化した公会堂の会議室にまで届いてくるわ。


「初動は順調、といったところかしら」

「順調どころか、ここまで職人街が祭りの日に賑わったのは見たことねぇな」

「ああ、むしろいつもより静かなのが常だったからな」


 どっかりと椅子に座ったマリウスさんが私の感想に上方修正を入れ、ゴードンさんがそれに同意した。


「いいことですね。マリウスさん、ゴードンさん、親方衆の準備も万全でしょうか?」

「おうともよ、1回目は9時からでいいんだよな?」

「はい、大変かと思いますけど、よろしくお願いします」


 工房の親方たちはほとんど商品の開発には携わっていないわ。

 たまにアドバイスを乞う程度で、実働は高弟クラスまでに絞っていたの。


 でも、この大祭当日においては、彼らにしかできない仕事をお願いしたわ。


「うっし、じゃあ行くかぁ!」

「大衆に向けた技術披露か……。この年で演奏家みたいなことをすることになるとはな」


 このクレセンティアで最も秀でた技術を持つ彼ら親方衆に、お客さんの眼の前に立ってもらって、商品の制作工程の一部を披露してもらう。


 たとえばマリウスさんならヴァイオリンの調律、ゴードンさんなら革の磨きなどなど。


 とても贅沢な人材の使い方だけど、一般の人にも職人の凄さを知ってもらうにはこれが一番だと思うわ。


「なんだゴードンの爺様、嫌なら休んでてもいいんだぜ」


 挑発的に、あるいはからかうように笑うマリウスさんに対して、ゴードンさんはフンと鼻を鳴らすと。


「別に嫌とは言っとらん」


 と言って、執務室から出て行った。


「人間変わるもんだねぇ。じゃ、俺も行ってくるわ」

「はい、お願いします」


 愉快げに笑うマリウスさんも続いて出ていった。

 あの二人は正反対な性格だけれど、いい関係なんでしょうね。


 さて、私も仕事をしなくっちゃ。

 この執務室は各店舗の販売状況の整理や倉庫からの商品補充など、全体の統括を担ってるの。


「ミアさん、定時報告のとりまとめが終わりました」

「ありがとうございます、どうでしたか?」


各店舗の連携を密にするため、30分ごとの定時報告をお願いしているわ。

現在時刻は8時40分ほど、ちょうど在庫状況などの報告をまとめてくれたルシアンさんが来てくれた。


「順調な売れ行きなようです。特に今のところ低価格商品が好調なようですね」

「明らかに安いものね。デザインも気を使ったし、ちゃんとウケたようで良かったわ」


人はお店が賑わってたら自分も気になるもの、そしてこの職人街自体に賑わいが生まれたら、財布の紐はどんどん緩くなっていくわ。


「高額商品もきちんと売れてほしいわね」

「売れますよ、絶対に」


あまり強い語気にならないルシアンさんが、珍しく断定の口調でそう言った。

彼もこの祭りの成功を確信してくれてるのね。


「そうですね、絶対にするために頑張ってきて、その総仕上げをしてるんでしたわ」


仕上げならば、彼ら職人のように手を抜かず、気を抜かず、細部まで気を配りましょう。


「ルシアンさん、そろそろ私は各店舗のチェックに行ってきますので、留守の間の執務室の運営はお任せします。必要であれば倉庫からの補充はやっちゃってください」

「はい、お任せください。入れ違いになった情報は逐一記録しておきますので」


すでに情報の管理や数値の記録という面で、私はルシアンさんのことをかなり信頼している。短時間なら運営を任せてもいいと思うほどに。


彼と執務室にいる他のメンバーに仕事を任せ、私は各店舗のチェックに向かった。


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