3話 ヨロイさん「仕事ゲットだぜ」
すみません、予約投稿忘れてました!
俺が助けた女の子、もといミアさんはめちゃくちゃ親切な人だった。
喋れない上に記憶もない、見た目も怪しさ満点の俺を雇ってくれるというのだ。
しかも、おそらくかなり高給もくれるとのこと。
目覚めて1日もしないうちに千載一遇のチャンスだ、俺は即座に飛びついた。
しかし見た目若いって言うか全然少女なのに、すでに商人として自立してんだなミアさん、すげぇ。
そんな彼女の方はというと、さっき俺が寝かしつけた土塊の方を見てなにやら考え込んでいるようだった。
「うぅん、どうしましょう」
なにを悩んでいるのか、言葉の代わりにそいつを指差しつつジェスチャーで問いかける。
彼女は腕を組みながら、順序立てて説明してくれた。
「そうね……まずあなたが倒してくれたのは、ゴーレムっていう魔法の人形。その中でも暴走してしまった子達で、野良ゴーレムって呼ばれてるわ」
ゴーレム……?ゴーレムなんだ。
なんか俺のイメージと違う気がしたけど、まあ今はいいか。
「で、野良ゴーレムって普通こういう風に倒さない……いえ、倒せないのよ」
なんですと?
俺がビックリしている間にも彼女の説明は続く。
「ゴーレムは暴れ出したら最後、破壊するしかないの。そこから彼らのコアを取り出して、再利用するっていうのが私たちの常識ね」
そしてその破壊とコア回収を生業とした人もいて、かなりの市場規模になってるとも説明してくれた。
けど、それで終わりではなく彼女は難しい顔をしながら、更に自分の考えを言ってくれた。
「私はね、この常識が好きじゃないの。いいえ、嫌いね」
そう告げたエメラルドグリーンの瞳は、彼女の信念が輝かせてるようだった。
「みんな今の状況が当たり前と思ってるの。暴走の危険を承知でゴーレムを働かせて、暴れ出す前に外に放り出す。とても経済的じゃないわ、もっと良い方法がきっとあるはずよ」
確かに、暴れるゴーレムがいる限り、先ほどまで彼女を襲ったような危険は常にあるわけだ。
もし至る所に暴走ゴーレムがいるなら、彼女たち商人は必要以上の自衛コストを払う必要があるだろう。
「だからね、私は悩んでるの。このゴーレムをどうしようかって」
つまり常識通り、静まってるうちにコアを取り出すか、あるいは常識に抗いそれ以外の道を見つけるか。
悩んでいるのは、彼女自身がまだこの問題に対する答えを見つけられてないからだろう。
この世界のことをまだ何も知らない俺が、彼女に協力したいと思うのは烏滸がましいかもしれない。
だけど、俺の力が彼女の抵抗に役立つなら、喜んで力になろうと思う。
「ヨロイさん?」
俺は自分を指差して、その後彼女と、ゴーレムを指差す。そしてドンと一つ、胸を叩いた。
意図はちゃんと伝わっただろうか。
一瞬不安になったが、目をぱちくりさせた後に彼女はふんわりと微笑んだ。
「そうね、私だけじゃないわね。1人より2人のほうが、やれることはずっと増えるわ」
その言葉に、俺は大きく頷いた。
何ができるか分からないけど、きっとやれるはずだ。
「さっ、そうと決まればのんびりしてられないわね。ヨロイさん、力仕事になって申し訳ないけど、その子運んでくれるかしら」
勿論なんら問題はない。
よっこいせと心で呟きながら、俺より二回りはでかいゴーレムを担ぎ上げる。
「やっぱりすごいわね、あなたの力。もしかしてそれでも余裕だったりするのかしら」
まあ全然余裕っぽい。
どの程度の重さまで持てるか俺にも分からないけど、このゴーレムだったら後二体追加しても問題ないだろう。
「なんてことなのかしら……!運搬の効率が劇的に上がるわ…!いえ、それどころか1人だと大して意味もなかった馬車の導入も考えた方がいいわね。ヨロイさんに護衛を任せてる以上、街道を歩いてる最中に両手を塞ぐのはナンセンスだし……」
なにやらぶつぶつと自分の世界に入り込み出したミアさん、これ長くなる奴じゃない?
とりあえず肩をツンツンと突くと、彼女は「ひゃあ!?」と可愛らしい悲鳴をあげた。
「ご、ごめんなさいね。じゃあ行きましょうか」
そうして俺たちは古木と大樹が林立する、エテルナ大森林へ足を踏み入れたのだった。