0話 ミア「旅の振り返りと帳簿のチェック」
2章0話です
新規の方はこちらから読み始めても全く問題ありません。
エテルナ大森林から離れ四日程経った。
森の外れにある駅で馬車をレンタルした
現在地はアステリア王国郊外の小さな町、遠目にはまだエテルナの大樹が映る場所だわ。
すでにとっぷりと日は暮れ、私たちは夕食を済ませ宿で寛いでいるところ。
(でもまさかいっぺんに2人も仲間ができるだなんて、思いもしなかったわね)
この二週間ほどのことを思い返す。
ヨロイさんに助けられ、アムを目覚めさせた。
ヨロイさんは不思議な人だ。
記憶を失い言葉も喋れず、けれどとても優しくて強い、ついでに感情によって頭の色が変わる、不思議な人。
彼に疑念を抱く材料はいくらでもあるけれど、詮索はしない。
彼はヨロイさん、私にとってはそれで十分だわ。
アムは元々暴走していたゴーレムを、ヨロイさんが鎮めて私が再形成した小さなゴーレム。
その時に言葉を与える道具を取り付けたのだけど、目覚めてみたら予想の5倍はよく喋る子だったわね…。
でも、小さな体でとてとてと駆け回ったり、ヨロイさんの肩によじ登ったり、とても可愛らしい子なの。
エテルナ大森林で特別な儀式を施してもらって、あの子にはヨロイさんの通訳というお仕事をしてもらっているわ。
(もうしばらくは一人旅の予定だったけれど…やっぱり、仲間が居たほうが頼もしいわね)
マグナポートの商業学院を卒業して、私は独立独歩の道を選んだ。
お金を稼ぐだけなら大商会に入った方がずっと実入りはよかったけど、私の目指す道には適さなかった。
今の私が言っても、ただの荒唐無稽な夢。
実現が視野に入ったら、改めて二人にも相談してみましょう。
彼らなら、私の夢を分かち合えると思うから。
「さて…と」
「ん?どうしたんや、姉さん?」
椅子に座り何事かを始めた私を、アムが不思議そうに覗き込んできた。
「帳簿をつけるのよ。ちゃんとした机がある環境って結構久々だから、今までの取引をまとめないと」
「ふーん、楽しいんか?」
「私は好きよ。教えてあげましょうか?」
「なんやようわからんけど、やってみるわ!兄さんも一緒にやりたいって!」
いつの間にかヨロイさんも側まで来ていた。
ちょうどいいから、今の資産状況を説明しておきましょうか。
「まず、今の私たちが自由に使えるお金が450銀冠。これはヨロイさんやアムのお給金、それから旅費とかを控除…ええと、使う予定のお金とは無関係なものよ」
「アムにはアムのお金が別にあるってことか?」
物わかりがいいわね、教え甲斐があるわ。
「そういうこと。二人共、街についたらお財布を買いましょうね、お金を裸で持ち歩くのは良くないわ」
「はーい!」
《はーい》
ヨロイさんの頭が黄色く光った。
今のは私でも分かる、アムと似たようなテンションで喜んでくれているんでしょう。
「次に商品の仕入れ値が130、予想利益が220で締めて350銀冠の資産になるわ」
《予想って資産にしてもいいんだ》
「もっと複雑な記帳もできるけどね、私の規模ならちゃちゃっと見込額書いたほうがいいのよ」
今の範囲なら記帳を完璧に仕上げるなんて、煩雑もいいところだもの。
「で、商品以外の道具だとか、そういったものの資産が650銀冠くらいね。と言っても、ほぼ万力の鞭の分なんだけど」
「え、いくらしたんや?」
「ざっと600ってとこね。学生の頃、立ち上げ資金含めて稼いだのよ」
「ほぼほぼやないか!」
いやー我ながら頑張ったわねぇ、ほんと。
学生しながらお父様の手伝いして…懐かしいわ。
あ、そういえばアレのことを忘れていたわね。
「あとは大熊から取り出したコアのことを忘れていたわね」
《売るの?》
「よっぽどお金に困ったらそうするけれど…とりあえずは手元に置いておくとするわ。ざっくり50銀冠ってとこかしら」
熊が飲み込んでいたように、他の動物がそうしていないとは限らない。
そうした問題を解決するためにも、このコアは役に立つかもしれないわ。
「と、言うことで。今の私達の総資産は約1,450銀冠ってところね」
「へー、そないにあるんかぁ」
《すごい》
おだてられて、ついつい調子に乗りかけちゃうけど、まだまだよ。
「ふふ、私なんて駆け出しよ。あなた達と一緒にもっと大きくするつもりなんだから、よろしく頼むわよ!」
《おー!》
「おー!」
まずはアステリア王国に行って、王国大祭に関わらなきゃね。
縁を結んで、お金を稼ぐにはもってこいの機会、商人としての腕が鳴るわ!




