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(婚約者がいることを話してくれなかったことは確かに腹が立つけど、デートの前に断りに行ったのなら真剣だってことよね? 私が咄嗟についた嘘で修一君を傷つけたことも確か。裏切ったと言うなら、たとえ誤解であったとしても、私も裏切ったことになる。これから、どうなるの? これで終わりなの?)


 大粒の涙がぽろぽろと零れ、落ちてスカートの上で弾ける。碧はハンカチで涙をぬぐうと、立ち上がろうとした。


「久保田君」


 ノックとともに飯田の声がした。碧が慌てて返事をすると、飯田が入ってきた。


「さっき新社長が慌てて外に……どうした? なにかあったのか?」


 目を真っ赤にして泣いている碧に飯田が飛び上がるように驚いて叫んだ。


「いえ、なんでもありません。目に埃が入って、痛くて。それよりも、先代社長が意識を取り戻されたようなのです。病院に向かわれました」


「やっぱり! そうじゃないかと思ったんだ。ものすごく慌てていたから。落ち着かれたら見舞いに行かないといけない。社員への説明もあるし、常務や専務とも連絡を取りあって、状況を注視しておかないと。久保田君、新社長から連絡があったら、すぐに対応できるよう準備を整えておいてくれ」


「わかりました」


 飯田が身を翻した。碧は咄嗟に呼び止めた。


「どうした?」

「部長、私、先日部長に嘘をつきました」

「嘘?」

「私、交際している人なんていないんです」


「…………」


「実は矢島社長は小学校の時の同級生で、六年生の時は同じクラスでした。でも、顔を合わせても、覚えていない様子だったから、覚えていないならそれはそれでいいと思ったんです。上司と部下なら、覚えていないほうがやりやすいんじゃないかって。だから部長に言われた時、その手の話がきっかけで矢島君が思いだしたらいけないと思って、咄嗟に嘘をつきました。交際相手がいるとなると、そんな話題はされないと思ったのです」


 肩を震わせながら碧は言い切った。飯田は驚いた様子だったが、次第に困ったと言いたげな顔をした。


「そうだったのか……新社長に久保田さんには交際相手がいるって話しちゃったなぁ。誤解だったと謝らないといけないな。いや、申し訳なかったよ。セクハラまがい……いや、立派なセクハラだな。君を傷つけてしまってすまなかった」


「そんなことはありません。私こそ、嘘をついて申し訳ありませんでした」


「久保田さんが謝ることはない。なにも悪くないんだから。そうか、新社長とクラスメートだったのか。あぁ、なるほど、それで就任時、いろいろ質問してきたのか。てっきり久保田さんを気に入ったのだと思って、君の反応を見たんだけど……とにかく、新社長には訂正して謝っておく。久保田さんは先代社長の容態について注意をしていてくれ。じゃ、あとは頼んだよ」


「はい」


 碧は飯田を見送ると、修一のスケジュール調整に着手したのだった。





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