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俺はバッターになる!

作者: 溶ける男

 そのゲームは、VRMMOの歴史を100年は進めたと言われ多くの開発者の夢であったフルダイブを可能にし、NPCたちAIもあり得ないほどのレベルのものが搭載されていた。

 そんなゲームのサービス開始から一年が経過し大型アップデートの詳細が公開された。


「なあ、俺このクランを抜けようと思うんだが」

「え?どうしたの突然」

「そうだよ、バレル!もしかして引退するのか?」

「そんなわけないだろ」


俺ことバレルは、このゲームを配信開始から今日まで気の合うメンバーたちとクランを結成してなんだかんだ楽しくやってきた。


「前から考えてたんだ。

 俺ってタンクとしてはそこそこなプレイしてきたつもりだ」

「ああ、お前のプレイで助けられたことも多いぜ」

「でもさ、なんていうか定番スキルを育てて特徴のない量産型のタンクやってんなって

 前からもやもやしてたんだ」

「効率求めたらそんなもんだろ

 俺たちがゲーム内で動けるのはスキルのおかげなんだから

 一部のプレイヤースキルの高い化け物たちみたいなプレイは出来ないし」

「そこまでは求めてないし、俺にそこまでのプレイヤースキルは無い」

「じゃあなんでクランを抜けるんだ?」

「今度のアップデートでスキルリセットでキャラクターの基礎能力強化ってのが実装されるだろ」

「ああ、今度の大型アップデートで実装されるやつか」

「それを使って、全スキルリセットかけようと思って」

「は?いくら基礎能力が上がってもスキルが無くなったら弱体化するぞ」

「わかってる、だからみんなに迷惑かけそうだからクランを抜けて一から始めようかと思って」

「そもそもなんで全スキルリセットかけるんだ?」

「さっきも言ってたけど効率求めて定番スキルでタンクやってきたけど、

 ずっとこれじゃない気がしてたんだよ

 せっかくこんなすごいゲームやってるのに

 誰かの敷いたレールの上を走ってるだけのプレイなんてもったいないだろ」

「で、これからどうするんだ」

「俺が今まで使っていた装備は、ここに置いていくから使いたいやつがいたら渡してくれ

 そして俺は、バッターになる」

「「は?」」

「アップデートの詳細が出てから俺の得意なことって何か考えてたんだけど、

 小中高とずっと野球をやってきて、

 有名校じゃないしレギュラーでもなかったけど十年以上バットを振ってきたからそれなりに自信がある」

「バッターって野球の?」

「それにこの間、倒したボスのトレントが落とした素材にした装備がようやく完成して特殊能力を見たらもうやるしかないなって」

「どんな装備だ?」

「魔法を反射する能力を持ったその名も【反魔のバット】だ!

 魔法って飛んでくるって言っても時速100Km出てないからさ

 これで打ち返せると思うんだよ」

「まあそれが出来れば野球経験者は、魔法使いの天敵になるかもな」

「できればだけどね」

「そういうわけで、かなり色物プレイすることになって迷惑かけるかもしれないからクランを抜けようかと思ってな」

「そんなこと気にしなくていいぜ」

「そうよ、攻略だけがゲームの全てじゃないんだから、好きにやってるからって邪険になんかしないわよ」

「そういうことなら籍を残しておこうか」


こうして俺は、大型アップデート後すぐにすべてのスキルをリセットしてバットを肩に担ぎ白を基調とした野球のユニホーム風の装備に身を包み第一の町付近の草原に出かけた。

町の門をくぐり外へ出ると、最近は閑散としていた草原には明らかに不釣り合いな装備を身に着けたプレイヤーが、リセットで空いたスキル枠に新しいスキルの取得するために初心者御用達のモブに対して対応した行動を繰り返している。

そんな光景を見ながら準備運動をするために、門の脇によけて体に染みついた体操をしていたが、明らかに場違いな見た目の俺は門を通るプレイヤーに若干変な目で見られてしまった。

体操を終えて、小石を拾いつつ手ごろな獲物を探す。

どんないびつな小石もイベントリに入れれば投げやすい同じ形の石に変換されるのは、いかにもゲーム的な仕様だ。

そうこうしていると誰もターゲットしていないモンスターが居たので小石を取り出して投げつけた。

【投擲】スキルは持っていないが、野球で鍛えた投球フォームから放たれた小石は相手の顔面へと命中しスタンの効果を与えた。

なるほど、これがリアルスキルをゲーム内で使う感覚か。

スキルアシストによる若干の違和感もなく思い通りの場所に投げられるこの感覚を知ってしまうと、設定でアシストをOFFするプレイヤーたちの気持ちが少し理解できそうだ。

スタン中でふらふらしているモンスターの頭を低めの球を打つ感覚でフルスイングすれば、ボールを真芯でとらえたような感覚とともにモンスターが空を舞い放物線を描きながらポリゴン片に姿を変えて消滅した。


「この感覚は癖になりそうだ」


思わず口から洩れた言葉に自然と笑みがこぼれる。

それがら目につくモンスターを片っ端から倒しジャストミートするのにも慣れてきて20回連続で成功したときにそれは訪れた。


スキル【打撃術(バット)】を取得しました。


武器専用スキルと言われるレアスキルの一種だ。

使用武器が、限定されるが効果は汎用的なスキルとは一線を画す切り札的なスキルだと噂されているが、取得方法は秘匿されているためお目にかかるのは初めてだ。タンクをやっていた時にはパリィを連続で成功させるとか成功したモンスターの種類が条件なんて噂があったがレアスキルを取得する事は出来なかった。

早速スキルの詳細を確認すると


打撃術(バット)

パッシブスキル

アシストなしで、クリティカルを連続で繰り出した場合、クリティカル倍率×連続回数のダメージを与える事が出来る。

クリティカルの発生に失敗する又は、フィールドやダンジョンの階層の切り替わりでカウントは1にリセットされる。


えーっと素の状態のクリティカル倍率が1.5倍だから二連続目のクリティカルは

1.5×2=3倍になるって感じか?

あとはボス前に回数を貯めて一撃で倒すことは出来ないってことかな、それでもスキルやアクセサリーなんかで倍率上げれば、効果もやばくなりそうだ。

そのためにはいつでもどんな相手でもジャストミートできるようにバットを振れないと宝の持ち腐れになる。

まずはこのフィールドのモンスターには100%の確率で出来るようになることから始めよう。


そうして戦闘送り返し安定してクリティカルを繰り出し放物線を描く、どうやらダメージと連動しているのか回数を重ねるごとに放物線の描く飛距離は伸びていく。

それが何とも言えない快感になり、より飛距離を伸ばすため更に戦闘を繰り返していると


称号【始まりのスラッガー】を取得しました。


称号とは特定の条件を満たしたときに取得できる記念みたいなもので、ギルドカードに設定して楽しむくらいで特に効果などは無い。

それでも自分の行動が認められたことの証である。




それから数カ月後、ゲーム内でスキルを活かした超人野球が流行った。

はじめまして&お久しぶりです。

久しぶりに書いてみました。

楽しく読んでいただけたら幸いです。

PCの中の短編フォルダにある途中まで書いていたものを切りのいいところまで書いてみた感じです。

なろうではよく見かけるスキル制のMMOって、実際あんまり見かけないですが職業型と比べると管理が難しいからかな?

複数のスキル効果が重なって予期せぬ結果をたたき出すというのは、物語的には有り、現実的には無しですかね。

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