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第77話 我が家でお風呂

 転送ゲートを越えた先、キリアスでは『赤熱の皇帝』こと関根さんと戦ったり、(骸骨さんが)鋼鉄王の娘さんと一夜を過ごしたり、やたら発情したハーフエルフ達に腹を立てたりしながらも、無事にリミエンに戻って来ることが出来た。


 リミエンの城門の手前でエマさんの出迎えを受け、抱き合う姿をケルンさんに目撃されてしまったが、逆に吹っ切れた。

 もう貴族家の娘さんだからと言って拒否するのは辞めようと思うことにした。

 貴族家だって同じ人間なんだから!


 ケルンさんの荷馬車を追い越し、エマさんの乗るランスの隣を走りながら、俺が居なかった間の話を聞かせて貰う。

 リミエンに戻ってすぐにリリーさん達三人組と遭遇して冒険者ギルドに連れて行ったこと、その日の夜の間に伯爵様が翌日からダンジョンに向かうことを決めていたと聞いて、

「まさに時は金なりだ」

と伯爵様の行動力にビックリを通り越した。


 二日目の夜は山に入る手前のキャンプ地に宿泊し、三日目にはロイのゴブリン退治の後に新しく見つかったダンジョンから森のダンジョンへと移動。

 エマさんが俺の不在を知ったのはこのタイミングだ。


 その日はショックで寝込んだそうだが、四日目の夜にはリミエンに戻り、五日目の今日は朝からキリアスへ行くための支度を始めたとか。


「国境の森はヤバイ魔物が住んでいるそうだ。

 その魔物退治をエルフの婆さんに依頼されてるけどね」


 詳細は不明だが精神体と呼べるような魔物である。

 感知能力を持つアルジェンとドランさんが居るからこそ俺に対処が出来るのだ。


 その魔物が住む森を無事に越えられたとしても、バルム婆がすんなりと人捜しを許可する筈がない。

 数日は勾留して、精神体の魔物に乗っ取られていないか確認しただろう。


「行き違いにならなくて良かったです」

「ホントだね。到着が一日遅れてたら、エマさんを探しに行かなきゃならなかったんだね」

『そのレーダーを使えば、十キロメトルの範囲に居れば分かるのは凄い。

 でも森の中だと距離が短くなるかも知れないし、魔力消費が大き過ぎて気軽には使えない。

 それに魔物も出てくるし、探索は失敗した可能性が高いですよ』

「…今日帰ってこれてマジ良かったよ」


 ドランさんがエマさんとも会話が出来るよう念話のチャンネルを設定し直してくれた。

 まさか透明な蜥蜴がドラゴンなんて誰も思うまい。


 自然界にはごく稀に色素を持たない個体が生まれることがあるので、透明な蜥蜴が居ないとは限らない。だけど骨や内蔵は透明じゃないからね。

 やっぱり骨まで水晶のドランさんは、この世でオンリーワンかも。


「…護衛にはアヤノさん達を予定してたんだけど。良い方向のキャンセルだから文句は無いでしょうね」

「なんか彼女達を俺関係専属に使ってる気がするけど、どうなんだろうね?」

「どうなんだろうって?」

「俺も男だから、女性達だけ側に置いておくのは外聞も良くないかと」

「…少し認識するのが遅い気がするけどね。

 装備面ではリミエンでは最高峰だし、いずれ金貨級パーティーに到達すると思う。

 そう言う人達と信頼関係を結べているって面では二重丸。

 仲良くするのは…妻としては三角。女としてはバツかな」


 女としてはバツって、独り占めしたいとか、他の女と話すのを見てるとイライラするって言うやつだね。


 妻として三角ってのは、感情的にはバツなんだけど、ビジネス面、安全面など考えれば、優秀な彼女達を使うのはやむ無しって言うところかな。


 でも俺は彼女達意外のパーティーを知らないからな。

 それで良く冒険者って名乗れるよね。


 エマさんの行動は分かったので、次はキリアスからの移住者達について聞いてみた。


「貴方の考えた通り木材の生産、運搬と果物の採取、魔物退治を柱にすることで伯爵様がダンジョン内とリミエン地域への居住を認めてくれたわ。

 冒険者ギルドと商業ギルドはダンジョンに出張所の設置と一名以上の常駐を決定してる。

 それに伯爵様も一定期間の派兵と役人の投入を決めたわ」

「派兵を? どうしてそんな大掛かりなことを?」

「一から町を作る機会なんて無いでしょ。

 それに災害とかで多数の市民が避難した場合の対応を学ばせる為よ。

 数名を一ヶ月交代で半年ぐらい送り続けるって」


 この世界に災害対応マニュアルなんてないだろうから、生きた教材に使うつもりか。

 それなら伯爵様からしっかり受講料を戴かないとね。


「気になるのは食料問題だけど」

「ある商会から毎日物資が届けられているわ。新興の商会なのに凄いわね。

 それと、目端の利く大手も支援と言う名目のお零れ頂戴作戦を開始するみたい。

 まぁ、そっちはレイドル副部長が旗振り役だけど」


 新興商会はブリュナーさんのリミエン商会のことだね。

 洗浄剤と紙の生産に必要な物資の調達をお願いしてるんだけど、難民の支援が出来るほど儲けが出てるのかな?

 どちらも正式販売は年明け移行で、まだ始まっていない筈。寧ろ現状は大赤字だと思うけど。


 他には美容部門を立ち上げてるけど、これもまだ軌道には乗っていないよね。

 クッシュさんのお店も傘下に入れてるけど、大した売上げにはならないだろうし。

 俺関係だと後は『ガバルドシオン雑貨店』か。国王様に献上する、車内でも遊べるチェスセットの製造はどうなったのかな?


 ブリュナーさんがどうやって資金と物資を融通しているのか知らないけど、侯爵家の護衛をしていた人だから過去に築いた人脈をフル活用したのかな?

 まさか投資でお金を増やしてるとか?

 昔からそう言うハイリスクハイリターンのマネーゲームは普通に行われているからねぇ。俺は怖くて手を出せないけどさ。


 他にも地下ダンジョンで起きたことを教えてもらっている内にリミエンの城門に到着した。

 アルジェンは黙って居れば人形に見えるから喋らないようにと釘を刺してある。


 城門には良く会うグレス副隊長は居らず若手が二人立っていて、機械のように淡々と業務を行っていた。


「冒険者ギルド所属のクレストさんですね、通って良いですよ」

と文字が黒色に変わったギルドカードを見て何もなく通してくれる。


 これが当たり前だが、知らない土地だとこうは行かないからね。


『一人動きましたね』


 ドランさんが姿の見えない人の存在を感知したようだ。多分商業ギルドの雇っている人だろう。

 監視が付いていたと知っているから今は何も思わないし、この人達のお陰でリミエンの平和が守られているのだと思うと応援してあげたくなる。

 だって決して人前に現れることなく陰から平和を守るなんて、ヒーローみたいで格好いいもんね。


 それからまずはリミエンの自宅で待つシエルさんとマローネに挨拶をする。


 レーダーでペンダントの反応が有ったことをシエルさんも知っていたので、始めは落ち着いた反応を見せていたものの、徐々に感情が高ぶってきたのか涙を流しながら抱き付いてきた。


「今回だけですよ」

とエマさんが見てみぬ振りをしたのは俺に対してか、それともシエルさんに対してか。


 リビングで猫用玩具で機嫌良く遊んでいたマローネを抱き上げてキスをしたエマさんが、いつものネコネコ間接キッスを敢行したが、残念ながら今日も前脚でブロックされた。

 そんなに猫の嫌いな匂いが出ているのかとショックを受ける。


「クレスト様、お風呂を用意しましょうか?」


 シエルさんの手には既にバスタオルがあったので、質問ではなく強制だよね…毎日寝る前にはアルジェンに『浄化』を掛けて貰ってたから服も体もそんなに臭くはない筈。

 この後、最低でも冒険者ギルドに寄って戻って来たことを報告しないといけないだろう。

 商業ギルドと伯爵様への連絡を入れる暇があるなら、早くダンジョンに向かいたいけど。


「クレストさん、お疲れでしょうから今日は家で休んで。

 ギルドと伯爵様には私から連絡してくる。

 良いブーツをくれたから使わなきゃ」

「今ダンジョンにいるのはブリュナーさん、ベルさん、オリビアさん、ルケイド、ラビィ、ロイとルーチェ、ビステルさんだね?」

「そうね、合ってるわ」

「それならやっぱり今日行くよ」

「それなら…じゃあ冒険者ギルドだけ行きましょうか。ライエルさんに挨拶しないと怒られますよ」


 レイドルさんには俺の帰還の報告が行っているだろうから、冒険者ギルドに移動してライエルさんと一緒に待っている可能性が高い。

 伯爵様にはその二人から報告して貰えば済むし。

 

 ここでリュックに入っていたアルジェンとドランさんを取り出してシエルさんに紹介することに。


「その可愛らしい御人形さんは、ルーチェちゃんへのお土産かしら?

 それにしては生きているみたいにリアルですね」

「そうなのです!

 パパとママの娘のアルジェンなのです!」


 俺の手の上で自己紹介すると、いつものように横ピースを決める。


「…動いた…人形じゃないの…?

 信じられない」

「種族は対外的には『妖精』って設定なのです!」

「まぁ、未知の生物だと思ってくれて問題無いから」


 アルジェンは基本的に嘘は付けないけど、それが『設定』だと言えばそれに従った言動を取ってくれる。

 俺の記憶領域に勝手にアクセスして色々とやらかす習性があるが、基本的には俺を守る為の行動としてやってくれている…筈だ。


「それと水晶のドラゴンの幼体も預かってる。

 この子はドランさん。たまに残念な時があるけど、ドランさんのお陰でキリアスから脱出出来たんだ」

「綺麗な子ですね。水晶を削って作ったみたいです」


 シエルさんがドランさんを自分の手に乗せ、背中を撫でていると、

『この姉さん、愛撫が上手!』

と蕩けたような声を出した。

 単に撫でてるだけで、そんなに違いが出るものか?

 ひょっとして、彼女にはお掃除で鍛えた隠れスキルがあるのかも。


 それから久しぶりに我が家のお風呂に入ったのだが、アルジェンとドランさんも付いてきた。


「なる程、その股にある邪魔な物が人間の男性の生殖器だったのですね!」

とアルジェンが何をじっくり観察するのだ。


「私の裸を見ても反応しないのはおかしいのです!」

『アルジェン、お風呂は声が響くから大声は出さないようにね』

「その前に観察するのをやめようか。

 だからそこ、引っ張らないの!」


 マジで魔界蟲の考えがよく分からない。

 ドリルみたいな本体さんが生み出したのがこのアルジェンだけど、人間の体に興味があるのかな?


 ヘチマのブラシで自分の体を洗って、アルジェンの背中をゴシゴシ…必要あるのか?

 そのアルジェンはドランさんをゴシゴシ…そっちも必要無いと思うけど。

 ちなみに手掴みするブラシと木製の柄にヘチマを取り付けたブラシの二つが昔からあるそうだ。


 次に頭を洗ってシャワーで良く流す。


「シャワーは初めてなのです!

 くすぐったくて気持ち良いのです!」

『シャワーは僕には刺激が足りないかな』


 ドランさんの水晶の肌じゃ仕方ないよね。

 それより気になることが。


「アルジェン、羽根は洗わなくて良いのか?」

「羽根は物理的にある物ではないのです。

 収納しているのではなく、使うときには魔法で作っているので洗うことは出来ないのです!」

「じゃあ、ドランさんの羽根もだね?」

『そうだよ。この体に物理的な羽根が有っても飛べないよ。

 僕らが羽根を出すのは気分の問題。羽根を動かしてると飛んだって言う実感が沸くよね。

 大人になったら物理的な羽根が生えてくるけど、体を大きく見せ掛ける、盾の代わりにする、格好いい技の発動に組み込む、そんな役目しかないから。

 ちなみに羽根を破られたドラゴンが落下するのは、単にビックリして慌てたか、わざとそう言う演出してるだけだから』

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