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第56話 一夜を過ごして東へと

 鋼鉄王様が気さくに話をしてくれるようになった。

 いやぁ、まさかこんなに偉い人と仲良くなれるとは、骸骨さんって凄い存在だったんだね。


「先を急ぐそうだが、それ程までにエマと言う娘に会いたいのだな?

 ラサベラを嫁に考えておったのだが」


 ブッヘッ!

 ゴホッ! ゴホッ!


 アンタなっ! 飯食ってる時になんちゅーこと言いよるねん?!


「アレでもお主のことを気に入ったようでな」

「気に入られる要素を無かったかと」


 マジ勘弁してくれよな…俺を半殺しにして骸骨さんを引っ張り出そうとするような女性、俺の好みな訳がないだろ!


「東のバルム婆の土地を越えるのは、クレスト君の状態では無理だろう。

 少々脚が速くなったところでな…常時セラドリック様が出ている状態を維持出来んとなると、腕利きの護衛が必要だ。

 だが今の儂は兵を割くことが出来ん。強くて信頼出来る奴を付けようとすれば、儂の子供達ぐらいしか居らぬからな」


 東に居るのはバルム婆と言うのか。


「お気遣いなく。いざという時は本気を出しますから」

「ラサベラの魔法に抵抗出来ん君にそう言われても、ヨシ、分かったと送り出すのは難しい」

「と言うことは、バルム婆は精神的な攻撃をしてくるのですか?」

「幻影魔法騎士団と言うのが厄介でな」


 名前から想像すると、幻を見せて撹乱させてかは忍び寄ってズドンと来るパターンかな。


「過去の戦闘記録を教えてくれますか?

 手の内さえ分かれば、アルジェンとドランさんが対応出来ると思うので」

「それは構わんが…ラサベラはいらんのか?

 儂の娘の中でも器量よしの方じゃと思うが」


 悪いけど、バスタオルの下から激しく主張していた胸しか記憶に無い…。


「今夜一度抱くぐらいの時間は取れぬか?

 それで本人を説得して欲しい」

「逆効果にしか…」


 おいおい…実の娘になんてことをさせんだよ。

 それともコッチじゃ同衾と結婚は完全な別物扱いか?

 出生率の低さもあるから、チャンスは逃さないって考え方が強いだけかも知れないけど。


「そうでもせんと…儂でも暴れ出したラサベラを抑えるのは難しい」


 たった今、鋼鉄王の評価がストップ安になるまで大暴落したよ。

 偉大な王様でも娘には弱いって人間味?があるのは良いことだけど。


「俺、リミエンに好きな女性が居るんですよ」

「バレなきゃ浮気は成立せんよ」

「嘘は付けない性格なので。多分、顔に出ますよ」

「それなら儂の娘がお主をレイプしたと言う旨、証書を発行しよう」


 …そこまでやるの?

 やっぱり時代はストップ・性被害だよね。どんな理由でも無理矢理は良く無いよ。


「それなら骸骨さんに変わって貰ったら良いのです、モグモグ」

「体は俺のだよ?」

「パパだっておねーちゃんと一度やってるので問題ナッシングなのです。

 寧ろ溜まるので定期的に放出するべきなのです。そうしないとパフォーマンスの低下に繋がるのです。

 これは女性の側も同じなのです。寧ろホルモンバランスの調整の為にもお勧めするのです」


 なんかアルジェンが凄い事を言い出したな。魔界蟲さんってそんな知識まで持ってたのにビックリだよ。


「そ!その通り! 儂もそれを言おうと」


 明らかに嘘ですね…だけど…まぁここには二度と来ることは無いんだし…そこまでキリアスで一番まともそうな鋼鉄王の頼みじゃ断り切れない…。

 それに…俺も男の子だし…ね。出したいって欲求は普通に持ってるからさ。


「分かりました…それで一宿一飯の恩返しになるのなら」

「本当かっ! よっしゃっ!」


 凄く複雑な心境だよ。まさか父親が娘の為にこんな直談判を持ち掛けてくるとは。

 人間と魔族の違いもあるんだろうけど。


 部屋に戻り、歯を磨いて…凄い緊張するよ。


「男の子ならセラドレスト、女の子ならセラベラ」


 そんな独り言を呟きながら入ってきたラサベラさん…頼むから一発で命中しないで!



 チュンチュン…。


 目が覚めると、天蓋付きのベッドで寝ているのは俺一人だった。

 もちろん真っ裸で…。


 でも俺の記憶にはラサベラさんの声も匂いも感触も全然残っていない。

 何故なら骸骨さんが行為の直前にバトンタッチしたからだ…これって俺、浮気したことにはならないよね?

 微妙に損した気分になりながら、服を着て部屋を出る。


「夕べはお楽しみでしたのです!」

とアルジェンが飛び付いてきた。


「いや、骸骨さんに全部持っていかれたから俺は全然だよ」

「ラサベラはちょーご機嫌なのです!

 今頃検査薬の結果を楽しみにしてるに違いないのです!」

「そんなのあるの?」

「キリアスは技術大国でもあるのです!

 無いと思うのはマズイのです!」


 根拠は無しか。どうでも良いけどね。


「とりあえず、『洗浄!』なのです!

 特に下半身!」


 …確かにそこは綺麗にしておきたいな。


『クレストさん、体調はどうです?

 かなり激しく動いたみたいですが』


 そう言う報告はいらないから…。


 ベルを鳴らしてメイドさんを呼び、朝食の後にここを出る事を伝えると、

「もっとごゆっくりなされた方が。

 ラサベラ様もあんなに嬉しそうなので」

と意味ありげに笑みを浮かべた。


 まさか本当に検査薬があって…父親になったのか?


「ですが愛する女性のために苦難の道を選ぶクレスト様も素適です!」


 煽てられても何も出さないから…いや、溜息は出るか。


 それからダンジョンで収穫した食材で作ったというベーコンエッグ、サラダ、パン、スープと言う一般的な朝食でお腹を満たす。

 それからアルジェンにお弁当だと大量の食事が渡されたようだ。


 食事の終わるタイミングで鋼鉄王様と御家族、重臣達がわらわらとやって来た。


「やはり出発するのか。

 引き留めたいのはやまやまだが…それはお主の望むことでは無いから諦めておる」

「はい、そこだけは譲れませんから。

 ですが、こんなに良くしていただいた御恩は忘れません」


 どうやって鋼鉄王の領地を通り抜けようかと本気で悩んでたからね。

 それがVIP待遇とは、人生何が幸いするか分からないものだな。


「亡くなったセラドリック様とまたお話しをさせて頂いた御礼としては物足りんし、それにラサベラにも良いモノを授けてくれたしの」


 …まさか本当に命中しちゃった?


「クレスト様、いつかこの子を連れてお会い出来る日を楽しみにしております」


 深々と頭を下げるラサベラさんに、絶対に来るな!と叫びたくなる。


「バルム婆の領地に入るまでは護衛を付けさせてもらう。その方がトラブルを起こさずに済むからの」


 でもそれだと移動速度が落ちると思うけど。


「出来ればフリーパス出来る物品の方が良いんだけど」

「領地内と言え、一枚岩ではない。印となるものを見せても大した効果は出ぬと思う。

 それなら王家の者を一人連れて行く方が余程マシだ。

 息子の中でも一番脚の速いタートスを付けることにした。連れて行ってくれ」


 タートス? 英語だと陸亀って意味じゃない? コッチの言語と英語はイコールではないけど。


 ぺこりと頭を下げたのは、身長二メートル超えのヒョロリとした青年だ。


「タートス、バルム婆の領地までの道案内を頼むぞ」

「任せてください! 二日でキッチリ送り届けます。その後、領地境の防衛の任務に入ります」

「ああ、よろしく頼む」


 大勢の人…と言うか半分は魔族か…に見送られ、パンイチで渡った跳ね橋を渡る。


「久し振りの外! シャバの空気ウメー!」


 タートスさん、まだそれ程空気に変化は無いと思いますよ。


「なぁなぁ、ねーちゃんとヤッタんだろう?

 どんなかった? 聞かせてよ!」


 うぜぇ…こんなのと二日間も付き合うのか。

 鋼鉄王は割とまともそうだったけど、息子がこれだと将来が心配になってくる。


 ドランさんと合体した俺より僅かに遅れて付いてくるタートス君…さんから君に変更だ…の脚に、確かに速いと感心するがスタミナはどうなのだろう?


 丸一日で幾つかの町をタートス君のお陰でトラブル無く通過してアルジェンが不機嫌そうだが、タートス君に八つ当たりするのは間違えていると思う。


 しかし王家の威光と言うのは有難いものだな。

 もっとも本物の王ではなく、地方の豪族みたいなものだが。それでも領地の中ではタートス君が居ればどこでもスイスイのフリーパス。

 こんな優越感を味わうと、権力にしがみ付きたくなるのも良く分かる。


 夕方に到着した町で宿を取るが、タートス君の相手に疲れて飯、風呂、寝るの三連コンボを決めることにした。

 そのタートス君は夜のお店に行くとウキウキしてたよ。


 翌朝、スッキリした感じのタートス君を連れて町を出る。


「気持ち良かったよ! 泡の国は天国だね!」


 へいへい、良かったですねー。

 多分召喚勇者が広めた風俗なんだろうね。

 キリアスはそちら方面でもコンラッドより発展しているようで何よりだ。


「このまま進めば、夕方までにバルム婆との領地境に到達しますよ」

と休憩中に地図を広げてタートス君が出来る男を演出する。


「境はどんな感じ?」

「森ですねー。お陰で木には困らないんだけど。

 中に厄介な魔物が居てね」

「どんな奴?」

「アレは魔法の効かない木の魔物だなー。

 火で燃やされないよう、『耐火』を掛けて前面に押し出して来られると結構きびしいんだよねー」


 リミエンから消えたって言うマジシャンキラーがコッチに移動していたのかな?

 魔法が効かない、火も効かない、それだと倒すには物理的な攻撃しかないのか。


 それだと突破するには斧かチェーンソーが必要だな。

 光剣も魔力を熱に変換する武器だから、耐火で無効化される気がする。


「ちなみにそのバルム婆ってどんな人?」

「腐ったエルフです。腐っていないエルフなんて居ないと思いますけどねー」


 多少の偏見は仕方ないとして。

 エルフと言えば、一応は俺の父ちゃんか母ちゃんな訳だ。ステータス上でしか確認出来ないが、寿命を半分持っていかれて平気だったのは俺がハーフエルフだったからだ。


「エルフはどうして腐ってんだ?」

「そりゃ、美男美女だとアレコレされるじゃないですかー。

 奴隷としても人気が高かったそうですよー。今はだいぶ数を減らしたそうですけど。

 そう言う意味だと、表に出てくるエルフはバルム婆ぐらいですかねー」


 なるほど、不幸な過去を持つ種族って訳か。

 それだと俺って望まれずに産まれた子供ってことか?

 それは少しイヤかな…。


 そもそも元魔王のセラドリックも召喚されたはずなのに、今更ながらハーフエルフっておかしいよね。

 骸骨さんの記憶もかなり怪しくて、本当はこちらの世界で産まれた勇者の家系と考えるのが正解だと思うのだ。


 確かめようがないけどさ。

 それよりさ、骸骨さんってキリアスから大量の貨幣を盗んできた疑惑があるんだけど、それってこのバルム婆の領地でかな?


 バルム婆がエルフなら、鋼鉄王と同じく生前の骸骨さんを知っている可能性が高いよな。

 意外とコッチも楽勝で通して貰えるんじゃないかな?

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