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第0話 まずは現状整理を…やはり精神的ダメージは防御出来ないのです。

新連載と言うか、骸骨スラ3から方向が少し変わるので、気分転換も兼ねて別タイトルとしました。


前作で遣り残していることを少しずつ回収したいと思っています。

(本日は2話投稿しています…番外編はカウント外!)


「クレストさん! なんですか、この破廉恥な下着の数々は!」


 骸骨さんが何故か持っていたエッチな下着を俺に突き付けるエマさんにタジタジな俺。


「それは俺の中のもう一人の俺が」

なんて答えたら、まちがいなく中二病患者専用病棟送りだ。


 でも悲しいかな、それ…つまりもう一人の俺と言うのは事実なんだ。

 エマさんだって骸骨さんの存在、認めてくれたよね?

 その人の持ち物なんだと思って欲しい…無理かな?


「あんちゃん、こりゃ暫くクチ聞いてもらえんかもな」

と運良く目の前に転がってきたリンゴを前足でキャッチしたラビィがガブッと齧る。


「もう…私達はそのうち夫婦になるんだから、隠し事はなしよ」

「えっ!? 夫婦…」


 顔を赤くしたエマさんが恥ずかしそうに下を向く。


「なんや、もう喧嘩せぇへんの?」

とガッカリする子熊姿のラビィにアイアンクローを噛まそうとしたのだが、スルリと逃げられた。

 脚が短いのに逃げ足の早いこと。さすが熊か。


「そうよね…あれだけハッキリ意思表示してるんだし。

 二人がお互いのことを大好きってことは皆が分かってるし」


 そう言うアヤノさんがエマさんの両手を取り、

「バンザーイ!」

と言って上げさせた。


 どうしてそうなった…?


 そりゃさ、一回死んだ後の勢いって言うか…はっちゃけたのは認めるけど、いきなり夫婦って飛躍し過ぎだよね?


 ラビィを捕まえようと走って疲れた体を横にして、少し状況を整理してみよう。



 ことの起こりはもう十数年も前のこと。

 俺の同郷…日本から転生してきたルケイドの実家(カンファー家)が所有する山林に異変が起き始める。 

 リミエンから馬車で一日程の距離にあるこの山々は、元々リミエンで消費する木材の栽培に利用されていた。


 しかし、苗木を植えても全く育たなくなると言う前代未聞の異変が複数の山に発生。

 林業ギルドだけでなく、冒険者ギルドや商業ギルドも異変の原因を突きとめるべく調査に乗り出したのだが、原因不明のまま調査を終える。


 雑草が生い茂るただの荒れ地として放棄されていたこの山々に俺達が訪れることになったのは、リミエンから一時間の距離にある貯水池近くにダンジョンが見つかったことに起因する。


 そのダンジョンは魔法によって入り口を隠蔽されていたのだが、何かの理由でその魔法が効力を失った為にダンジョンの存在が明らかになったのだ。


 ダンジョンの入り口は隠蔽されると言う事実が確認された以上、明らかに異変が起きているカンファー家所有の山々にもダンジョンが存在する可能性がある。

 そう思い付いた俺は(実績は…無いに等しいが)パーティーを組んでいたルケイドとオリビアさんの他、冒険者ギルド職員のエマさん、凄腕冒険者のベルさん、そして女性四人の仲良しパーティー『紅のマーメイド』と共に調査に向かった。


 そして魔界にしか棲息しない筈の魔界蟲との連戦後、地下に広がるダンジョンを発見するに至ったのだ。


 そしてそのダンジョンでは『不死の王』を自称するバンパイアのノーラクローダとの戦闘の末、俺は自分の放った魔法が原因で死亡した。


 しかしノーラクローダとの戦闘はダンジョン管理者に仕組まれたものだった。

 それには思うところもあるが、仲間達を救う為には俺自身がダンジョン管理者となるしか手は無い、そう考えた俺は迷わずダンジョン管理者として生きていく決意を固めた。


 太陽の光が唯一の弱点だったノーラクローダに対し、ダンジョンの天井をぶち抜くと言うダンジョン管理者だからこそ可能な荒技を使って仲間を勝利に導いた俺は、水晶と化した自分を見せて仲間達に俺のことを諦めさせようと考えた。


 だがギャンブル好きな神様…そう言えば名前を聞いていなかったな…が乱入し、賭けに勝てば俺を再生してくれると持ちかけてきたのだ。


 賭けに勝ったとしても、俺の替わりに誰か一人をダンジョン管理者にしなければならなかったのだが、既に魂だけの存在である骸骨さんが名乗りをあげてくれた。

 その選択に俺も納得し、賭け自体も俺の勝ちとなったのだが、骸骨さんを身替わりにすることにエマさんが反対して事態は一変した。


 骸骨さんが身替わりになることを本心では望んでいなかった俺を助けてくれたのは、俺の中に居座って中々出て来なかった魔界蟲。

 クルクルと回り続けて魔力を発生してくれる有難い奴だが意思疎通は不可能だった。


 しかし何故か突然、コイツがダンジョン管理者の役目を引き受けてくれたのだ。


 そして神様の力で無事に復活を遂げた俺だが、魔界蟲が俺の中から出て行った副作用なのか魔力を失ってしまったのだ。


 転生者特典とも言うべき『アイテムボックス』の維持には魔力が必要だったらしく、俺達の目の前に『骸骨さん』が生前に貯め込んだお宝一式を皆の前に披露することになった。

 出来ればあのエッチな下着やアダルトグッズの数々は見せたくなかったのだが…。


 その『骸骨さん』が俺の中に居るのは、この世界の神様でさえ有り得ないと驚くような珍事である。


 どうやら実は俺がこの世界に転生したのはこれが二度目らしい。

 一度目の転生でこの骸骨さん…生前は魔王と呼ばれていた俺が、何故か骸骨になってダンジョンに眠っていたのでそう呼んでいるのだが。


 二度目の転生では何故かスライムに転生した俺だが、偶然発見した骸骨さんと俺の魂を融合することで人の体を得ることが出来た。


 骸骨さんも長い眠りに就いたせいか、それとも死亡したことが原因なのかは不明だが、多くの記憶を無くしている為、何故魔王と呼ばれていたのか定かではない。


 だが骸骨さんが生前貯め込んだアイテムの数々は俺の生活や今回のダンジョンアタックでも役に立ってくれている。

 そこは非常に感謝している。


 だけどね…


「何これ? 後ろなんて紐よ!

 下着の意味ないわね」

とTバックの下着を見せられ、防御不能の精神的ダメージの追撃を受ける俺の身にもなってくれ…。


 今の俺は復活直後のせいか体調も今ひとつ、魔力もゼロで完璧な役立たず状態。

 あのアイテムの数々を前に何も出来ずに居るわけだ。


 彼女自身達があんな恥ずかしい下着を纏った姿を俺に見せにくるようなことが無いことを祈るばかりだ…。

 いや…多少は見てみたい気持ちもあるが、仲間にセクシーな姿を見せ付けられたらリビドーを抑え込む自信が無い。


 それで無くても、農村出身の四人は性的行為に対する精神的障壁が薄いのだ。

 ウッカリ手を出して農村での出来婚コースに引き込まれるのはご勘弁…だけど、それはそれで憧れのスローライフか?

 意外と悪くない…いやいや、そんな安易な選択は絶対後悔するに決まってる!


 骸骨さんとスライムの俺が魔力融合によって得た体は、骸骨さんの骨(骨しか無いだろ!と突っ込まないで)に含まれる遺伝子情報を再生したと思っている。

 

 外見も触った感じも完璧な人間だったのだが、それでも俺自身がその体を完全な人間とは認めることが出来なかったのは、スライムとして過ごした日々の記憶のせいなのか。


 そして今回神様が再生してくれたこの体は、溶岩で燃え尽きた骸骨+スライム×三の前の体と全く変わらない。

 現時点では魔力が無いのは大きなマイナスだが、肉体的にはさすが神様と言うべきか、骨とスライム成分百%の俺よりしっくりとくる。

 

 実はこの世界の人間は、魔物と同様に魔石を持つ。

 俺にも魔石がある筈なので魔力もいずれ回復するのではないかと期待しながら、ダンジョンに吹く風にそよぐ世界樹を見上げる。


 このダンジョンを作ったのは、この世界樹だ。

 その事はダンジョン管理者となったことで知り得た情報だ。


 この世界樹を守る防衛機能がダンジョンなのかもな、と誰も正解を知らない回答が頭に浮かぶ。


「大きな樹だな」


 子供の頃に見上げた一本の大木…そう言えばあの木に似ているのかもな…。


 その世界樹の脇には丸い泉がある。

 正確にはこれは泉ではなく、このダンジョンのコントロールセンターなのだが、泉と呼んでもそう差し支えは無いだろう。


 その泉の水面に浮かび、静かに回転する銀色の物体。

 元は魔界蟲だったものだが、これのお陰で俺も骸骨さんも復活することが出来たのだ。


 何も語ることの無いこの銀色の物体にもう一度感謝を捧げ、踊り子の衣装を着たエマさん達の手招きに応じて立ち上がる。


『クスクス』


 気のせいか、そんな声が何処からか聞こえたように思えたが、耳を澄ませてももう聞こえてこない。

 空耳だと断じて仲間達のもとへと歩き出し、そのことはさっぱり忘れてしまったのだ。

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