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銀色のダンジョン管理者は今日も水面で回り続けます【第二部として完結】  作者: 遊豆兎
第2章 越えると見えて来るものがあるのです!
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第23話 お散歩してきたのです!

 アルジェンがデザインしたオーガバトラー・ビアレフと言う魔物を左腕を犠牲にしつつ倒すことに成功した…俺が戦わなくても、アルジェンの銀龍波の一撃で片が付いたの思うのは気のせいだろうか?


「『エクストラヒール!』なのです!」


 無駄に疲れたと思いながら、アルジェンの治癒魔法で傷を癒す。

 左腕が元通りにくっ付いたか確認し、異常が無さそうでホッとする。

 

「これから何か設計するときは、俺に相談してくれよ。

 またビアレフみたいなのを作られたら、堪ったもんじゃない」

「ミハルの鎧を先にダサいと言ったのはパパなのです!」

「ただのパワードスーツに、あんな戦闘能力を持たせるなって言ってんの。

 木の鎧だからダサいと言っただけで、見た目を普通の金属鎧にするだけで良かったの!」

「それならそう言って欲しかったのです!

 言わなかったパパも同罪なのです!」


 そうなのかな?


 あの木の鎧をデザインし直すだけで、こんな目に遭うとは普通は思わないだろう。

 でもアルジェンに人間の普通を理解しろと言うのがムリなのかも。


「分かった、次からは仕様書を作ってね。

 それなら俺も意見を出しやすいからさ」

「そうするのです。

 そうだ! 森で収穫した果物を食べてみたいのです!」


 俺に文句を言われて少ししょげていたアルジェンだが、急に思い付いたようにアイテムボックスから次々と果物を出して並べていく。


「パパ…本当にこのデカイだけの大きな実が食べられるのでありますか?」

「俺の記憶にあるのとは種類が違うと思うけど、多分いけるだろ。

 ルケイドが居れば『植物図鑑』で判断出来るんだけど。まあ、食えば分かるよ」


 ミハルとゲラーナには森の中で見付けた巨大なスイカを丸々一玉与え、俺とアルジェンはカットしたスイカをクチにする。


「外は黒いのに中は真っ赤なのです!

 これだと食べ頃が判断できないのです!」

「…いやさ…確かにスイカを冷やすのに氷は欲しかったけど…」


 アルジェンに氷を出して貰ったのだが、俺と同じくコイツも属性魔法を発動すると災害級での発動になるようだ。

 居住地の一部とその後方を延々と氷の柱が覆い尽くす。

 ゲラーナが砕いた氷でかまくら擬きを作ってスイカを冷やすことにしたのはあくまでついでであって、別の話だ。


「チマチマとした魔法は苦手なのです!

 やっぱり私はパパの娘なのです!」

とスイカを持ったまま抱き着いてくるので、白いシャツが赤く汚れる。


 俺がこの子を娘と呼ぶには抵抗があるし、これから先、アルジェンをどう扱えば良いのか非常に悩ましい。

 能力的には優秀だと評価せざるを得ないのだが、ストッパーもブレーキも持たない性格だから、何かやって貰うにしても一人でやらせる訳には行かなそうだし。


「それにしても、このスイカも甘くて美味しいのです!」

「大味かと思ったら、想像以上の絶品だな。

 ちなみにスイカの皮の白い所は、煮物や炒め物の具材に使えるんだぞ。

 米はまだ買ってないけど、糠漬けにしても良いしさ」

「…皮には味が無くても美味しくないのです」

「だから味付けして食べるんだ。栄養価も高いし、棄てるのは勿体ないから。

 スイカは種も天日干しして、フライパンで炒るとオヤツになるんだけどね」

「貧乏臭いと思われそうなのでイヤなのです…」

「人間が贅沢になりすぎただけだよ。

 野菜や果物って皮の方が栄養あるのに、それを棄てる方がよっぽど馬鹿げてる」

「そうかも知れないけど…私はやっぱり赤い部分だけで満足なのです」

「そう…ま、そのうち食べさせてみるよ」


 スイカの種をププププと吐き出し、スライム達に種と皮を食べて貰う。ゴミ掃除しなくて済むのでとても便利だ。


「…暇、なのです」


 セーフティゾーンの設定も終わり、俺とアルジェン、ゲラーナとミハルの二人と二体で…アルジェンを人としてカウントして良いのか微妙なところだが…キリアスからの帰りを座ってボケッと待っているのだから、暇なのは当然だ。


「ゲラーナと空の散歩をしてくるのです!」

「なるべくセーフティゾーンから出ないようにね」

「了解なの…で…空って、セーフティゾーンはどうなのか分からないのです」


 言われてみれば、だ。

 森の中だと警報的な物で教えて貰えるのだけど、それが空にも適用されているのかは分からない。


「ハローハロー、こちらアルジェン!

 ……無駄にダンジョンポイント使ってんじゃないよ!、だって? 本体さん、酷いのです!」

「…それは俺も思うぞ」

「面目ないのであります。

 ……私が水晶板をタップしても反応しないように設定変更をしたと? それは残酷なのです!」


 アルジェンには悪いが、俺もそれが正解だと思うよ。コイツに触らせると、次に何をやらかすか分からないもんね。


「それは後で話し合うのです!

 それよりセーフティゾーンのことなのです。

 ……空もなのですか!?

 あ、天井があるから設定が可能と」


 それなら安心だね。

 で、もう一つ疑問がある。


「なぁ、本体さん。セーフティゾーンの外からさっき鶏の魔物を連れて来たんだけど、セーフティゾーンって全部の魔物をシャットアウトしてる訳じゃないんだな?」

「……ふむふむ、セーフティゾーンは五段階のフィルターで構成されているのですか。

 一番目の粗いフィルターが一番外で、魔力の大きな魔物程、粗い目のフィルターで弾かれると」


 へぇ、目の違うフィルターで通す魔物を選別してるって訳か。

 一番内側にある、一番目の細かいフィルターを通り抜けられる魔物は、人に危害を加えるようなやつでは無いって判断なんだな。


「ゲラーナは結構強い魔物だと思うけど、この子にそのフィルターは適用されないのか?」

「……ほぉほぉ、味方設定の魔物は適用外なのです。

 そうでないと、仮に外で戦闘が起きた時に救援に行けないのであります」

「それは有難い。さすが本体さん、芸が細かいな」

「当然なのです!

 ではお散歩してくるのです!」


 ゲラーナの頭に乗ってアルジェンが遊びに行ってしまった。俺の足下にはミニミニ魔界蟲さんと白い鶏。

 鶏はスイカを啄み顔を赤く染め、魔界蟲さんはタイプ・テヴァに変身して走り回っている。コイツも結構自由なやつだな。


 ミハルはスイカを食べて満足したのか、目を閉じて立っている。多分寝ているのだろう。

 そう言えば、モッカマンを改造してあのビアレフが生まれたのだと理解しているのだが、ビアレフがミニミニ魔界蟲さんに食われた現状でモッカマンを出すことは出来るのだろうか?


 未だもってアルジェン達のやることが理解出来ない。

 ビアレフも魔力で出来た鎧と魔物だから、魔力に分解されてミニミニ魔界蟲に吸収されているのだろうか?


 そうであれば、その魔力をミハルに渡せば再生するのだろうが、また中にオーガが居て暴れ出したらアルジェンが居ない今は抑える術が無い。

 間違っても俺一人の時には試さないのが賢明だろう。


 それにしてもゲラーナと言い、ミハルと言い、破格の高性能な魔物だよな。

 ウルトラレアクラスの魔物だと思っていたが、ミハルは更にその上なのかも。火に弱いって明確な弱点はあるものの、パワードスーツを生み出せるスキル持ちなんて滅多に見つかるものじゃないと思う。


 見た目は背の高い切り株か枯れた樹の魔物だから、他の場所で遭遇したら迷わず燃やしてしまうだろうな。


 スイカを食べて満足した鶏が俺の肩に飛んでくる。

 コイツ用の餌入れと水入れも必要か。


 それにアルジェンが自分用の食器を欲しがっていたから作ってやるか。

 工具箱はアルジェンが置いていっているし、木材もある。まずはコップから作ってみるか。


 コツコツ…。


 コツコツ……。


 コツコツコツ………。



「遅い…もう夕方だぞ」


 アルジェンが戻ってくれば夕食に入れるようにとテーブルを並べて準備を整えているのだが、一向に気配が感じられない。


 もし戦闘となっても、災害級魔法の使い手であるアルジェンが後れを取るとは思えないが、何処にどんな相手が潜んでいるか分からない。

 ダンジョンの中では決して慢心も油断もしてはならないのだ。

 とは言え、魔力的に繋がっているミニミニ魔界蟲さんが吞気に構えているので、アルジェンに異常が起きているとは考えにくい。


 何か見付けて夢中で遊んでいるか、それとも果物でも採取しているのだろうと思いつつ、水晶板を出して残りのダンジョンポイントを確認する。

 時間経過と共に少しずつ回復するのは分かっていて、要は放置ゲームの放置報酬みたいなものだと理解している。


 この放置報酬はダンジョンが発展しているほど高収入になるのだが、俺がこのダンジョンを一階層に縮小させたせいで貰える量はかなり少ない。

 収支が赤字になっていないだけでも有難いと思うべきなのか。


 水晶板のページをめくりながら時間を潰していると、やたらとコケコケと言う声が近づいてくる。


 ゲラーナの羽音が聞こえ、ソチラを見ると大きな籠をぶら下げたゲラーナとその籠に山盛りの鶏が…。

 下の方の鶏は圧死してないだろうな?と少し心配になる。


「ただいまなのです!」

「お帰り。その鶏の山は何?」

「パパが保護してるその子の仲間達なのです。

 フライドチキンにしてもヨシ、」


 アルジェンのその言葉に鶏達が一斉に抗議の声を上げ始めて煩いことこの上ない。

 ざっと百羽越えの鶏達がそこら中を勝手に歩きだし、道路から茂みの中へと入って行く。


「保護してきたのか」

「そうなのであります!

 クリスマスのご馳走になんて、少ししか考えていないのです!」

「…そう…」


 アルジェンのセリフに鶏達が一斉に抗議しながら嘴で突き始めたのは仕方ないだろう。

 知能を持つ魔物を食肉処理をするのは大変そうだ。この鶏達にキリアスからやって来る子供達がぴーちゃんとか名前を付けないように願いたいものだ。


「保護したのは良いけど、放し飼いか?」

「そこなのです!

 平飼いよりバタリゲージ飼いの方が管理しやすいのです! 鶏が可哀想だからとバタリゲージをやめさせる考えを持つのは、馬鹿なお金持ちの発想なのです!

 平飼いなんてしたら有精卵は混じるし、鶏さんが何を食べるか分からないので管理は不可能なのです!

 どうやって平飼いで一日何千、何万個もの無精卵だけを回収するのか考えてみやがれなのであります!」


 各家庭で数羽の鶏を飼うのなら話は別だが、大規模な養鶏場となると平飼いは経済的に不可能だ。政治家はその辺りを良く考えて貰いたいものだ。


「でもゲージなんて無いぞ」

「普段は好き勝手に遊ばせておいて、卵を産む時に入りたくなるようなゲージを作れば良いのです!」

「そうは言うけど、どんなゲージだよ?

 バタリって糞で鶏を汚さないって言うメリットあるんだぞ」

「クラッシックを流してリラックス出来るお産部屋を作るのです!」


 それは違うと思うけど。

 外敵から隠れて身を守れるよう四方に壁があって、それでも日光浴が出来るとか羽ばたき出来るぐらいの広さがあるとか。

 それにこの鶏達が抱卵しないと次の鶏さんが生まれないのだが、この子達は卵を産んでほったらかしにする派か、それとも育てる派かって問題もある。


 ちなみに養鶏場の鶏さん達は卵を産むことに特化した種類だから参考にはならないんだよね。

 これが烏骨鶏だと話が違ってくるけど。


「飼い方はアルジェンに任せるよ。鶏さんの一番暮らしやすくて卵をバンバン産んでくれる飼育方法を探してくれ」

「任されたのであります!」


 アルジェンは何かを任せると機嫌がとても良くなるから扱いやすい。

 途中経過を見ておかないと後が怖いけどね。

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