(番外編)とある空間で
「局長! あの世界にあんな生き物っていましたっけ?」
「いや…私にも分からん。
あの世界を作った奴は、中途半端なところで放り出して逃げたからな」
白いトーガの女性職員がメロンパンとカフェラテで昼食を取りながら、モニターを見ている。
そこには黒い龍だった生物が自らを破壊し、白いオコジョに変身した様が映し出されていたのだ。
それに局長が違和感を覚えた。
「哺乳類がドラゴンになる訳がなかろう。遺伝子配列に異常をきたした?
いや…違う。あのオコジョの姿は仮初めのものなのかもな」
「どういう事です?」
局長と呼ばれた男性がポケットからプリンとスプーンを取り出し、プリンの蓋を剥がす。
「恐らく、あのドラゴンは本来の幼生体の姿に戻らず、最近食べた物に化けただけなのだろう」
「どうしてです? ドラゴンの幼生体ってウーパールーパーみたいなヤツですよね?」
「それは分からんよ。ドラゴンにはドラゴンの考えがあるんだろう」
女性職員の手からプリンを守りつつ、思案を巡らす局長の靴底が女性職員の顔面をゲシッと捉えた。
「局長! 酷いです! アシハラです!」
「毎回上司の食い物を狙う部下がどこに居るのだ?」
「俺の靴を舐めろと言うなら、素直にそう命令して下さい!」
「そんな趣味は持っておらん」
これはいつもの光景なので、部屋に居る他の職員は誰一人として気には留めない。
「下手に動けば星を割る力を秘めているとも言われる生物だ。
さして役に立たぬ生物に化けることで、その力を求められることを避けようとしたのかもな」
「モフモフ系の可愛い魔物が出ないからなのだと思っていましたよ。
あの子の所に居るのは、バラにトカゲに芋虫擬きですからね。
出番の少ないク魔族と猫がモフモフ系…普通ならフェンリルとか狼が出て来るのに変です!」
「そのうちアイツの周りは爬虫類で埋め尽くされるかもな」
「蛇は勘弁してください!
モニター監視、拒否りますから!」




