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第166話 食事の後にお楽しみ

 国王様達の家族にあったら、印刷機の禁止された以外な事実を教えられた!

 当時の最新技術でなんて物を印刷しやがったんだ!


 普通なら最初は聖書とかじゃないの?

 それが選りに選って男性&女性から魔法が解けて男性&男性に…しかもそのまま続行したってとこにビックリだよ!

 そりゃ読者の半分は女性で、その何割かは腐女子候補かも知れないけど。


「クレスト君が印刷機をそこまで推す理由は分からないが、無断で製造することの無いように頼むぞ」

「はい。その時は一報を入れさせて頂きます。

 植物から作る紙の生産を後押しするには印刷機の普及が必要となると考えているだけで、まだ研究も何も始めておりませんので」


 版画も印刷と言えるかも知れないが、個人的に印刷物と認めない。

 やはり版を手でエッチラオッチラと削る作業はアート作品でこそ活かすべきだろう。


「パパ! 話が長いのです!」


 鞄の中でスタンバイしていたアルジェンがそう声を上げると、勝手に鞄から出て来てテーブルに飛び乗った。

 鞄に入る前に自分で『洗浄』を掛けているので、テーブルを汚すことはない。


「妖精だっ!!!」


 オチビちゃん、王子、王女が揃って反応し、席を立ってアルジェンをガン見する。

 オチビちゃんに至ってはテーブルに乗り出してハイハイしてきそうな勢いだ。


「こーんにーちわーっ!

 初めまして! 皆のアイドル、アルジェンだよっ!」


 いつものポーズで挨拶すると、クルリとターンして両手を天に翳す。

 まるで新体操かフィギュアスケートみたいだな。

 その後を追ってカオリも自分から出て来た。

 動き回る時はマネキンモードに変身した方が良いらしく、頭だけが薔薇の花のマネキン姿でアルジェンのマネをしてクルリとターン。


「・・・!」

「カオリは喋れないので替わりに私が紹介するのです!

 薔薇の花の魔物のカオリなのです!

 ウドルの町で友達になったのです!」


 そこでイエーイッとアルジェンとカオリがハイタッチ。

 俺としてはカオリには元も薔薇の体で居て欲しいのだが、王家の人達の反応はこの世界の人と同じだった。


「妖精さんもビックリだけど、カオリちゃんも可愛いね!

 初めまして! 私はシャーリン! よろしくね!」

と姫巫女さんが最初に笑顔で挨拶。

 アレクセイ坊やはまだ「アレク。三歳!」としか挨拶出来ないようだ。

 その後に残りの人達の自己紹介が続く。


「そうそう、アルジェン殿とカオリ殿用にシャーリンが席を用意したそうなのだが。

 使えるだろうか?」


 国王様がシャーリンさんに頷くと、姫巫女さんがサイコロみたいな形のミニチュアのスツールを二つテーブルに置いた。

 それを執事さんが二人の前に運んでくれる。

 一辺が五センチぐらいで座面は柔らそうだが如何にも素人の手作り感満載だ。


「アルジェン、カオリ、使ってみる?」

「椅子に座ってもイース?」

「…うん、折角作ってくれたからね」

「王女様、ありがとうなのです!」


 御礼が言えるとは良い子に育ったもんだ。

 ヨイショ!と声を出してミニチュアのイスに座るアルジェン。

 それを真似て薔薇の体のカオリも腰を掛ける。


「座り心地はどうかな?」

とシャーリンさんが不安そうにアルジェンに問い掛ける。


「普段はラルムに座ってるけど、こう言う椅子も悪くないのです」

「ラルムって?」

「パパ、ラルムとピエルも紹介してあげるのです!」

「飼っているスライムなんですけど」


 二匹を鞄から出してテーブルに乗せてやる。


「二人も皆に挨拶するのです!」


 アルジェンがそう言うと、二匹がその場でポヨンと少し飛び上がった。

 これがスライム流の挨拶らしい。


「うわ!とっても綺麗ね! 宝石みたい!」

「王都で食事をしている最中に進化してこの姿になったんです」

「じゃあ進化したばっかりなんですね!」


 ウンウンと頷くように体の一部がペコンペコンと沈んだので、シャーリンさんの言葉を理解しているのだろう。


「赤いダイヤがラルム、白いダイヤがピエルなのです!

 スライムに座ると、もう立ちたくなくなるぐらい気持ち良いのです!」

「へえ!そうなんだ! 私も飼いたいな!」


 姫巫女と呼ばれる王女が大きなスライムを飼うなんて…どう考えてもこことは違う方向の光景しか想像出来ない…。


「残念ですが、この子達と同じようなスライムは、恐らく他には居ないと思います」


 だって元は俺の分身みたいなもんなんだからね。俺と同じようにスライムに転生して分裂した人が居ない限り、あのクリスタルスライムは産まれないと思う。


「その子達なら分裂出来るんじゃないか?」


 そう言えば…出来るのかな?

 でも俺が分裂したときはメッチャ痛かったから、この子達にはさせたくないや。

 でもスライムに痛覚なんてあるのかな?

 魔石を分割したから痛いと認識したのかも。


「ラルム、分割出来る?」

と念のため聞いてみると、大きく左右に体を振るように動いた。


「ダメなんだ。仕方ないなぁ」

とシャーリンさんが聞き分けてくれたのでホッとする。

 これでもし『私に寄越せ』と言われていたら、黙って国を出る決意をしたかもな。


「さぁ、腹も減ったことだ。食事にしようか」

「食べるのです!」


 国王様が合図を送ると、隣の部屋からカートに乗せた料理が運ばれてきた。ずっとスタンバイしていたのか。

 銀色の丸いドームみたいな蓋…確かクローシュっていうんだよね…が被さっていて、あれで料理が冷えるのを防ぐんだよね。

 家庭じゃまず使わないし、あったらとっても邪魔だと思う。


「アルジェン殿とカオリ殿はかなりの健啖家と聞いている。

 遠慮せず食べて欲しい」


 それを言うとホントに遠慮しないぞ。

 アルジェンとカオリのお世話をする為に二人のメイドが付いてくれた。

 幼児を世話する保母が付いたみたいだな。


 料理はパン、スープ、サラダ、ステーキと割と普通のメニューだったが、さすが良いシェフを雇っていると思わせる味と盛り付けだ。

 俺は普段通りに食べ進めるが、他の人達はアルジェンとカオリの食べる様子を面白いそうに眺めている。


 最初はカオリがどうやって食事するのか興味を持っていたのだろうが、薔薇の花がスープのカップに頭を突っこむ様子に一同唖然としていた。

 アレク坊やがカオリの真似をしようとしたのをフランソワさんがギリギリのタイミングで止めてたけど、カオリは悪くない。

 俺達を呼んだ君達が悪いのだ。


「スライムに食器洗いをさせているとスオーリー副団長から聞いたが」

「はい。ウチの子は食器は溶かさず汚れだけ食べてくれますから、とても重宝していますよ。

 それにゴミも綺麗に処理してくれるので、この子達が居てくれるおかげで旅に出て居るときにも食事の後片付けがラクで助かっています」


 旅行中に毎回まともな食事をする気になれるのは、ラルムとピエルが居るからだ。

 そうでなければ、食器洗いも一苦労だから極力手間の掛からない物にするのが普通なのだ。


「野営地でも普段と変わらん食事をしているらしいな。

 つい先日にもバーベキューをご馳走になったとアヤツが自慢しておったしな。

 おお、その野営地に基地と食事を提供する施設を作るアイデアを出したらしいが」

「はい。軍の人を分けて常時駐留する仕組みと、街道の十キロメトルごとに宿泊施設などを置くのはどうかと思った次第です」

「それはまた随分大胆なアイデアだが。

 詳しく聞かせて貰えるか?」

「はい! それはもう喜んでっ!」


 軍の駐留地、ドライブイン、それとモーテルの建設計画を一気に国王様に説明する。

 これによる最大のメリットは街道の安全確保である。


 今の街道はトラブルが発生しても最悪半日も進まなければ人の住む場所に辿り着けない。

 それが約二時間もあれば小規模でも軍の部隊が居てくれるのだから、まるで安心感が変わってくる。

 盗賊団や魔物の襲撃の備えとして、普段は訓練、パトロール、開墾など行いつつ警戒網を作りあげるメリットは馬鹿には出来ないだろう。

 勿論その為の経費も同様だが。


「うむ、移動式の宿泊施設があればそれも不可能ではない。議会に話を持っていってみるか。

 ただ、採算が取れない地域も当然出てくるだろうし、経費が問題だ」


 無駄に豪華なカーペットや装飾品を飾るから金が足りないんだよ、と言ってやりたいが我慢する。

 今の国王様が作らせた訳じゃないだろうし。


「そこは名物料理を作るとか、楽しく過ごせるように施設ごとに工夫してもらうしかないです。

 村に宿泊するより宿泊施設の方を選ぶ理由を持たせ、年に一回人気投票で順位を付けて表彰するのもアリです」

「施設自体が移動出来るのなら、作っても無駄になることは無いわね。

 地方視察に行ったときに困るおトイレや食事も、そう言うきちんとした施設が一定間隔にあると助かるわ」


 今のところ、国王様より王妃様の方が乗り気になってくれたようだ。やはり女性陣にとって移動中のおトイレは死活問題だからな。


「それに宿泊施設の運営自体も兵士に任せれば、退役後に他の旅館に就職も出来るでしょうし、料理が出来れるようになれば仕事に困らないと思います。

 それにサービス業を経験させることで、コミュニケーション能力の向上も図られるでしょう。

 食材は近隣の村々の余剰作物や売り物にならない物を使えば、村の収入を増やせます。ついでに村の特産品も販売すると良いですし。

 確かに初期投資の問題はありますが、それを上回る成果も出せる筈です!」


 王妃様が味方になってくれたので、ここで一気に国王様に攻め込んでみる。


「そう言われてみれば、悪いものではないかも…。

 なるほど、そうやってここまで短期間に業績を伸ばしてきたと言うことか。

 おぬし、冒険者ではなく発想が完全に商売人ではないか」


 呆れた様子の国王様だが、隣の王妃様は満足げな顔を見せる。

 エリック皇太子は二人を見較べ、王妃様の肩を持つ事を選んだらしい。


「父上、先程のクレスト殿のアイデア、私とジェリク、シャーリンで検討させて頂けませんか?」

「お前達でやってみるか?

 それならば、城内各部門だけでなく関係する民間への折衝含め全てやってみるが良い。

 役人共を説得し、経費を引き出し、実行にもっていくのがどれ程難しいことか、良い経験に成るだろう。

 失敗しても施設は流用出来るのだから、そう問題にならんだろうしな」


 俗に言うOJTってやつか。

 動かせない箱物を作る訳じゃないから、大きな失敗にはならないだろう。

 失敗しても国政的には何も悪化する事も無いし…強引に進めたり、人の話を聞かなかったりすると人間関係は悪化するけどね。


「クレスト殿は面白い教材を持ってきてくれたのぉ。

 普通に考えれば無駄なことだと一瞬で斬り捨てられる考えじゃが、実現したときに得られるメリットが個人の儲けだけでは無いのがポイントが高いと言うか、狡賢いところよ」

「狡賢いの?」


 シャーリンさんが不思議そうな顔をする。

 王妃様にはバレているが、まぁそれは想定内のことだ…と強がっておこう。


「当然であろう。

 街道の安全確保の先に何がある。

 通行量を増やし、リミエンに脚を運ぶ者を増やすことじゃ。

 元々リミエンは農業以外には大して取り得の無い普通の領じゃ。

 そこに馬鹿みたいな観光施設を建設中なのはお前達も知っておろう?」


 馬鹿みたいとは失礼な!

 今までこの世界には無かった施設を作ってるだけだよ。LME48リミエンフォーティーエイト劇場を作って大人から子供まで一緒に歌って楽しみたいだけなんだ!


「今のリミエンではすぐに利用者が頭打ちになるのはクレスト殿も理解しておる。

 故に継続的に人を呼び込む為の布石を打とうとしておるんじゃ。

 じゃが、その布石は国民にとってもメリットの大きな物であり、我々はノーだと一言では斬り捨てられん。

 しかも腹立たしいことじゃが、このような政策は役人の方から上がって来るべきことよ。

 それを自称冒険者から出されるとはな。

 次にリミエン伯爵に会った時に禿げておらんか楽しみじゃ」


 王妃様、百点満点の回答ありがとう御座います。


「しかしな、部隊を各地に分散させることで連絡の行き来が大幅に増える。

 その経費は馬鹿にはなるまい」

「それはリミエンの魔道具ギルドが良い具合に解決してくれることを期待しています」

「新しい魔道具の開発予定があるんじゃな?」

 それなら楽しみに待つのみじゃ」


 セキネさんから貰った魔道具馬車の解析が上手く進んでいれば、遠距離通信施設も夢じゃないはず。

 リューターさん達に超期待してるんだよね。


「アルジェンちゃん! 凄いですよ!」


 真面目なお話しをしている間に、タイプ・テヴァに変身させたミニミニ魔界蟲さんにアルジェンとカオリが乗って遊び始めたのだ。

 アレク坊やがその様子に拍手喝采。子供は何故か列車が好きだからな。

 どうでも良いけど、まだ料理の残っている皿がテーブルにあるからぶつか……


「あっ! ぶつかる!」

「大丈夫なのです! カモーン! カオリちゃーん!」


 食器の手前にカオリが蔦を伸ばしてジャンプ台を作り出した。

 それがかなりのスピードだったので、毎日こっそりと練習してるのかも。


「行っけー! 銀バラ鉄道大ジャンプ!」


 その声でアルジェンとカオリがピカッと輝き、眩しさに目を閉じた。

 そして目を開けると、ミニミニ魔界蟲さんが鹿に変身してソリを牽きながら空を飛んでいるのだ。

 各所に赤い薔薇で装飾された綺麗なソリと、赤い服を着たアルジェン。

 まるでトナカイの牽くソリに乗ったサンタさんが飛んでいるみたいだ。


 そしてソリから聞こえて来るのは、

「泣く子は居ねぇが?」


 …何故その言葉をチョイスしたっ!?

投稿のタイミングが合ったので、ミニミニ魔界蟲サンタです!


「ねえ、パパ。サンタクロースってお肉が大好きなのです?」

「なんで?」

「ロース肉って肩ロース、リブロース、サーロインの事なので、いつもどこを食べようかと悩んで三択ロースって言うのかと思ったのです!

 きっと焼いたお肉が大好きな人なのです!」

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