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うまげな話

カルトって怖いよね

 昨今カルトが流行りだ。


 トマホークトマホークと呪文を唱える人が俄に増えている。


 なんでも、トマホークなるアイテムさえあれば日本が安全になるらしい。


 だが、現実はそんな単純な話ではないし、トマホークなる聖剣があれば紅い万能ネコ型魔王や黒電話形独裁者が慄き平伏すなんて訳もない。


 そのトマホークによる敵基地攻撃だか反撃能力だとかいう必殺技さえあれば良いと説法しているが、私から見れば、お里が知れる底の浅い生説法にしか聴こえない。


 2つ3つ記事を投下しておいて、今さら根源的な話をするのも恥ずかしい限りだが、敵基地攻撃だとか反撃なるモノに聖剣や聖槍による聖唱が必須なんて事は、もちろんあり得ない。



 今から40年前の話しになるが、イスラエルによるイラク原発攻撃を記憶している人はどれくらい居るだろうか。


 あれこそマサに敵基地攻撃ではないのか?


 イスラエルはトマホークやナントカミサイルを使用した訳ではなく、攻撃を米国にも察知されないようにバンカーで入念に準備を整えたF16戦闘機を、あろうことか密集隊形で民間航路を飛行させ、原発直前まで旅客機であるかのように偽装していたという。


 そして、原発に接近すると、散開して次々と爆弾を施設へ投下し、見事、建設中の原発を破壊せしめることに成功した。


 この事件は世界的に報じられ、知らないハズは無いのだが、今の日本ではあまり語られない。


 更に言えば、事件から10年ほど後、この事件をモチーフとした北朝鮮核施設破壊を題材とした小説が存在したことなど、更に認知度は低いだろう。



 この事件は2つの事を教えてくれている。


 その1つが先制自衛権についてである。


 日本では、ある偏った思考回路の保有者たちによって略されて「先制攻撃」と呼ばれているソレである。


 あまりに恣意的な略語なので、多くの人が錯覚し、マンマと騙されてしまっているのは悲劇と言って良いだろう。


 アレを略さず書けば、「先制自衛権行使による攻撃」となる。


 この先制自衛権というのが非常に厄介なので、略して楽をしようとするのが「先制攻撃批判」論であり、あえて触れずに呪文を唱えているのが「反撃能力」論と言える。


 机上テキストとしては、1956年の鳩山答弁が該当し、その呪文さえ唱えれば反撃デキるとする説法が俄に認知されているカルトである。

 そして、略して理解から逃避しているカルトが先制攻撃批判である。


 どちらも所詮はカルトに過ぎない。


 さて、では先制自衛権とはナニか?


 実は、明確な要件や定義が定まっていない、未だ未確定の存在である。


 テキスト的には鳩山答弁の通りなのだが、問題はそれが自衛権三要件で示せるのか?という話しになる。


 先に出したイラク原発攻撃について、イスラエルは当然ながら、先制自衛権を主張した。しかし、国際機関の査察を受け入れた施設であり、更には、イラクとの外交交渉という余地がまだまだ残されていたとして、その主張は否定されている。


 では、現在日本で論じられるテキストはどうか?


 実は、これにも欠陥がある。


 さて、その前に、自衛権三要件を記すと、急迫性、妥当性、均衡性である。


 先制自衛権では、急迫性と妥当性が問題となる。


 その事態が差し迫る危機であると断じる理由は何か?


 これが実は不確定なのだが。


「ミサイル発射の兆候」と言われる事態だが、それは現象であって内容がともなっていない。


 訓練の為にミサイル発射を準備しているのか、外交的優位を得るための威嚇としてミサイル発射を準備しているのか、それとも、明確な攻撃意図を有してミサイル発射を準備しているのか?


 その確たる根拠をどこから得るのだろうか。


 イスラエルによる原発攻撃と同じ問題を抱えていることがわかるだろうか?


 もちろん、クウェート侵攻前に周辺国や米国がイラク軍の集結をブラフと認識し、侵攻に気づかなかった事態や、ウクライナ侵攻の様に、被害国が直前まで事態を受け容れなかった事を見れば、攻撃側の意図を正確に把握し評価することがどれだけ難しいか分かるだろう。


 そこにはどうしても、分析する側の先入観や意図が紛れ込み、意思決定プロセスで錯誤が起きてしまう。


 あくまで現象を分析して評価する話しになるので、分析者や意思決定者による先入観や意図を排除出来ない。北朝鮮を監視する日米韓の評価が著しく異なれば判断は難しく、行動に支障が出る。

 なんなら、とても政治的な判断であり、必ずしも日本の意向が通る訳ではなく、米韓の思惑に引き摺られるリスクはかなり高い。

 そうした要因を無視した論議が日本では横行している。



 まあ、外国の行動まで織り込んで考えるなんて難しいから、主観からの一方的な論議に集約したほうが、簡単で分かりやすいんだけどね?




 では2つ目の話。


 冒頭に書いた様に、トマホークがあればという錯覚についてだ。


 さて、まずは問おう。


 お前ら、一体いつからトマホークが無いと反撃出来ないと錯覚していたんだ?


 過去にはF4ファントムの爆撃装置が問題とされ、取り外した日本仕様が採用されている。F15についても空中給油装置が議論となった。


 爆弾さえ積めば敵基地攻撃が可能な事はイスラエルの行動が示しているし、前世紀には、爆弾搭載能力や飛行時間を伸ばす空中給油装置が問題視されていた。

 それは取りも直さず、爆撃装置を積み、空中給油装置が装備された機体ならば、敵基地攻撃が可能という事であり、フィクションの世界では、唯一完成した国産FS-Xによって秘密裏に北朝鮮の核施設を攻撃するミッションが遂行された。


 たが、今はどうだろうか?


 いつから爆弾搭載能力を有するF4やF2から「敵基地攻撃能力」が無くなってしまったのだろうか。


 不思議に思わないか?


 昔は他国へ攻撃カマせるから問題視されていた爆撃装置や空中給油装置が問題ない事になると、「敵基地攻撃能力」まで消失し、トマホークでなければ敵基地攻撃能力ではないと変質している。

 そんなバカな話がドコにあるのだろうか。


 日本はF4ファントムの爆撃能力を回復したその時から、名実共に「敵基地攻撃能力」は有している。

 なぜかその事実を忘れて、トマホークこそ敵基地攻撃能力であるなどという誤った考えを吹聴し、頑なに信仰する姿がカルト以外の何に当たるのか、私にはよくわからない。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] だってさ、今やっている話、最終的に行き着くところは予防戦争論だよ? 過去に大日本帝国が日清戦争、日露戦争、ノモンハン事件、支那事変で続けたアレとなんら論理が違うところがないのに、さも自国防…
[一言] 昔小さい頃にミリタリ系の雑誌をチラ見した時、F-2の話が出てて、確か「攻撃機とか爆撃機とかの用語がタブー視されているので苦心の末『支援戦闘機』なんて言葉を作り出した」みたいな紹介されてて子供…
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