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新型②

 新型開発や現行機の増産など。

 一般企業では出来ないような金遣いの荒さで計画を推し進めていく。


「他の会社が同じ事をすれば、間違いなく倒産ですね。

 いえ。大手企業なら耐えきりますが、決裁が降りないといったところでしょうか。大手の場合は、企業利益につなげる計画書があればなんとかなるとは思いますが、一文字さん(オーナー)これ(趣味)は採算度外視ですから」

「自分の中で目標がブレていなければそれでいいんですよ」

「そうですね。行動原理、大目標が揺らぐよりはやりやすいですから、このままで良いのでしょうね。――資金が続く間は」


 資金難で苦労していた及川准教授は、現状を苦笑いしながらも楽しんでいた。

 こちらの資金が有限であるのを理解しつつも、お金があるうちは問題ないという事で、苦笑いだけで済ませていた。



 俺が自由にやらせているので動きやすいのは間違いない。

 ただ、戦闘用ロボットというのは及川准教授にとって、あまり楽しい仕事ではない可能性があった。


 及川准教授が作りたかったのは、レスキュー用ロボットだ。

 災害時に人型ロボットがあれば、と言いたくなる場面があると聞いている。つまりそういったロボットも、いずれは需要が発生する。


 売れると分かってから開発するようでは遅すぎるので、今から生産ラインを作っておくのは悪い事じゃないんだけど。ネックになるのは、機能と価格のバランスなのだ。

 他のロボットを作れる企業が手を出していない事を考えると、まだまだ難しいという所だろう。


「原神など、戦闘用ロボットの生産ラインが安定すれば、レスキュー用ロボットも関連してコストダウンされると思います。私はそれまでに、戦闘用ロボットで知見を得る事に努めておきますよ。

 そうそう。魔法植物の利用方法をいくつか考えているので、楽しみにしておいてくださいね」


 まぁ、こちらが気を回しすぎても善意の押し付けになるので、あまり考えすぎない方がいい。

 むしろ年下であるこっちが気を遣われるような関係なので、俺はもっとしっかりするよう、頑張った方が及川准教授のためになりそうな気もするよ。



 ……自分がまだまだガキである事は自覚しているけど、それが活かされていないってのは悔しいなぁ。





「タイタンは、そのまま正式名称に格上げとしておきます。

 で、新型については、ひねりも何も無く『オプションコート』という名前でいきましょう」

「了解なのだよ。名前にひねりを入れる必要は無いからね。そこは気にしない方が良いと言っておこう」

「そうですね。ひねって変な名前を付けるよりは良いですよ」


 俺によるネーミングセンスの欠片も無い名付けを終え、新型の性能試験を行う事にした。

 これまでの戦闘データと比較をしつつ、性能向上がどこまでされるのかを実戦で確認するわけだ。



「そんなわけでダンジョン投入、なんだが」

「うーむ。1%というのは及川君の過小評価だったのかな? 私の目には、それ以上に見えるのだよ」


 改良型タイタンは、初期型・試作型タイタンよりもそうとう強かった。

 基本性能が向上していると聞いていたが、数字以上に性能が上がっているように見えたのだ。


「もしかしたら、鬼鉄が良かったのかもしれないね」

「そうだと嬉しいですね。ダンジョン金属だけに、ダンジョン内で真価を発揮するとかだと面白いんですけど」

「……その可能性も、有るのではないかな。ダンジョンはまだまだフロンティア。分かっていない事の方が多いのだからね」


 その理由は不明。

 単純な話で、1%性能が向上した事による結果は101%の戦果ではなく、それ以上の結果をもたらすものだと。そういう事かもしれないが、それだけではないように見えた。


 戦闘の素人である四宮教授も同じ意見で、理由の考察を楽しそうにしている。

 装甲素材に使われた鬼鉄が原因ではないかと言ってくれるが、それは無いと思うかな。

 もしもそうであれば、これまでにもそういった場面があったはずで、気が付かないという事は無いと思うのだ。



「それはどうかな? 一部の鬼鉄は再利用をしているよね? ならば、鬼鉄に蓄積された経験値が何らかの影響を持つ可能性は否定できないというのが私の意見なのだよ。

 万物に魂が宿るように、魂が輪廻の輪を巡るように、ダンジョンで鍛えられ、融かされ、再び鍛えられる鬼鉄は、神秘的な力を宿すかもしれないとは考えられないかな」

「それは……そうですね。否定は出来ません。ただ、そうなると、最終的にどうなるのかが怖い気もします」

「一文字君。未知とは楽しむものだよ。こう、我々の中の男の子をワクワクさせるとは考えられないかね? 私は今、とても楽しいのだよ」

「俺はまだ、吹っ切れません」

「いずれ分かるのだよ。自分の思い通りにならない事は多いのだけれど、いずれはこういったイベントであれば大歓迎だと思えるようになるからね」


 思わぬ展開ではあるが、性能向上は喜ぶべきだと四宮教授は笑っている。

 この人、不意打ちのような人工知能の発生に頭を抱えていた人ではあるが、本当に同一人物なのかね?


「そういった苦悩は、当時は苦いものなのだよ。しかし、過ぎてしまえば、それが楽しかったと思うようになるのさ」


 そういうものなのかな?

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