新型①
新しく、アンデッドなダンジョンを手に入れたわけだが、そっちの運用や管理は鴻上さんの領分となった。
選任の管理者は以前の人がそのまま継続とは言え、魔石回収を工場の人員で回す場合、鴻上さんが色々と考えて動くのがベストという話になったからだ。
なので、俺は定期的に納められる魔石を受け取って満足しておけば良いという。
下手な口出しは工場の混乱を招くので、むしろ積極的には関わらない方が良さそうである。
特に異論は無いので、スポンサーらしくあとは現場任せだ。
「おおー」
そんなわけで、俺は別方面のお仕事だ。
今は及川准教授が設計した、タイタンの改良バージョンと原神用のパワードスーツを見せてもらっている。
「タイタンの方は、基本性能が1%近く上昇しています。
耐久性能に関しては最適化により5%以上の効果を見込めます。理論値ではありますがご期待以上の結果になったと自負していますよ」
「あとは実戦でテストですね」
「はい。しばらくはゴブリンダンジョンですね。四宮さんのプラント警護に回そうかと考えています」
「ああ。アンデッドダンジョンへの配備もしないといけないし、ちょうど良いと言えばちょうど良いですね」
新型のタイタンについては、外見上の差異などほとんど見られない。
しかし内部は試作機のフィードバックによって大幅な変更が行われており、関節部分や関節を動かす駆動部周りが良い感じになったという。
それだけで無駄な部分が無くなり、脆弱性が緩和され、出力の向上がなされている。
一見すると1%や5%という数字は小さく見えるかもしれないが、ただの最適化だけで得られた成果と見ると、これはかなり大きな数字だ。
まぁ、それだけ試作機に駄目な点があったという話でもあるが、そこは初挑戦の巨大ロボットなので、気にしてはいけない。
最初から最高の結果を求める馬鹿も世の中には居るが、失敗上等で挑むしか無い事だって多々あるんだ。
もちろん、こういったロボットを作る事は簡単ではないから、失敗を積み重ねて成功まで歩み続けねばならない。
俺の資産がそれなりに目減りしたが、別件で補充されたんだからこのまま気にせず投資しようと思う。
もう片方の、パワードスーツの調子も良さそうだ。
原神タイプのロボットが中に入るのを前提とした、人間非対応パワードスーツ。
見た目はタイタンに近いけど、胸部がスマートになっていて、背面装甲がオープンすると潜り込めるようになっている。
今は光織が中にいるけど、脇のあたりや腕の内側に光織の体が見えたりする。
「パワードスーツの調子はどうだ?」
「アム○・レイ。○ンダム、発進しまーす」
「それ違う。その台詞はここで使えないから。首をかしげない」
光織たちに調子を聞くと、かなりズレた答えが返ってきたが、誰が教えているんだよと言いたくなったが、それは横に置くとして。動作そのものは特に問題なさそうだ。
操作もできるようなので、今のところは大丈夫そうだけど。
「問題は、現状のスペックでしたら、光織たちがそのまま戦った方がまだ強いという事なんですよ。
レベルアップしてくれれば多少は改善されますが、ある程度緩和されると思いますが、その時は光織さんもレベルアップするわけでして。イタチごっこになりそうな予感も……」
なお、操作に問題は無くとも、機体性能はお察しである。
タイタンからそこまで変わっておらず、本体のスペックだけを見れば、原神単体よりもパワードスーツありの方が強い。
だが光織たちは1年近くダンジョンで鍛え続けていたので、レベルアップによって大幅に強化されている。
パワーもスピードも、レベルアップしているタイタン試作機より強いのだ。レベルアップをしていないロボットと比べるのは酷だろう。
「まぁ、原神タイプのロボットを追加すれば問題なくなるのでしょう?」
「そうですね。同じペースで成長する方が望ましいです」
こちらについては、最初の方だけ光織が面倒をみるが、そのうち後輩にバトンタッチする予定だ。
そう。タイタンだけでなく、原神タイプーー商標的な問題で、法的には別のロボット扱いの、光織たちの後輩も生産中だったりする。
ぶっちゃけてしまうと、この辺の開発や生産は、ノウハウ有り、施設は工場から流用をしていても、普通に億単位のお金がトンでいる。
タイタンは売りに出していないので、こっち方面は趣味の領域、儲けなど無い。かなり、周りからは心配されていたりする。
一般的には大問題だが、俺視点だとそれより大きな問題がある。
「パワードスーツに名前を付けてください。
それと、タイタンは正式名称にしますか? それとも、試作機から名前を変えますか?」
借金にならない散財よりも、名前の方が大事だと思う。
俺は、これまで目を逸らしていた問題を突きつけられて頭を抱えるのだった。
「天丼にしても、これは酷いのではないかな!」
言わないでください。