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進む話②

 アンデッドダンジョンを確保するかどうか、及川准教授や四宮教授、鴻上さんと協議する事にした。


「現地に管理者を置けないのに、ダンジョンを確保するのは問題なのだよ。何かあった時の即応戦力、そういったものを用意できない以上、リスクは避けられないのでは無いかな?」

「同感ですね。当初の計画通り、常時、最低限の人員を置けるようにするのが先では無いでしょうか?」


 及川准教授と四宮教授は鴻上さんと違い、慎重論を展開した。

 リスクを最小限に抑えるため、現地に配備するタイタンとその運用者を用意できないなら、焦って動くべきではないと主張する。


「魔石確保のためなら、一年間、こちらが無償でダンジョンのモンスターを倒す契約を結ぶというのはどうかね? こういった契約をしておけば、こちらに配慮して急にダンジョンが売られるという事は無くなるはずだよ。

 もし売られるにしても事前に相談を受けるだろうし、違約金を貰えるようになり、いざというときの損失を抑えられると思うわけだが、どうかな?」

「そういうものなんですか? 正直、金銭の支払いが発生しない場合、違約金なんて取れなさそうなんですけど」

「可能だね。現金化していなくとも、魔石という収入がある事はハッキリしている事に加え、いつからいつまでと期間決まっているのなら、そこから損失額を割り出す事もできるからね。そこから違約金を請求するのは、ごくありふれた手法なのだよ。

 無論、ダンジョン消失があった場合は責任を問えず、仕方がないで済ませる事になるのだがね」


 四宮教授は自分たちの提案に問題はないと胸を張り、こちらが気になった点にポンポンと答えていく。

 二人ともこういった話には強いようで、みじんも揺らぎが無い。



 ただ、鴻上さんも工場経営者としてやってきた人な訳で、経営周りには強い。


「それなら、現在の土地所有者をそのまま管理者として雇用するという手も使えるのでは?

 相手が土地を手放したがっていると仮定するなら使えない手ではありますが、ダンジョン消滅後に土地を返す約束を取り付ければ、あちらにメリットを提示できますよ」

「難しいんじゃないかな?

 聞いた話では、アンデッドダンジョンがあったのは僻地なのだよ。地主も、土地ごとダンジョンを手放してしまいたいと考えているのが普通ではないかな。無駄に苦労させられているだろうから、そういった気持ちが強くなっていたとしても、私は驚かないのだよ」

「それも未確認の話ですよね? 確認してからでも遅くはないでしょう」


 鴻上さんはニッコリ笑って四宮教授の意見に対案を述べる。

 そのまま持論の正当性を展開、さらにお互いに未確認な部分を突く事で下調べが十分でないと話を持って行き、この場で結論を出すべきではないと話の主導権を奪っていった。


 お互いにマウントを取り合っているように見えるので少しハラハラしてしまうが、こういったやりとりも話し合いの場では大切なので、止める事ができない。

 意見というのは、否定せずに何でもかんでも出し合うブレインストーミングばかり重要視されるが、否定的な意見に対し反論ではなく持論の補強をしてブラッシュアップしていく事もやらないといけない。


 お互いの意見の至らない点について考えないような会議はまずあり得ないんだけどな。

 そのあたりのやり方について、ちゃんとレクチャーされていないのはなんでだろう?


「ブラッシュアップのやり方だっていくつも紹介されていますよ。ただ、これと言って格好良い単語で紹介されていないので、地味で目立たないのだと思います」

「世知辛いですねぇ」


 この情報化が進んだ世の中、覚えてもらうにはインパクトが大事だと。

 それがないとどんな良い物でも記憶に残らず、忘れ去られていくわけだ。


 今の俺には関係無いし、それこそ覚えておかなくてもいい話なんだけどね。





「管理者雇用……ダンジョンに対する責任を回避、管理者として固定収入が貰える。ただ、年間契約に限る? いえ、収入が安定するのは良い事ですよね。ここまでは問題ないです。

 それよりも、ダンジョンが無くなった場合、土地が帰ってきてしまうんですか。できれば、土地はそのまま差し上げてしまいたいんですけれど」


 アンデッドダンジョンの土地所有者に話を振ってみると、土地の管理者になるのは構わないという話だった。

 ダンジョンの管理にお金ばかりかかり、人を呼ぶ手間も無視できない大きな負担であった。

 国に土地の返納を願いしてもマイナス面が大きい事もあり受け付けて貰えず、ほとほと困っていたのだという。


「そもそも、あの土地は売りに出していたんですよ。それがゾンビの出るダンジョンが発生して売れなくなって、こっちは大赤字だったんです。売れるなら売ってしまいたい。貰ってもらえるだけでも大助かりですよ」


 管理者という面倒事はついて回るが、一年程度であれば我慢できるし、それよりもさっさと楽になりたいと管理者さんはこれまでの苦労をにじませる。

 不人気ダンジョンの管理は、本当に嫌だったらしい。ゾンビの相手なんて、嬉々としてやるのはショットガンを持ったアメリカ人ぐらいだろうからなぁ。



 こうして俺というか、鴻上さんの会社はアンデッドダンジョンを保有・管理する事となった。


「一番苦労するのは鴻上君のはずだが。これで本当に良かったのかね?」

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