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進む話①

 どうでもいい、余所の研究者をシャットアウト。

 それよりも、本業の方に戻る。


「ダンジョンにロボットを連れていくだけの簡単なお仕事、だと?」

「そうそう。いやー、戦闘用ロボットを連れ歩くのには冒険者資格が必要だから、希望する人限定だけど、そういう話をしているんだよ」

「……俺には関係無いな。資格は返納済み、再取得の予定もねーよ」


 現在は、鴻上さんの工場で、若めの社員に「冒険者資格を取りませんか?」とお誘いをかけているところだ。

 将来的に、タイタンで魔石稼ぎをする計画には新人を使うのが当初の予定だけど、一応、既存の社員にもそういう話があるのだと声かけしておく事にしたのだ。


 俺の個人的な計画みたいなものだけど、雇用するのは工場だからね。

 業務上の計画なのに俺の個人的な用だからと隠していると、関係が拗れるかもしれないし。これも根回しみたいなものだ。

 まぁ、計画初期段階という事で少しだけ数字は厳しめにしておくのは忘れないけどな。



 話をするのは、勿論、中途採用でこっちに来た時枝も含む。

 時枝は俺に「何言ってるんだ、こいつ」といった顔を見せたあと、興味なさそうに話を終わらせた。

 今の時枝は、普通に工場で働く事しか考えておらず、冒険者に復帰する意思が見えない。

 無理強いなどできないので、時枝を使うのは諦めておく。



「うーん。怖いから辞めておくよ」

「何かあった時の招集は、ちょっと参加したくないですね」

「確かに自分らで作っている商品ですけどね。自分の命は預けられません」


 他の人の反応も良くない。

 冒険者は不人気職業だから仕方が無いよね。半分軍属みたいなものだし、資格取得に会社が支援をすると言ったところで、話に乗ってくる人などあまりいない。



 けど、皆無じゃ無かった。


「給与面は……マジですか? やります! やらせてください!!」


 中には金銭的な理由で資格取得に前向きな人もいた。


「普通に冒険者やっても、すぐに儲かるわけじゃ無いんでしょ。でも、これならすぐに儲けられるわけだし、こっちは金が稼げるならオッケーですよ。

 つか、今はいいですけど、工場が暇な時もありますからね。休まずに済むなら、そういう仕事を入れるのもいいんじゃないっすか?」


 とにかく金を稼ぎたいって言う人にしてみれば、給料アップは美味しい餌だったらしい。

 そして俺はよく分かっていなかったが、工場勤務の仕事は非常にムラが大きく、暇すぎて鴻上さんから休んで欲しいとお願いされる事も珍しくないそうだ。

 今回のような仕事があるのなら、安定した仕事の創出が可能で、仕事ムラが無くなり、とても都合が良いと力説された。


「下請け系の工場の仕事って、相手の都合に合わせてばっかりで、納品のタイミングなんかもめっちゃ煩いんですよ! 自分の所で倉庫を持ちたくないからって、使う直前に持ってこいって平気で言うんすよ!」

「まぁ、ダンジョンは日参しても良いからなぁ。そこは仕事量の調整もしやすいし? 最低限のノルマ、月一の遠征さえしっかりすれば良いわけだけど」

「うっす! やりますよ! 俺、頑張ります!!」


 よく分からないが、人が余ったり足りなかったりと、工場って仕事の平滑化は難しいんだな。

 とにかく、人員は現状のままでも確保できそうだった。





「工場内で興味を持ったのは、二人だけです」

「これに、新入社員が数名加わるかもしれない、と。はぁ。人員の調整が……」

「いや、月に一回だけですよ?」

「お盆前や年末年始の繁盛期は、それでも厳しいんですよ。たった二人、わずか1日などとは絶対に言えません」


 この報告をすると、鴻上さんは重苦しい雰囲気で現状を受け入れた。


「それに、ですよ。いいですか。一人二人でもダンジョン攻略の“成功例”が身近にできると、“自分もできるかも”って思うんです。

 そしてそれは実際にできるのだから、“後に続け”って考える人が増えるでしょう。結局、二人だけでは済まないと考えています」


 受け入れはしたが、それが深刻であると認識していた。

 ダンジョンで楽で安全に大きく稼げるなら、誰だってそうするだろうと目が据わった状態で俺を見ている。

 工場経営者としては、ダンジョン関連はあくまでオマケ。小さい規模であれば許容範囲だが、本業に影響を及ぼして欲しくはないと口にする。



 じゃあ、最初からこの話を受け入れなければ良かったのでは?

 そう思うものの、『恩人』『スポンサー』である俺に対し、強く反対できないのが鴻上さんな訳で。

 お金に釣られてホイホイついて行く奴なんていないと信じていたところを裏切られ、ちょっと機嫌が悪そうだ。


 新入社員であれば、まだマシだった。

 既存の社員とのつながりが弱いから。

 けど、既存の社員がそうなると、他の社員にも伝播しやすい。



「一応、タイタンの保有数って言う制限も存在しますからね。人は無制限に増やせないし、最初の立候補者が優先されるから、そこまで大規模にはならないですよ」

「……そうですね。内輪の魔石稼ぎですから、すぐに他に伝播する事は無いと思いますが。このやり方も、知られれば一気に広まると思いますよ。ダンジョンの確保はしっかりやっておいてください」


 最後に、ダンジョンの所有権を得ておくように釘を刺された。

 未だに不人気なダンジョンなので、もう積極的に動き出す企業は無いように見えるけど、状況が変われば誰もが一気に動き出すという証明はすでにされている。


 ゾンビなアンデッドダンジョンも確保する?

 それはそれで、なんか嫌だなぁ。

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