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新規事業①

 戦っている最中は気分の悪くなるゾンビ退治であったが、ダンジョンを出て終わってしまえば気持ちも切り替わる。

 ゴブリンよりも質の良い魔石を入手した俺は、気分良く家に戻った。



 朝に家を出て、昼休憩を挟んでからのモンスターハント。戦闘後の後処理を経て帰途につけば、すでに時刻は8時を回ったところ。

 途中で軽食を摘まんできたので、お腹は空いていない。


「ただいま、と」


 普段はダンジョン前のコンテナハウスで生活しているので、「お帰りなさい」と言ってくれる人はいない。

 久しぶりの遠出という事もあってか、それがなんだか無性に寂しく感じた。



「不人気ダンジョンの持ち主が、連携してロボットを買うっていうのが俺たちの予測だったわけだが。まだまだ普及はしていないよな」


 風呂で疲れを洗い流し、水分を補給。

 髪を乾かしたら半裸のままベッドで横になり、今日の出来事を口に出しつつ、まとめてみる。

 口にした事を残しておくため、スマホの録音機能をONにするのも忘れない。


「信用が無い。実績が無い。ゴブリン相手なら大丈夫と言っても、ゾンビ相手はまた違う。

 これで自衛隊が成果を宣伝してくれれば良いんだけど、どこまで情報を公開してくれるのかな?」


 不人気ダンジョンの現状は、昔のままだった。

 ゴブリンダンジョンは企業が買い漁っていたが、それ以外の不人気ダンジョン、アンデッドダンジョンなどはまだ手つかずのままだった。

 企業サイドも、そこまで出来ると信じられないのだろう。

 だから宣伝をしていないし、商機を逃している。市場が開拓されていない。


 「人型ロボットにどこまで求められるのか」を誰も分かっていないのだ。

 俺自身、ゾンビと戦わせられるのかちょっと不安で手本を見せたのだし。


「なら、先行して売り込みをかける、顧客を取り込む。実績を作ったんだし、売り込む下地は出来てるよな。

 相手も、買い取りは無理でもレンタルなら手を出せるはずで……」


 眠る前というのは、色々と思いつく。

 翌朝になると忘れてしまう、そんな朧気な意識の中での考えは、どこまでも自由で縛られず固定観念に囚われない。

 翌朝の俺が考えつかないようなアイディアが出ている事もあるので、意外と侮れず無駄に出来ない。

 だから口に出して、スマホで記録する。


「タイタンがどこまで戦えるかは未知数、だけ、ど……」


 惜しむらくは、最後まで考えをまとめきれない事。

 眠気に負けて中途半端になる事が多い。

 せっかく良いアイディアが頭の中に浮かんでいても、口にせず終わっている事もある。

 良いアイディアがあったという漠然としたイメージを残し、悔しい思いをする。


 無念と言ったところで仕方が無い。

 睡魔に負けた俺は、翌朝、悔しい思いをすると分かっていても意識を手放した。





「おはよう、一文字君! アンデドダンジョンはどうだったかね? 魔石はどれぐらい手に入ったのかな?」

「バッチリです。ずいぶん稼げましたよ。出来ればタイタンに任せつつ、今後も通いたいですね。魔石のいい供給源になってくれそうですよ。

 それより、四宮教授の方で魔石を入手するといっていましたが、それはどんな感じです? 手に入りそうですか?」

「勿論だとも! 古い顔なじみに少し無理を言ったのだが、正規の売却額で構わないと言って貰えたよ。まぁ、税金の手続きが煩雑になる分は、少し色を付けないといけないけれどね!!」


 遠出の翌朝。

 俺は食卓を囲みつつ、四宮教授に戦果の報告をしていた。

 あと、四宮教授の話も聞いておいた。魔石の入手に関する話だからね。


 お互い、良い感じに魔石が手に入ったので、お互い笑顔で報告をする。

 俺の方は交通費と原神のメンテ費用がかかっているが、大幅な黒字みたいなものだ。


 “黒字みたいなもの”というのは、実際は魔石を確保しただけなので、金銭収入はゼロというオチが付くからである。

 あとで魔石を買うのを無くせると考えれば黒字という話。

 ただの金銭収入だけでは計算できない利益があるのだ。



 そして四宮教授の方も上手くいった様子。

 以前冒険者をしていたときに出来たコネで魔石を買えたようだ。

 魔石を含むドロップアイテムの直接取引をした場合、冒険者は税金関係の手続きが必要になる。その負担増加分はこちらが負担しないといけないものなので、相手が遠慮しようがしっかり支払いをしたと四宮教授は笑う。


「頼るのは構わないのだが、善意を期待するようになっては人として終わってしまうからね。やはり、金銭関係は一切の妥協をしてはいけないのだよ」


 こういった部分は及川准教授と同じく、かなりかっちりしている様子。

 こちらとしても頼もしいと思うので、俺も見習うとしよう。





「それで、ですね。ゾンビはそこまで脅威ではありませんでした。ロボットの、タイタンの出番はあると思うんですよね。

 ただ、やっぱりあちらの管理者にタイタンを買う余裕はありませんし、共同購入をするには仲間がいない。だから手が出せないという話です」


 予定通り魔石を入手した俺たちだが、その入手は一回限りの話。

 事業をするときに必要なのは、安定して継続的な入手手段となる。一回限りの入手では駄目なのだ。


「そこで、ですね。タイタンの貸し出しを中心とした、ダンジョン管理者ネットワークを作ろうと思うんです」


 今後を見据え、仲間を増やすための相談をしよう。

 事業規模が大きくなると俺一人では制御できなくなるが、それでもメリットは大きい。

 デメリットを受け入れる価値はある。

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