全国報道
俺が襲撃された件はニュースで取り上げられ、全国報道された。
面倒だったけど、ちゃんとインタビューにも答えたよ。
ただ、カメラの前でなんて言っていいかよく分かっていないので、ニュース番組のプロデューサーに相談してカンペを作ってもらい、その通りに受け答えをしただけなんだけどね。
俺にはテレビ番組でどう取り上げて欲しいとか、そんな欲求は無いんだよ。
だったら相手が望むものを提供し、お互いに笑顔で握手できれば、それで良いと思う訳だ。
情報の隠ぺいとか出来るわけないし、事後処理が大事になるのは避けられないんだ。
だったら、抜けるところで手を抜いた方が賢いと思う次第である。
バラエティーではないが、ニュース以外の番組にも顔を出した。
「銃で武装した凶悪犯相手に、ロボットが活躍! いいねー! 素晴らしいよ!
で、どうなの? 撃たれたの? 無事だった?」
「撃たれましたが、タイタンは無事でしたよ。今回は盾を装備させ、センサー部分の保護を行ったので」
「へぇー! えぇ、その盾を見せてもらう事って出来るのかな?」
「構いません。こちらになります」
「へこんでるねー。へー。
あれ? この盾って、のぞき窓とかありませんけど。どうやって盾の向こうを確認するんです?」
「タイタンはドローンとの連携を前提としていますから。ドローンを飛ばしていたんですよ」
ここで一番大きく取り上げられたのは、銃を持った犯罪者に、ロボットが立ち向かった事だ。
ロボット、タイタンが前に出た事で相手の発砲を許しても人的被害が出ない。今後、凶悪犯罪に立ち向かう警官のためにも、ロボットを警官のパートナーとして運用するべきではないか?
おおよそ、そんな論調で番組はまとめられていた。
実際、警官の出動に危険なシチュエーションというのは有り得る。
しかしそんな状況はかなり数が少ないし、年に何回も無いだろう。本当にロボットを配備するべきかと考えると、たぶん不要だと思われる。
それにそういったロボットの配備が進んだ場合、犯罪組織にもロボットが配備され、犯罪が過激化するのではないかという恐れもあったが。
「いやー、我々が配備する、しないに関わらず、犯罪組織はロボットを使うでしょうね。だったら後手に回らず、先んじてロボットを活用し、ノウハウを蓄積するべきじゃないですかねー」
今回俺が出演した番組では、ロボット推進を特に推している。
新しい需要が生まれれば、それだけ経済が活性化するとか、そういうもっともな話をしていた。
実際は、番組のメインスポンサーの意向だと思う。
番組スポンサーは電気自動車で有名な自動車メーカーだったが、そこも人型ロボットを販売しており、ロボットを売る裾野を広げるのに、俺の事件を使いたかったようだ。
冒険者にロボットを販売するつもりが、他企業の参入が早すぎて少ないパイの取り合いになっちゃったからね。
だったら、市場そのものを拡大してしまえという、とてもクレバーな発想だった。
「で、連中は何者だったんです?」
「持っているパスポートと話している言葉はロシアのものだったがね。けれどパスポートは偽物でロシア人かどうかなんてわかりはしないよ。ここ数日の空港の映像を見ても、ロシアからの便に彼らの映像は無かったと、そう聞いているね。
だったら何者なんだとここで言っても、今は調査中だから待つしかないのだよ」
なお、襲撃犯の身元は判明していない。
彼らはロシア語を話していて、ロシアの発行するパスポートを持っていたが、パスポートは偽造である事がすぐに発覚したからだ。
そうなるとロシア語で話をしていたのもブラフではないかという見方ができて、安易にロシア人だと決めつける事もできない。誰かがロシアのせいにしようとしているかもしれないのだ。
それに持っていた銃はアメリカ製で、ロシアの銃ではない。
じゃあアメリカの関係者かと決めつけるのは乱暴だ。
見た目はガチムチマッチョの白人なので、ロシア人っぽいんだけど。それだけで決めつけるのは如何なものかと思う次第だ。
言ってしまえば何もかもが怪しく、これだと決めるための証拠が全然足りていない。
もちろん、俺は一般人だから警察が捜査情報を漏らしておらず、握っている証拠について何も言っていないだけかもしれないが。
重要な捜査情報なんて、いくら被害者が相手でも、余所には漏らさないよなぁ。
襲撃犯を相手に、この件で訴訟を起こしているけど、賠償金とか全然ふんだくれないから完全な赤字だよ……。
とにかく、俺には判断材料が無いので、この件で出来る事など何もない。
精々、事件をネタにテレビへ出演して顔を売っておくぐらいだ。
いざという時、こうやって作ったコネが使えるようになるかもしれないし。
今は味方を増やしておくだけかなぁ。
面倒だし、あんまりやりたくは無かったけど。やらないよりは、たぶんマシだ。




