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魔法植物②

 他人の家庭の事情に口は挟まない。


 残念ながら、人生経験で圧倒的に劣る俺から言える事は、子供視点の言葉だけ。

 それなのに四宮教授の娘さんについて何も知らず、大学受験そのものが未経験の俺からではアドバイスできそうな事が何も無い。

 精々、気を紛らわせる為の提案をするぐらいだ。



「細かい意味を考える必要は無いのだよ。こちらの指示通りに入力をしてくれたまえ!

 まずは『ゴブリン』なのだよ!」


 四宮教授は、様々な方法で原神たちに言葉を教えている。


 まずはキーボードの使い方を教えて、単語を入力させる。

 その時、単語に関連した画像や動画を表示にする事で、単語と視覚情報の関連付けを行う。

 あとは入力した単語を読み上げて、読み方も伝える。


 情報を少しでも増やし、最終的には文章を書かせるらしいが、それはどれだけ時間がかかる事か。

 何もしないよりはいいんだろうけどな。手間のかかる話である。





 四宮教授主催のお勉強会の間、俺はタイタンのゴブリン退治に付き合う。

 植物のレベルアップを目指し、チマチマ経験稼ぎだ。



 魔法植物の候補だけど、ポーションに使えそうな植物という事で、『リンゴ』『アロエ』『ヨモギ』の3種類が対象になっている。


 アロエ(医者いらず)とヨモギは、素人にも有名な薬草だ。選んだ理由は説明するまでもない。

 リンゴは『黄金のリンゴ』『知恵の実』という関連付けから。そこまで深く考えていないが、悪い選択肢ではないと思う。


 これで駄目なら『米』『小麦』『ブドウ』に切り替える。

 米とブドウは酒にする。お神酒だな。

 小麦も一応は酒にするのも考えているけど、パンにしてみるのもアリかと思う。パンは葡萄酒と合わせてれば、宗教的な効果が見込めるかもしれないので。


 他の候補は『ドクダミ』『ゲンノショウコ』『センブリ』という、日本三大薬草などだ。

 ドクダミとセンブリは聞いた事があったけど、ゲンノショウコは今回調べてみて、初めて聞いた名前だ。別名の『ネコグサ』の方は知ってたんだけどね。

 ドクダミとゲンノショウコはそこら辺に自生しているので、入手は容易。センブリは自生していないけど、奇しくも長野県で栽培されているので、ちょっと足を伸ばせば買える模様。

 こちらはまだ候補というだけなので、すぐには用意しないけどね。手に入れる手段だけは確認しておくよ。





 そういうやってみようという事が積み重なっていくから、優先順位の高いところ、手を付けられるところから順に切り崩していく。


「まぁ、俺がやることなんて、ダンジョンのヘビロテ(ヘビーローテーション)ぐらいだけど」


 このゴブリンダンジョンの良いところは、ゴブリンのおかわり(・・・・)が早い事だ。

 普段は1日1回の殲滅を基本にしているけど、時間を置けば1日に3周まで可能である。


 しかし1日に何度もダンジョンに潜ると俺の拘束時間が長くなり過ぎる。

 ダンジョンの探索にかける時間もそうだけど、その前後、準備と終了後のメンテナンスが大変なんだよな。

 レベルアップ前っていうのもあるけど、バッテリーの補充とか、関節のオイルチェックとか、手を抜くなんてできない。ゴブリンっていう雑魚が相手だけに、油断して無駄に攻撃を食らうとか格好悪すぎる。

 そうならない為にもきっちりメンテはするんだけど、それを考えると、1日2回までにしたいというのが本音だ。



「えーと。六花もダンジョンに行きたい、と?」


 そうやってタイタンをダンジョンに潜らせていると、その分出番の無くなった原神たちが不満をあらわにする。

 自分たちもダンジョンに行きたいと自己主張を始めた。


「四宮教授。これ、言葉を覚える理由付けになりません?

 「私はダンジョンに行きたいです」とか、そういう言葉を覚えさせるのはどうでしょう。人間、興味のある事の方が早く覚えるっていいますし。

 あ、原神は人間じゃないですけどね」

「どこの骸骨だね。彼女らはロボットじゃないか。

 しかし、確かに言葉を覚える理由があるというのは良いね。原神たちが言葉を覚えないのは、喋りたいという欲求が弱いせいかもしれないからね」


 そこで俺は四宮教授と相談し、原神たちの言語学習に絡めて、お願いの仕方を学ばせる事にした。


 人間、やる気のない事はやれなくても仕方がない。

 勉強だって、親に言われてやっても頭に残らない。なにかしら、集中するためにモチベーションを与えないと駄目なのだ。

 他の人は知らないが、とりあえず俺はそんな感じだった。学校の勉強なんて、親に小遣いっていう餌をぶら下げられてようやく頑張ったクチだからな。自主的な勉強なんてほとんどやった覚えがないぞ。


 不真面目な学生だった俺と、光織たち原神を一緒にするのは違うかもしれないが、こういったアプローチも悪くないと思う。

 四宮教授も俺の提案に興味を示し、原神たちにお願いのフレーズをいくつか教えてみた。



「先生……。ゴブリンを、狩りたいです」

「今はとにかく、ゴブリンをぶっ殺したいです」

「そこでネタを挟むのはどうかと思うんだけどな」


 しばらくすると、原神たちはスマホを使い様々な言葉でお願いをするようになった。

 その半数以上がどこかで聞いたネタなのはどうかと思うが、一歩前進、なのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 進撃の小鬼・・・
[一言] さてはこのAI ネットに繋がってるな?w
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