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問題山積み(駐車場)

 及川准教授から、タイタンの試運転が完了したという報告が届いた。


「ようやくだね!

 いきなりダンジョンに投入する訳にもいかないが、慣らしの一つも無しというのはあり得ない。

 さて。一文字君はどういう予定を立てているのかな?」


 全長3mの大型ロボット、『タイタン』。

 出撃のカウントダウンが始まった事で、俺もだけど、四宮教授が物凄く楽しそうだ。


 四宮教授はタイタンの制御ソフトを作っていた関係で、試運転にも参加していたはずだけどな。

 それでも全検査工程が終了したという事で、一仕事終えた後の爽快感を感じているのかもしれない。

 先ほどの言葉とは裏腹に、タイタンを早くダンジョンに送り込みたいという思惑が透けて見えた。



 まぁ、タイタンをダンジョンに送り込むのは、将来的には確定なんだけど、まずはタイタンがどれぐらい動けるかを、俺がこの目で見てからである。


「1週間は様子見ですね。長時間の稼働で何か問題が起きないかを見たいと思います」

長時間の耐久テスト(エージング)はやってあるのだよ? さすがに長すぎやしないかな」

「それ、工場内の話ですよね? 俺は、この山での耐久性能を確認したいと言っています」

「むむむ。仕方が無いね。ここはスポンサー様のご意向に従うしかないようだ」


 楽しみで早くタイタンの性能を見てみたいという四宮教授の考えも、分からなくもないんだけどな。

 けど、俺は焦る理由も無いし、じっくりと取り組んでいこうと考えている。


 よくよく考えなくても、原神の4号機と5号機の時は、かなり余裕の無いスケジュールでレベルアップまで頑張らせたからね。

 今度はゆっくりと、じっくりとタイタンを鍛え上げていこうと思う。

 もしかしたらだけど、あの時は焦り過ぎたから、自我の獲得が上手くいかなかったって可能性も有るんだ。

 手間暇かければ、タイタンに心が生まれるかもしれないよね。



「そうしたら、光織たちは“お姉ちゃん”になるわけだ」


 今後のことを考えていると、ふと、そんな考えが口をついて出てきた。

 言われた光織たちは、俺が何を言っているか分からず、首をかしげる。


「原神シリーズじゃなく、タイタンシリーズになるけど。それでも、今度ここに来るロボットは光織たちの弟になるんだよ。

 ずいぶんでっかい弟になるけど、面倒を見てやってくれ」


 俺に何を言われているか分からない様子の光織たち。

 だが、「面倒を見て欲しい」とお願いすると、首を縦に振って俺のお願いを受け入れてくれた。

 この子たちは、なんだかんだ言って俺に甘い。





 そんな話をした翌日。

 及川准教授と鴻上さん、そしてその愉快な仲間たちが木枠梱包されたタイタンをトラックで運んできた。

 ……木枠梱包?


「原神の時のような、専用の運搬車両など作っていませんからね。公道を走るには、こういった対処が必要なんですよ」

「その専用車両。作るとしたら、費用はどれぐらいかかりますか?」

「タイタン3体を一度に運ぼうと思うと、2トントラックをベースに改造する事になります。

 その場合、トラック本体が5百万円ぐらい。改造費用も同じぐらいかかるので、およそ1千万円ですね」

「はー。まぁ、仕方が無い出費、ですよね。ええ、手配をお願いします」

「はい、承りました」


 タイタンを運ぶのに、毎回木枠梱包するというのは嬉しくない話だ。もしもタイタンが自我を得たとしたら、その扱いはあんまりだろう。

 そこで、以前見た原神たちを乗せていた車のように、専用の車を用意しようと考えた。

 及川准教授に費用を確認してみる。


 すると、1千万円は要ると言われ、思わず苦笑い。

 必要経費だと思うけど、そこそこ痛い出費である。

 当たり前だけど車は維持費もかかるので、継続的な支出を強いられるわけだ。


 それもこれも全部、必要なんだから払うけどね。

 お出かけ(・・・・)をする予定はしっかりあるので、ここでケチるつもりは無かった。



「そう言えばだけどね。もしも光織たちが車を運転した場合、これはいわゆる一つの完全自動運転だと言えるのではないかな!」


 車を増やすという事で、山を拓いて駐車場を拡張しないといけない。


 駐車するのがトラックになるのだから、スペースは広めに取った方が良いだろう。

 土地は余っていると言っても、ほとんど斜面ばかりなのでダンジョン前は無理だし、少し離れた空き地を駐車場にするのと、そこまでの道を整備した方が良さそうだ。



 四宮教授が何か言っていた気もするけど、面白くなかったのでスルーした。

 下手な冗談には、あえて触れず聞き流すのが優しさだと思う。



「あ。ダンジョンの方も、少し広げた方が良いかも?」

「そうですね。せっかくですし、ドリルアームを試すのも良いかもしれませんね」


 及川准教授と二人、少し先の事を話し合う。

 後ろで四宮教授が何か言っていたが、それも聞き流して、俺たちは今後の予定を固めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白くて一気に読み進めてしまいました!
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