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問題から目を逸らす(イノシシ退治)

 韓国は横に置くとして、他の国は普通に「これから始めます」と宣言し、過去にそういった試みをしていなかった事を正直に話している。


 と言うのも、彼らは火器装備のドローンを中心とした戦力を投入しており、それで多大な戦果を挙げていたからだ。

 日本は様々な団体から色々と反対を受けてドローン兵器の配備が遅れていたが、他の国は強権を発動したり、国民が国の訴える必要性を理解するなど、制約が緩かった。

 元々、ダンジョンと関係なくドローン兵器を研究していた国もあるし、動きが速かった。


 これまでの方針を考えると、嘘をつく事が難しい。

 どうせ発表が遅れ二番手以降になるのだから、数を投入し時間をかけて挑むのが最適解だと考えたのだろう。

 嘘で塗り固めた砂上の楼閣は簡単に崩れるのだから。崩された後の被害を考えると、国のメンツもあるし軽率な行動は簡単にできない。

 それよりも、さっさと結果を出す事に専念する方が賢い選択なのは、一般人の俺でも分かる事だ。



「各国が自力で自我持ちロボットを手に入れてくれれば、我々の安全も確保できるのだがね。

 韓国様が先行してくれたおかげで、多少圧力が弱まったのは、幸いだったね」

「こっちは『世界初』の称号なんて要りませんからね」

「うむ! 早く次の報告を聞きたいね!」


 なんにせよ、この件で俺にできることなどない。あるがままに結果を受け止めるだけ。

 名誉よりも安全の方が大事だからな。世界初の称号を持って行ってくれた韓国には、感謝しかないよ。





「そんな事は関係なく、こっちはこっちでやりたい事をするんですけどね」

「他人の顔色を窺うばかりでは面白くないからね! たまにはストレス発散も必要なのだよ!」


 今回は、原神たちも引き連れてイノシシ狩り。

 俺の山にイノシシが侵入したようなので、そいつらを駆除するお仕事だ。


 今回のメンバーは、俺と四宮教授と、原神たち。

 四宮教授もダンジョンで最低限のレベルアップをしているので、こういった場に連れてきても足手まといにはならない。

 及川准教授はダンジョンに入らないので、連れてくる事ができない。まぁ、今はタイタンの作成と試運転に集中して欲しいから、連れてくる事などないわけだが。



 山頂付近にいるイノシシは大きめのとちょっと小さめの2頭。

 牙の大きさを見れば雄と雌の組み合わせに見えるので、おそらくは(つがい)なのだろう。

 イノシシは通常、雄と雌がバラバラに行動する生態なので、今は繁殖中だと推測される。


「イノシシを監視しているドローンの位置がこれで、俺たちの位置が、これ。このまま真っ直ぐで良さそうですね」

「うんうん。迎撃地点まであと少し。そろそろ会話は控えるとしよう」


 藪を剣鉈で払い、道なき道を進み、戦うのに適した場所へと移動する。

 普通、イノシシ退治には罠や猟銃を使うのだが、俺たちは猟師ではないから、それらを使う事ができない。ああ言ったものは全部許可制なのだ。冒険者資格とは関係ない。

 もっとも、普通に徒手空拳で戦う分には許可など要らないので、何の問題もないけど。

 今の法律は、冒険者に対応していない部分がたくさんあるのだ。



 迎撃地点に着くと、俺たちは藪に身を潜める。

 山の中腹にある迎撃地点はそれなりに開けた場所で、俺たちにとって戦いやすい空間だ。木々が密集していると武器どころか腕も振り回せないからな。


『では、私は後詰めに回るよ』

『了解。ドローンのアラーム、起動しますね』


 四宮教授とはスマホでやりとりをしつつ、追い込みを始める。

 ドローンが空から大きな音を立てれば、意外と臆病なイノシシはそこから逃げ出し、こちらに来る……はず。



 不安を抱えつつもアラームを起動させれば、イノシシたちは俺たちの居るところまで走り出した。


『追い込み成功です』

『了解したのだよ』


 待ち伏せする俺たちは、四方を囲うように待機しているわけではない。

 半円程度で、イノシシたちの進行ルートはもちろん開けてある。誘い込んだ後に四宮教授が穴を塞いで逃がさないようにする。

 正面は俺が受け持ち、足を止める役だ。

 なので、俺は息を潜め、気配を殺し、じっと待つ。



「フゴッ!」


 程なくして、イノシシが現れた。

 ただし、雄の1頭だけだ。雌は別れて逃げたらしい。


「ある意味、都合が良いか」


 相手が現れたのなら、もう隠れる必要はない。

 正面から迎え撃つべく、イノシシを睨みつける。


 イノシシは俺を跳ね飛ばそうと、山の斜面を落ちるような速度で突っ込んできた。

 その突進力はバイクが突っ込んでくるようなもので、普通車を大破させるぐらいの威力がある。雄は牙が大きいので、牙に引っかかると大怪我をする可能性もあるんだけど。


「冒険者やってれば、これぐらいはね」


 魔力で体を強化すれば、そこまで怖くなかったりする。

 そのまま受け止めれば足場の問題で吹き飛ばされる事になるが、こちらも相応の速度と威力で殴り飛ばせば、むしろ跳ね返すことも可能だ。

 まぁ、今回は横っ面を殴るけどね。


 俺はイノシシの突進を躱すと、頭を横から殴りつけた。

 するとイノシシは脳震盪を起こし、ふらついたかと思うと、その場に倒れる。



 倒したイノシシは原神たちが下まで運び、みんなで解体した。

 イノシシは重いので、運んでもらうだけでもかなり助かる。


「また今度、牡丹鍋でも作ろう!」


 イノシシの肉は、すぐには食べられない。

 しばらくしたら食べ頃になるので、それまで待つことになる。



 人間、働き詰めは良くない。

 自我がどうとか関係ない、そんな日もある。

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