降下作戦
地上と宇宙の行き来で最大の難点は、打ち上げではなく、地上への帰還である。
降下時の減速が上手くいかなきゃ燃え尽きてしまうし、海の上に降りれなきゃ地面に激突で死んでしまう。
某ロボアニメのロボットが単独で大気圏突入したのって、かなりリスクがあるんだよ。
まぁ、ZにWならともかく、その後の新シリーズのいくつかでは大したことではないけど扱いだったけどさ。
「もっとも、危険なのは魔法抜きの話なんだけど」
時速200kmまで加速しつつ落ちていく俺たち。
高度500kmでは大気が非常に薄いため、10秒もあれば目標速度に到達する。
あとは減速しつつ、適当に時間を潰していればいい。
減速は空気抵抗を大きめにするだけの簡単魔法なので、数時間ぐらいは余裕で維持できるよ。
なお、空気抵抗を考慮しなければ地上に時速一万km以上でぶつかる事になる。
普通は空気抵抗で減速するし、地上までに燃え尽きて消える事になるんだけどね。
燃え尽きなかったら大惨事だし、結構前だが実際にカナダに旧ソ連の偵察衛星(原子炉搭載)が落ちて大騒ぎにもなったんだよ。
打ち上げの最中に部品が落ちることの方が圧倒的に多いんだけどね。とにかく、高高度からの落下物が重大な危険源なのは間違いない。
燃え尽きるかどうかという話以外にも、落下地点の予測が大変だって話もある。
上空でほんの少し角度がズレれば、地上じゃ数百キロの誤差になりかねない。
風が吹いたとか、デブリが当たったとか。そんな理由で着地地点が大きく変わる可能性はどこまで行ってもゼロにならない。こういった乱数は予測しきれるものではないんだよ。
超高速落下中、空気との摩擦で超高熱状態の船外だと、バーニア吹かして軌道修正ってのも大変だからね。
そういう難問も、魔法で落下速度を変化させる、それを一時間以上維持できるという保証さえあれば、対応は実に簡単となる。
時速200kmなんて、一般的な乗り物だと飛行機か新幹線ぐらいだが、そこまで制御が難しいわけでもない。最後はパラシュートという手段もあるので、陸地に落ちても問題ない。
しいて問題をあげるのなら、衛星軌道上で魔力の回復ができないことぐらいか。
魔力はダンジョン内でしか回復しないので、ダンジョンの無い衛星軌道上は長時間滞在するのに向かない。
ゲームのように寝たら回復、薬で回復、だったら簡単だったんだけどね。そう美味い話は無い。
「やっぱり、ダンジョンは地上だけなのかね?」
「お空にあったら誰も入れないよ?」
「浅瀬はともかく深海にも無いと言われていますし、人が立ち入れない場所にはありません」
「人が入るためにあるの? 不思議だね~」
まぁ、衛星軌道上まで足を運び、また自分の目で情報を一つ回収できた。
もともと国が魔力センサーを飛ばして確認していたけど、やっぱり自分の目で確認しないとわからないこともあるよね。
今の俺は、そういったレーダーよりも敏感になりつつあるし。
このことは大きな収穫だよ。
今後を考えるうえで、重要な体験だった。
その後、無事に地上まで戻った俺たちは、わざわざ地上に集まっていた人々の大歓声に迎え入れられることになる。
顔を出し、手を振り、笑顔で歓声に応えた。
頭の中で今後の計画を練り直しつつ。




