ロングフット②
各種企業が集まり、スペースコロニーの作成に挑戦する。
合同会社『ロングフット』。
この話は、世間には好意的に受け止められた。
細かい話の前に「合同会社」の説明をしておく。
これは株主が会社の所有者である株式会社と違い、「社員が会社の所有者」という会社形態で、株主総会を介さないスピーディな意志決定がメリットになっている。
ついでに、株主という第三者が絡まない分、他企業のちょっかいを受けにくい。そして役員の任期がないから、人の入れ替りによる面倒が少ないなどのメリットもある。
デメリットは株式販売による資金調達ができない、日本では馴染みがないから社会的信用に欠けることか。あと知名度が低い。
株式会社だと決算報告とかしているので社会的信用を稼げるけど、合同会社にはそれがない。
今回はそれらのデメリットがデメリット足り得ないので、気にしなくていい。
そんな合同会社はアメリカではわりとありふれた企業形態だが、日本ではまだマイナーだったりする。
やっぱり株式投資の話題に出ない分、知名度が上がりにくいのを気にしているのだろう。「知名度が低い=商機が少ない」だから、それも仕方がないね。
なお、合同会社では「代表取締役」は存在せず、「代表社員」が会社の代表者になる。
俺の立ち位置はここ。
言うほど権限はないけど、逆に責任もないので、わりと気楽な立場だと思っておくよ。
合同会社のルールは、株式会社よりも自由度が高い。出資金に囚われず、利益分配ができるのも良い。
会社の基本的なルール定款の調整はまだ完璧ではないが、それも大雑把には決まったし。本格稼働させるまでに詰めていけば問題ない。
利益追求型の企業ではなくロマン追求型の企業なので、問題は未来に投げ捨てられるよ。
最後に企業名だが、これはわりと簡単に決まった。
俺はスペースコロニーを作るには、チマチマした技術開発じゃ間に合わないってイメージを持ってる。
だから「物事を一気に躍進させるような企業」を目指さないといけないと語ってみた。
すると会議の参加者から躍進とか跳躍といった言葉を並べられ、すぐにいくつもの候補が上がった。
「ロングフット」はその一つで、「長い足で進む一歩は他の足よりも大きい」って意味になる。
他の企業と同じように歩いていても、自分達はずっと前まで進んでいくぞと、そんな気持ちが込められている。
俺は気に入ったし、他の人も数名を除き賛同してくれた。
他の社名候補の話をすると。
バーガー屋じゃないんだから、山・海・太陽に対抗して宇宙・星・世界にしないで欲しい。
「HALより一歩前どころかもっと前に」って、よそに喧嘩を売る気はありませんよ?
どこかの革命軍が五人の少年でオペレーションな真似をしそうな社名は嫌です。だからバイオなハザードを引き起こす、縁起でもない社名も却下。
ここに三四郎はいません。ついでにゲームハードも作りません。なんで出てきたその社名。
詳しくは語らないが、一部の日本企業から来た面々が騒いでいたとだけ。




