アメリカの疑問③
「会社とは関係ない、将来の展望?
まず、今は独身ですが、近いうちに結婚しますよ。もうすぐお見合いの予定です」
いきなり将来の展望を聞かれても、何を言おうか迷ってしまう。
会社関連で話せることはそれなりにあったけど、聞かれなかったので、それらを外すとなると、事前に想定していた話題カードが一気に減ってしまう。
なので、当たり障りの無い話題として、結婚の話をした。
お見合いをしたからと言って、すぐに付き合ったり結婚する訳じゃないけど、そういう予定はあるんだぞと。
これは間違いなくプライベートの話題だからな。
ちなみに。
見合い相手を探してる人によると、俺との結婚に肯定的な人は多く、誰にするかの選考でかなり時間がかかったらしい。
億単位のお金を稼げる男って、婚活市場じゃレアだからね。入れ食いだ。
そのせいで結婚詐欺師モドキを弾くのに仲人さんが苦労するのは諦めてと言うしかない。
婚活に邪魔だからと恋人と別れた(フリをした)アバズレがお見合いに来たら、さすがに殴りたくなるからね。物理的には殴らないけど。
家事ができなかったり金目当てなのは問題ないけど、誠実な人をお願いするよ。
俺のジャブに「だったら僕の友達を紹介しようか?」などとうそぶくアーモンド氏の顔は、笑っているようで目だけは笑ってない。
全力で「そうじゃない」と訴えかけてくる。
プライベートな話題を求められたが、この場合は「私的な内容」ではなく「俺個人に属する内容」であり、「ロボット関連、会社に関わる公的な話」ではなく「私人としての、冒険者活動の話」が聞きたいわけだ。
俺の冒険者としての活動は、以前は会社から試作機のテストパイロットとして動いていたが、もうバトルクロスが完成して役目は終わってるので基本はフリー。
会社のお偉いさんだからと特権を使い、会社所有のダンジョンに行くけど、全ては個人的な活動になる。
体や魔力を鈍らせたくないからダンジョンに行くけど、金銭的に困ってないから予定も何もない。
言ってしまえば、引退冒険者みたいなものだ。
もっとも、一介の引退冒険者というには無理がある。
俺自身は「日本最強」の称号持ち。
仲間の三人娘は最初からうちの子だし、中国出張に付いてきた全員じゃないとはいえタイタンたちも買い上げ済の子も多いし、今じゃ人権が認められた事もあって、俺のところの従業員扱い。
俺たちは自衛隊の陸軍一個大隊と正面から戦って勝てる戦力と自負している。
そんな日本を攻め滅ぼせるほどじゃないけど、凄く凄い戦力を抱えている冒険者がラストダンジョンが無くなったことで、暇にしている。
国にしてみれば怖い話だし、日本の政治家たちにしてみれば、俺たちにはどこかの高難易度ダンジョンに行って魔石でも何でも稼いでいてほしいんじゃないかな?
疑り深い人にしてみれば、何か大きな事をやらかす準備期間にも見えるかもしれない。
それが愛国心を発揮するタイプなら、他国の方が、より不安に思うだろうよ。
俺が何もしない、政治とかは今から始めるのが面倒だと言ったところで、疑り深い人は信用しない。
むしろ疑念をより深めるだけだ。
悪魔の証明とちがって無実は証明できるけど、そのためにプライベートを暴露するなんて嫌だ。
だったら適当な餌を与えて、思考を誘導するのが簡単かな。
余計な疑いを持たれ続けるのは、精神衛生上よろしくないからなぁ。




