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厄物

 俺は中国からの身柄を要求され、日本政府がそれを防いでいる状態だ。

 一昔前なら、こんな事になると中国からの干渉で暗殺者とか鉄砲玉を送り込まれるリスクがあった。


 しかし今の俺には「日本最強」の看板があるため、その手の心配はあまりしなくてもいい。

 強いて言うなら、会社の関係者が狙われたときぐらいじゃないかな。

 教授二人と鴻上さんには護衛を付けているけど、しばらくはちょっと守る範囲を広げておこうと思う。





 襲撃の心配はしていないけど、中国遠征で厄ネタ、面倒なことになりそうな物を手に入れてしまった。

 今日はその情報を共有するため、自衛隊の偉い人に時間をもらっている。



「本日はお忙しい中、御時間をいただきありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそ、先日は無理を言って助けていただき御礼申し上げます。

 その後の物資支援まで心を砕いて貰えたことには、現地の隊員より、感謝の言葉が届いていますよ」


 自衛隊は厄介なダンジョンの監理業務をするようになってから、かなり忙しい組織になっている。

 特に今回の中国案件では矢面に立たされているので、仕事は激増している。


 元から暇をしていたわけでもないのに新しい仕事を押し付けられた彼らは、事務など裏方の人員拡充すら順調でないため、最近は事務員用のロボット導入すらしているほど困っている。

 そんな中、無理を言って時間を作ってもらったのだから、こちらは頭を下げるしかない。


 なのに目の前の鮫島陸将、陸軍で二番目に偉い人は笑顔で俺を迎え入れた。

 頭を下げる俺に、構わないと鷹揚に構えている。いや、むしろ歓迎しているふうでもあった。


 少しの雑談で間をおいてから、俺は本題を切り出した。


「それで、見てもらいたいのは、こちらになります」


 俺は控えさせていたタイタンに持たせていた大きな箱を見せる。

 その中にあったのは、巨人のドロップアイテム。巨人が使っていたのと同じデザインで、タイタンやバトルクロス装着者に合わせ小型化したような、マジックアイテムである。


 とても危険なマジックアイテムを持ち込む事は事前に伝えていたが、詳細は説明していない。直接対面せずには説明できない。

 どこで手に入れただとか、ハンマーである事も伏せた。

 ただ、極秘扱いにしてほしいとだけ、お願いした。


 ここには鮫島陸将の他に護衛か何かの人が二人いるけど、退席をお願いせず、信用して話を進める。


「中国で例の巨人からドロップしました。

 超広範囲に吹雪を起こすハンマーです」


 見た目から想像が付いたのか、鮫島陸将の顔が僅かに引きつった。

 実際に効果を口にすると、絶句して言葉がない。


 控えている二人も同じ。

 まだ鍛えられ方が足りないのか、明らかな厄物を前に、表情を取り繕えずにいる。


 そうなるよなぁと、三人の反応を見ながら説明を続ける。


「効果は私有しているダンジョンで、自分が使い、確認しました。

 最大範囲は今のところ計測不能。30km は巻き込めるのを確認しています。1日ぐらいは持たせられますね」


 これが公になった場合、間違いなく中国は巨人の出現をこちらの陰謀だったと騒ぎ立てる。これまでの巨人出現はフェイクで、中国弱体化を狙い、日本が仕掛けたのだと言うに決まっている。

 俺が手に入れたタイミングが中国出張中ではなく、日本のラスダンだったと決めつけ、賠償を請求する。

 太陽が東から西に向かうぐらい、分かりきった話だ。



「これをどうするか、相談させてほしいのです」


 これまで歓迎ムードだった鮫島陸将。

 そんな彼が説明を終えた俺に向ける視線は、完全に非難するような、「厄介ごとを持ち込みやがって!」というものだった。

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