どこも面倒くさい
日本政府に非難声明を出している中国の要求だが、ここに俺が関わってくる。
「日本でも有名な冒険者、一文字九郎の身柄を引き渡せ。
ついでに彼が所有するタイタンやその他ロボットも引き渡せ」
「なんでそうなる?」と言いたいが、要は厄介なモンスターを駆除するのに適任な俺たちを引き抜き、自分の駒にしたいと言っているのだ。
自国の問題だから、自国で対処する。自国に対処できる冒険者がいないから、他国から引き抜く。そういう事らしい。
こんなことを言われても、日本政府としては「正当な理由もなく民間人を引き渡す道理はない」と正面から突っぱねるしかない。
これで身柄引き渡しに応じようものなら、国内だけでなく、バカな前例など作られたくない国外からの反発も必至だ。
まともな思考能力があれば、こんな要求には応じない。
だからこそ、自国の犯罪者を自衛隊に殺させ、「お前らのせいで対モンスター防衛能力が低下したのだから、埋め合わせをしろ」などと言っているのだ。
これもまともな発想だとは思わないが、一応、戦力を寄越せという理由としては成立する。
なにしろ残りの半分とはいえ中国が完全に潰れた場合、色々と面倒が起きるので、自分の命を使った強迫になるからだ。
人道的な人々にしてみても、要求に応えないとしても、それなりの数が中国への手助けは必要だというだろうね。
叩かれてるけど、そういう意見はそれなりにある。
ただ、世界にあるのは中国と日本だけではない。
今回の件を受け、他の国が動き出してる。
インドは「だったら自分達が助けてやるよ」とばかりに、放棄された旧中国領への進出を決めた。
過去の公式発表を聞く限り、インドにもそこまで余裕は無いがそれでも放棄された土地でモンスターの駆除やダンジョンの管理をしていくという姿勢を見せている。
すぐに準備を始めると言って、軍を動かす計画を立てている。
欧州も、それに乗る。
かつての「一帯一路」構想を活用して、戦力不足なら旧中国領に軍を進めても良いと言い出した。「中国政府に最大限配慮する」とも付け加えているので、実行まではしていない。
今は言っているだけだが、欧州に余力が生まれつつあるのは確かだ。あちらも冒険者のロボット導入が進んでいるので安定してきた。
旧中国領の安定は早ければ早い方がいいのは確かなので、いつまで様子見をするかは分からない。
アメリカは、これまでどおりの支援を続けるとしているが、必要ならば更に軍を派遣する用意があるとも言っている。
これ、言葉を変えると「土地は要らない。もっと金を出せ」となる。
モンスターを倒せばお金になるので現在の軍隊は金食い虫じゃないが、経費が減った訳じゃない。
軍の強化をしつつ、経費は中国に請求する、効率の良い金儲けを続けるのがアメリカの結論だった。
逆に静かなのはロシアだ。親中国家の一番手なのに何も言っていない。
まぁ、ロシアは中国を上回る国土と、世界一の人口密度の低さに苦しめられている国なので、余裕が全く無いんだろう。
滅亡カウントダウンとか言われる程度に厳しい状態とも言われていたし。
たぶんやっているだろう、ロボット導入で一息付けたかどうかというタイミングだと、下手な発言はブーメランになる。
それに、擁護できない発言をされては、これまでの国交を考慮しても助けられない。
自国がキツい時に周囲から非難される中国の味方面をして、自分の足を引っ張られたくはないのは誰もが同じ。
ただ単に、北の中国政府がアメリカの紐付きになっているから、もう助けたくないだけかもしれないけどね。
本作ではロシアによるウクライナ侵略戦争は起きていません。
その前にダンジョンが発生したため、侵略に回す戦力がなくなりました。




