内モンゴル自治区④
「さすがになぁ。一体だけなら苦戦もしない」
「私たち、必要?」
「暇」
「ぶー」
こっちに来て二日目。
予測通りに巨人が出たので、倒した。
こいつとはもう四戦目だし、一体しかいないので苦戦なんかしない。
ドラゴン祭りの方が、数の暴力でよっぽど歯応えがあるってレベル。
念のためにラスダンに連れていけないようなタイタンまで連れてきたっていうのに、誰一人としてやられていない。
大怪我もしていない。
完勝である。
こちらのテンションが上がらなかったので、途中からタイタンだけに任せてみたけど、それでも勝てたよ。
話にならん。
レベル上げ、経験値稼ぎにはなったけど。
ああ、戦力の底上げって事で、戦闘はほとんどタイタンに任せたら、三人娘が不貞腐れてしまったのが、一番の被害だな。
巨人どころか巨人が呼び集めたモンスターも全部タイタンだけで倒しちゃったからね。仕方がないね。
で、ドロップしたトレジャーボックスを全て回収し終えたところで、乱入者がやってきた。
「一文字さん、淡島です。
推定ならず者が接近中。まず我々が接触し、状況によっては排除するので、しばらくその場で待機をお願いします」
「あ、了解です」
事が済んだので、上前をはねようという集団が誘蛾灯に誘われたようにやって来たのだ。
最初に接触する東から来た一団の数は30人ってところだな。ロボ無し、人間だけだ。
輩からは自衛隊の戦闘部隊50人プラスタイタン50体が守ってくれる約束になっているので、そちらでどうにかするらしい。
慣れているだろう自衛隊員はともかく、最大戦力の淡島二尉が人を殺せる人かどうかで難易度が変わると思っていたが、そちらは大丈夫そう。
レドームの反応を見る限り、彼も容赦はしていない。敵の順調に数を減らしている。
「東の次は南と北だけど。そっちはどうするかな?」
東から来たのがそろそろ終わるかな、というところで、南と北にいる一団も動き出す。
もしかしたら、東の連中は陽動か何かだったのかもしれない。まともに時間稼ぎもできてないみたいだけど。
数はどちらも100人ぐらい。やっぱりロボ無し。弱そう。
他人事として笑ってしまうが、コイツらの移動速度はかなり遅い。隠密行動のつもりなのだろう。
実際はレドームでどこにいるかバレているので無駄なのだが、それはそれでアホな子供の行動に見えてしまう。
子供のイタズラであれば「めっ!」で済むけど、大人の犯罪なら「滅!」になるのが現実だ。
現世の将来のために学ぶのではなく、来世のために学んで欲しい。
人が死ぬかもしれない場面で不謹慎と思われかねないが、こちらはダンジョンでモンスター相手に命のやり取りをしているのだ。そりゃ「命」や「生き方」に関する考え方はシビアになるよ。
特に、人のものを奪おうとするような奴らはモンスターと何が違うのかという話。俺は何も違わないと思う。精々、死体が残るかどうかじゃないの?
そう思うことにしている。
ああいう連中は、殺されても仕方がない。
俺も、いざとなれば殺す覚悟は決めてきた。
殺す覚悟は決めてきたが、優秀な自衛隊のお陰で、また出番は無かったけどね。
また三人娘が不機嫌になったけど、ここは楽ができて良かったって思って欲しいな。




