中国の歓待は回避
急ぎという事で、物資を集め終えたらさっさと中国の北京近郊にある米軍基地に連れていかれた。
横須賀から直行だ。
対モンスター用の前線基地ではなく、比較的安全な場所にある物資集積地を兼ねた場所だ。訓練などに使う施設はなく、手狭な印象を受ける。
あと、空港を経由してないので、パスポートとかを税関に見せてもいない。
それだけで今の中国とアメリカの力関係が分かるというものだ。
基地では司令官の補佐と挨拶と顔合わせをして、終了。
それが終わればトイレ以外の休憩無しで自衛隊の前線基地まで運ばれる。
なんか、予定が前倒しされている。
そして自衛隊の前線基地までは800km以上離れていて、途中までは高速が使えるけど、30kmは道無き道を行く事になる。
飛行機はハイリスクなので、半日以上、車に揺られるわけだ。
……扱い、悪くないか?
移動中は臨戦態勢という事で、バトルクロスを着用し、いつでも戦える状態だ。
米軍基地を経由しているし、あり得ないとは思うが、たとえ同伴している自衛隊が偽者であっても対応できるようにしている。
自衛隊の基地まであと少し。
前半の高速道路は良かったが、後半の最低限の整備しかされていない道は舗装されておらず、ほぼオフロードでかなり揺れる。
酔いはしないが、こまめにシェイクされていい気分でいられるはずもない。
「我慢させてしまい申し訳なく思いますが、これも余計な連中に過分な情報を与えないための措置です。今しばらくご辛抱をお願いします」
そんな不満がバトルクロスの外まで出ていたのか、車両の運転手とは別の、同伴している隊員さんに頭を下げられた。
末端の隊員さんに八つ当たりする趣味はないので、心の中で「貴方には怒っていませんよ」と見えないバトルクロスの下で笑いかけるが、許すような言葉は口にしない。
嫌な話だけど、ここで「気にしていませんよ」と言うと、目の前の隊員さんだけでなく怒りを向けるべき相手まで許すことに繋がりかねないので。
細かいと言われそうだが、相手との関係一つで自身の進退どころか命の危険にも関わってくる話だから。手は抜けない。
話し合って決めた範囲は不利益も受け入れるけど、それ以外の不利益は我慢しないぞ。
唯々諾々と受け入れて相手の都合に流されていては、どんな無茶を押し付けられるかわかったものではないからな。
事前の打ち合わせではもっと休憩があると聞いていたのだし、急ぐのも情報を隠していたのも理解はするよ?
「敵を騙すには~~」って事だろう。臨機応変、高度に柔軟性を維持して作戦に当たるのは悪いことじゃないけど、限度ってものがある。何も感じないわけじゃない。
何より、相手の行動に一方的に付き合わされなきゃ行けない理由など、少ししか無いんだ。
だったら俺には文句を言う権利だってあるだろ。
今さら仕事をボイコットするほど子供じゃないが、あんまり言いすぎると、それこそ面子を優先し合理的な判断をしない中国人と同じになってしまう。
いや、契約に固執しすぎるのはアメリカ人の方か。あいつらは「それは契約書に書いてない仕事だ」が口癖だから、細かいところまで詰めなきゃいけない人種だし。
なんか改めて考えてみると、自分も少しは理性的に振る舞わなきゃなって思うよ。
合理的より理性的に、冷静に。目的を見失わないよう、扱いに不満があってもやるべきことをしっかり務める。
……全部終わった後で、苦情を出しておけばいいか。




