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人類壊滅カウントダウン

 引き受ける条件として設定された「ロボットの人権を認める」という話だけど、これ、及川教授らによる時間稼ぎでもあった。


 日本で新しい法律を作る手続きは、国会議員か内閣が法案を衆参どちらかの議会に提出し、議会の議長が法案に対応した委員会に法案を付託して審議を受け、提出された議会で採決を行い、最後に提出されていない議会で採決をする事になっている。

 新法の制定から公布までの手続きには時間がかかるというのが一般的な認識で、真面目に議論をしていくなら半年とか一年はかかってもおかしくない。

 だから、これが防波堤になるって算段もあったみたい。


 しかし、日本政府は周囲の批判を押しきって、短期間で新法公布まで持ってきた。

 一ヶ月もかけずに新法が公布されるなんて、マトモではない。

 米中から圧力を受けたとしても、ここまで素早く動くのはあり得ない話だ。


 つまり、俺の中国行きにはそれだけ本気ということで、喫緊の問題が発生している可能性が高い。

 今回の海外遠征は「ちょっと」ではなく「かなり」ヤバい案件だったのである。


 ……今回限りとはいえ、安請け合いしたのは、本気で反省しないと行けないな。





「このままでは、あと3ヶ月で北京が壊滅します。

 そして半年後には韓国と北朝鮮が壊滅的な被害を受け、1年後には日本も巻き込まれます。

 この予測はここ数ヵ月間のデータを基にしたものですが、状況次第で早まる可能性があるという意見も出ています」


 仕事が決まり、細かい打ち合わせをすることになった。

 契約前にしておけよと言われそうだが、何の契約もなく話せる内容ではなかったので、これまでは聞けなかったのだ。


 一応、「ラストダンジョンの隠しステージに数回入ると思って下さい」と言われていたけど。

 ここで話を聞く限り、それが比喩でもなく本当にそんな感じの仕事になりそうだった。



「原因となるモンスターは、今はまだミサイルで対応できていますけれど。それは長続きはしません。ミサイルの増産が間に合わないのです。

 だからこそ、一文字さんに、お願いしたいのです」


 気象を操るモンスターが出てきた。


 ダンジョンから地上に放出されたそのモンスターは、ラスダンの最後に出てきた顔のでかい鎧巨人どもである。

 日本から消えたラスダンが、なぜか旧中国領に現れたようなのだ。

 実際にラスダンが現れたかどうかは確認されていないが、出てきたモンスターはラスダンのそれである。


 鎧巨人どもは周辺に吹雪を呼ぶ能力を持っていて、今、周辺はとんでもないことになっている。

 個体差があるので正確な数字は出ていないが、出現すると半径数キロが被害に遭う。

 早めに倒せばすぐに元通りになるが、時間が経つと、その限りではない。


「これはもう、気象兵器の類いなのです。放置すれば、異常気象を招く恐れもあります。いえ、確実にそうなるでしょう。

 ……正直なところ、北部中国の政府は独力での解決を主張していますが、後援者であるアメリカがそれを不可能と判断し、無視して我々への助力を求めている状況です」


 ここまで来ると、もはや国家の枠を越えた地球規模の災害にもなりかねない。国際協力が求められる事態だと思う。


 しかし国の枠組みやら様々なしがらみが、人の団結を許さない。

 情報は厳しく規制され、それこそすでに何人もの不心得者を裏で処刑しつつ、秘密裏に解決を求められる。

 世知辛いが、それが現実である。


 俺に依頼を強制しなかったのは、「日本最強」を暗殺しきる戦力が足りていないからで、理解と納得で協力者に引き込むためだ。

 下手な動きをさせないために、ご機嫌取りを優先したのだ。





 もう少しオープンに動いてほしいところだが。


「残念ながら、この情報が出回ったとしても、人は団結などしませんよ。

 国家間で足の引っ張り合いが加速し、余計な騒ぎの中、民衆を鎮める生け贄が捧げられるだけです。

 しかし生け贄で民衆を鎮めても、その命の保証は一切行われません。むしろ人類全体の寿命を縮めるだけです。

 人はそこまで賢くも強くもありませんから」


 否定の難しい話をされると、もう何も言えないよ。

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― 新着の感想 ―
段階的に『主人公が参戦する必要性を出していく』というのは、段階的に読者の反発心を低くする交渉術ちっくなテクニックですね。すごい。 そして、もし最初から『人類は滅亡するッ!』とか情報をオープンにしていた…
[一言]  こいつ等身体のどこかに篆書体で「吹雪」とか「豪雪」って記されてるんじゃね?
[気になる点] 日本No2ぐらいの九条さんは動きあるのかな [一言] 最初から日本や世界に多大な被害が出る案件だったって伝えろよとも思うが その事自体が最期の文章のことを如実に表してて、本当しょうもな…
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