日本最強の責任と義務
日本最強の看板を背負わされた。
ゲーム脳というか、ただひたすらにレベル上げや戦力強化をしていった結果としては順当なんだろうけど、嬉しくない。
面倒臭い、というのが正直な感想だ。
以前、九条さんは俺が自力で倒せないと判断したモンスターの処理に駆り出されていたことがあった。
日本最強とは、ダンジョン関係の最終防衛ライン的な人間である。
今度は俺に、それと同じ事を求められるわけだ。
全くの無報酬というわけじゃないけど、ラスダンが無くなって稼ぎ場が消えたから時間はあるけど、人の都合で強制的に動かされるのは面白くない。
助けてもらう立場から、助ける立場になった。
それは正常なことなんだけどね。
これは、いつまでも子供じゃいられないってだけの話だ。
この件については、ダンジョン管理をしている防衛省と話し合いの場が設けられ、そう頻繁に依頼があるわけでは無いこと、他に対処できそうな人がいればそちらにも仕事を回したいなどといった話を聞かされた。
思ったよりも「国がらみの」面倒事はなさそうだ。
報酬は渋かったけどね。
それと、「出来れば動向を教えていただきたいのですが」という、別のお願いされたがこれは特に問題なし。
俺たちがどこのダンジョンに行く予定なのかはそこまで秘密にしたい情報でもないし、その程度の手間は、メールの宛先設定で登録してあるグループにアカウント一つを増やすだけでいい。
メールで機密文章のやりとりなんてしないから、これで何かやらかすという事もないだろう。
そんなわけで、お国への対応は簡単に済んだ。
それよりも面倒なのが、マスコミである。
「一文字さん、取材の依頼が」
「一文字さんの過去について嗅ぎ回っている人が」
「ご両親の方にもマスコミが向かったようで……」
マスコミでも、付き合いがある人たちはいい。
普段から親しくしていれば、こちらにどこまで踏み込んでも俺が怒らないか分かっているから。
餌を与えておけばコントロールは可能。
相手が大手なら、付き合いが無いところに牽制をしてくれたりもする。
ちょっとぐらい名前を借りることも出来る。
こっちが簡単に退かないことを知っているのなら、大手は意外と慎重に動く。
……その代わり、付き合いの薄い、あまり発信力が無い人とかには、大手のプライドを振りかざしてかなり面倒なこともしているけどね。
そこは身内とそれ以外との差なんだろうけど。何だかなぁって思うよ。
そんなわけで、旗振り役がいるから、大手のマスコミはわりとなんとかなっている。
けど、どこかのゴシップ誌とか、小規模な出版社は違う。
こっちの都合とか、一切考えない。
「国民の知る権利」と言えばなんでも通ると、本人すら信じていないお題名目を主張する。
迷惑行為を理由に捕まえたところでそこまで社会的ダメージを受けない、「無敵の人」みたいなものだ。
出版社に苦情を申し立てても、出版する前だと「それは記者個人の責任です」となるので、根っこから駆除するには手間がかかる。
出版された後だとこちらも相応にダメージを食らうから、たいていは出版される前にどうにかするけど。それでも漏れはでてしまう。
マスコミ被害は自分だけでなく周囲にも迷惑がかかるので、無視も良くない。
実際、それなりに被害が出てる。
モンスターなら物理的に駆除するのに。
そう考えてしまう俺は、頭の中まで筋肉に支配されているかもしれない。




